プランB 破壊的イノベーションの戦略 (ジョン・マリンズ/ランディ・コミサー)
(注:本稿は2011年に初投稿したものの再録です)
社内ソーシャルメディアで話題になっていたので手にとってみました。
「最初に思いついたビジネスプランである『プランA』は多くの場合うまくいかない、その失敗を検証した『プランB』によって成功に至る」-それが本書における著者の主張です。
「プランA」を現実的に機能する「プランB」に発展させるプロセスについて、著者は、その重要な要素として4つ示しています。
「類似例」「反例」「未踏の信念を試す」「ダッシュボード」。
「類似例」「反例」は過去の先人の足跡を辿ってその教訓を自らのプランに活かすことですし、「ダッシュボード」は計画策定と実行プロセスモニタリングのためのツールです。
ここでは残りのひとつ、ちょっと聞き慣れない「未踏の信念を試す」というステップの説明を覚えとして書き留めておきます。
そこで、類似例や反例がないような疑問を特定することが次のステップになります。そういう疑問・質問が、「未踏の信念」-著者曰く「それが現実に正しいという何の根拠もないにもかかわらず、答えに確信をいだいていること」に導いてくれるのだといいます。
そして、この「未踏の信念」を確かめる方法は、(前例もない疑問なので)実際やってみるしかないのです。
本書は新規事業を立ち上げる際のアドバイスを示したものですが、そこで勧めている方法は、「0(ゼロ)からスタートさせた全く斬新なビジネスモデルの創造」ではありません。
むしろ、説かれているのは、すでにある事業を具にサーベイして、その教訓を踏まえ、成否の分水嶺になるクリティカルファクタを浮かび上がらせる、そして、そのクリティカルファクタすなわち「成功のための仮説(未踏の信念)」を実践により検証するという地道なプロセスです。
リスクに沈んでしまった多くのチャレンジャーは、そもそも「起業家」として名を残すこともありません。リスクを乗り越えたからこそ「起業」が成功し「起業家」として認められるのです。
さて、本書ですが、アップル・アマゾン・グーグル・イーベイ・スカイプ等著名な企業の取り組みが、著者が説く「プランB」による成功例として紹介されています。
そういった起業のためのケーススタディとしても十分に面白いのですが、同時に、著者は、P/Lのみならず、BS、CF(キャッシュフロー)面からのアクションの重要性についても言及しています。
「類似例」「反例」「未踏の信念を試す」「ダッシュボード」という定型スキームに拘泥し過ぎているきらいもないわけではありませんが、財務諸表の活用という「経営のイロハ」を一連の流れの中で上手くとりあげ、その勘所を的確にまとめています。
様々な立ち位置からみても参考になる実践的な良書だと思います。