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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら (岩崎 夏海)

(当時、大いに評判になった本です)

 一風変わったドラッカーの代表的な著作「マネジメント」の入門書です。

 主人公の野球部女子マネージャーみなみちゃんが、ドラッカーの『マネジメント』を片手に、文字通りのマネージャーとして野球部の「マネジメント」に取り組みます。

 まずは、ドラッカーのマネジメント論のスタート、「事業の定義」「顧客の定義」に関するくだり。
 みなみちゃんは、「野球部にとっての『顧客』とは誰か」という問いに対します。

(p56より引用) 「ふむふむ、そうなんだ・・・そう考えると、高校野球に携わるほとんど全ての人を、顧客ということができるよね」・・・ 「それから、忘れちゃいけないのは、ぼくたち『野球部員』も顧客だということだな」

 みなみちゃんは「野球部の顧客」を「野球部員」だとして、その野球部員のニーズを満たすべく「マネジメント」に挑戦します。

 さて、野球部員が顧客だとすると、マーケティングでいえば野球部員は「消費者」の位置に立ちます。そう位置づけると、「野球部員の行動=消費者の行動」ととらえることができます。

(p124より引用) 「消費者行動」とは、製造やサービスの改良を求めて、消費者が企業に働きかける運動のことである。代表的なものには、不買運動やボイコットなどがある。
 これを読んで、みなみは気づかされた。
「部員たちが練習をサボっていたのは、『消費者行動』だったんだ。彼らは、練習をサボる-つまりボイコットすることによって、内容の改善を求めていたのだ」

 この本では、「野球部」が「企業(組織)」、「野球部員」が「社員」であり「顧客」、「練習」は顧客である野球部員にとっては「商品・サービス」・・・とこんな感じで当てはめられ、ストーリーと『マネジメント』の解説が進んでいきます。

 ついに、「甲子園出場」。
 「甲子園では、どんな野球をしたいですか?」というインタビューに対して、キャプテンの正義くんはこう答えました。

(p266より引用) 「あなたは、どんな野球をしてもらいたいですか?」・・・
「ぼくたちは、それを聞きたいのです。・・・ぼくたちは、みんながしてもらいたいと思うような野球をしたいからです。ぼくたちは、顧客からスタートしたいのです。顧客が価値ありとし、必要とし、求めているものから、野球をスタートしたいのです。」

 奇抜なプロットが本書の顧客を惹きつける「フック」ですが、正直なところ、予想していたよりも面白かったですね。
 もう一度、ドラッカーの「マネジメント」を読み直してみようかという気持ちがしてきます。



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