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白洲家の流儀 (白洲 信哉)

 いつも行く図書館の新刊書の棚で、たまたま目に付いたので手にとってみました。

 著者の白洲信哉氏は、父方の祖父母が白洲次郎・正子夫妻母方の祖父が小林秀雄氏という強烈な家系の中にいます。

 まずは、白洲正子氏の「サービス精神」に関する信哉氏の記憶です。

(p35より引用) 祖母はいわゆる「サービス精神」のない人だった。・・・子どもだからと一から説明するということは、まったくなかった。もちろん、大人に対しても然りである。・・・
 僕はそれでよかったと思っている。知識やウンチクなどはそれほそれほどのものではない。何よりも自分で感じることが大事だ、ということを学んだ気がする。自分で感じなければ、いくら知識が増えても意味はない。表面的な言葉の意味だけが分かっていても、結局、何の役にも立たないことを、僕に伝えたかったのかもしれない。

 もうひとつ、小林秀雄氏の「知る」ということについての箴言。

(p36より引用) 祖父の小林は、「『知る』ということは苦労することと同じだ」と説いた。ただ知っているだけでは意味がないし、そこから先に進まなければ何の役にも立たない。それを自分の人生にどう活かしていくかが問題なのであって、単に教科書に書かれているようなことを覚えていても、本質に迫ることは出来ないと言いたかったのだ。

 さらに、小林秀雄氏が自らの著作について語る「奥行き」の話です。

(p45より引用) 発売当時、小林の著書『本居宣長』は四千円くらいしたが、
「四千円でも、10回読めば1回400円だ。分からなければ何度でも読んでいいのだし、大体、何度も読まないと分からないように書いてあるんだからな
と笑っていた。そのときはつられて笑っていたが、「1回読んで分かるほど浅はかなことは書いてないんだ」と、ある人に真面目に話したときの顔を思い出した。自分の考えの深さに誇りを持ち、文章の練り方にも自信を持っていたことが伝わってくる。

 本書で紹介されていることは、白洲次郎氏に関する本、白洲正子氏や小林秀雄氏の著作を読んでいれば、ほとんどが既に紹介されているものです。
 正直なところ、本書を読んでの新たな気づきはありませんでした。

 さらに言うならば、祖父母である白洲次郎・正子夫妻、さらには小林秀雄氏の存在そのものや、彼らの残した遺産は、流石にとても大きなものだったということでしょう。

 今(注:2009年当時)、時節柄、「世襲」の問題が話題になっていますね・・・



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