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NHKスペシャル 人類誕生 (NHKスペシャル「人類誕生」制作班・馬場 悠男)

(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着本リストで目についたので手に取ってみました。
 こういったタイトルの本は、ともかく気になります。

 本書は、“NHKスペシャル「人類誕生」” の書籍版、テレビ放送を観ていないのが残念です。
 最新の研究成果が豊富なグラフィックとともに紹介されていてとても興味深い内容でしたが、その中から私の関心を惹いたくだりをいくつか覚えとして書き留めておきます。

 まずは、「ネアンデルタール人」のイメージの変遷について。

(p112より引用) ネアンデルタール人ほど、そのイメージが二転三転した人類はいないだろう。1868年にフランスでクロマニョン人の化石が見つかったことで、ネアンデルタール人は祖先ではないと認識され、凶暴な原始人の代表と見なされるようになった。
 しかし、その後、さまざまな人類種の発見によって、アウストラロピテクス(猿人)→ピテカントロブス (原人) →ネアンデルタール人(旧人)→サピエンス(新人) という人類進化の道筋が認識され、彼らに対する見方が変わってきた。さらに近年、彼らの文化的能力が確認されたことで、ようやく正当な評価を得ることができたのである。

 こういった例に限らず、従前からの考古学の定説は、新たに発見される明白な物証(化石・遺物・史跡等)や科学的な検証(年代測定等)で塗り替わることが往々にしてありますね。
 まだまだ未発見の化石や遺跡は山のようにあるでしょうから、どんな新たな事実が顕かにされるか、これからも大いに楽しみですね。

 そして、もうひとつ。ホモ・サピエンスの地球規模の移動を可能にした要素
 アフリカを出て西アジア、そこから東進して、日本を含む東アジアや北米への進出。このコースの途中には「極寒のシベリア」がありました。
 温暖な気候で暮らしていた彼らが寒い環境に適応できた要因は「縫い針」の発明でした。

(p144より引用) 寒さをしのぐために作られた服や住居、そしてそれらを作るための縫い針。こうした発想は、原人やネアンデルタール人にはなかったため、彼らは寒さに耐えることができず、シベリアに は進出できなかったと考えられている。
 サピエンスは、彼らが持つ創造性によって、世界中に拡がることができたといえるだろう。

 こういった “知恵” の蓄積とそれを活かした “実行力”。もちろん、それは「生きるため」という究極の目的に強いられてという側面もあるのでしょうが、私たちの祖先の “チャレンジ精神” には驚きと尊敬の念を抱かざるを得ませんね。

 ちなみに、本書(番組)で紹介されたマックス・プランク進化人類学研究所スヴァンテ・ペーボ教授のゲノム解析による「ホモサピエンスの起源」についてですが、先に読んだ篠田謙一国立科学博物館館長による「人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」」に、教授の研究成果を含めより詳しく解説されています。



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