ずっと気になっていて、いつか読んでみようと思いながら今に至った本です。
専門的な研究内容の説明は最小限にとどめつつ、一科学者としての、科学に取り組む純朴な姿勢、そこに住む人々へ科学をもって貢献したいとの真剣な想いが丁寧に書き込まれた著作です。寺田寅彦氏に師事したとの経歴も頷けます。
著作の中心は「雪の結晶」の研究の紹介で、雪の分類・雪の人工生成に関するくだりは大変興味深く読めました。
たとえば、こういった記述です。
その他、地道な研究に愚直に取り組む学究の想いが垣間見られるフレーズをいくつかご紹介します。
まずは、「日本に根ざした研究へのプライド」を示すコメントです。
もうひとつ、「顕微鏡写真の弊害」について。
確かに、私も「雪の結晶といえば、この形」といった固定観念を持っていました。本書で紹介されている結晶の分類についての解説で、その多種多様な姿を知った次第です。
さて、本書ですが、ひとつの研究に対し一途に真正面から取り組んできた科学者の、静かではありますが熱い気概がしっかりと感じられる佳作でした。
「附記」でもこう語っています。
著者は、謙遜して以下のように書かれていますが、科学の説明に止まらず雪国の生活をも思いやった素晴らしい内容だと思います。
第1版は昭和13年の岩波新書。いかにも旧仮名遣いが似合う作品です。