この方法で生きのびよ!― 沈む船から脱出できる5つのルール (鈴木 博毅)
(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)
レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本していただいたので読んでみました。
社会の変化に対応して企業として生き残るための方法を説いた内容ですから、そのテーマはビジネス書としては山ほど語られているものです。
まず、著者は、パラダイムシフトの原因を、航行している船に向かってくる「5つの恐ろしい氷山」に例えています。
そのそれぞれに対して章を起こし、事象の解説とその対策を紹介しています。
たとえば、「代替」の章での著者のコメントはこんな感じです。
このあたりのくだりは極めて平凡です。この程度の指摘で止まっていては何のインパクトもありませんね。
次の「新芽」の章では、大きなダメージを受けたあとの再生の力について論じていますが、ここでの著者は、なかなか面白い視点を開陳しています。
キーワードは「resilience(レジリエンス)」、“復元力・弾力・衝撃を吸収し跳ね返す力”のことです。
この「復元力」ですが、著者はこの本質について興味深い指摘を行っています。どん底からの回復は「以前にも増した自己の努力によるものではない」というのです。
方法を試行錯誤するのではなく「目標を試行錯誤する」、これは示唆に富んだちょっと気になるアドバイスですね。
さて、本書を読み通しての感想です。
内容はシンプルに5つの章で構成されていますが、それぞれの章の関連が並列でしかなく立体的な体系化に至っていませんし、例示で挙げられているいくつかのエピソードも月並みです。語り口が優しいので一見読みやすい印象は受けるのですが、著者の発するメッセージには厚みや鋭さが感じられないのです。
“ビジネス現場の肌感覚”といったリアリティに立脚した説得力が希薄なんですね。正直なところ、かなり物足りなさが残ります。
あと、蛇足ではありますが、編集や校正がいまひとつ。
単純な誤植が目立ちますし、豊臣秀吉と黒田官兵衛のエピソードで、登場する高松城の所在を「四国」と記述しているあたり、もう少ししっかりチェックしておかないと、ビジネス書としての、また著者のコンサルタントとしての信頼感が薄れてしまう気がします。ちょっと残念です。
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