現代語訳 論語と算盤 (渋沢 栄一)
渋沢栄一氏が論じる「論語」の本としては、以前「論語の読み方(竹内均 編)」を読んだことがあります。
本書は、「道徳経済合一説」を唱えた渋沢氏の代表的著作「論語と算盤」の現代語訳です。
本書において、渋沢氏は「論語」の教えに基づいた自己の思想や行動について分りやすいことばで説明していきます。
たとえば、時折清濁併せ呑むという印象を与える渋沢氏の交友についてのくだりです。
もうひとつ「修養」、すなわち自分を磨くことについて。
この考えにおいて渋沢氏は、論語と実業とを結びつけていました。
当初、尊皇攘夷の志士であった渋沢氏は、一橋家家臣、幕臣、明治政府官僚とその活躍の場を移していきました。
1873年、大蔵官僚を辞して実業界に転身した当時の渋沢氏の懸念は、同時代の商工業者の道徳観念の希薄さでした。これは契約遵守という商習慣の根本を蔑ろにするものであり、国際的な信用にも悪影響を及ぼしているとの国家的見地からの危惧です。
渋沢氏はこの要因を、過去からの教育の弊害だと考えました。
「論語」に心酔する渋沢氏も、儒教の教えの全てを受容していたのではないのです。
これは、女性の尊重という考え方にも表れていました。
実業教育や女性教育の重要性を強く認識していた渋沢氏は、一流の実業家であったと同時に、先進的な視野をもった教育者でもあったようです。
さて、最後に「第10章 成敗と運命」で語られている渋沢氏の言葉を書き止めておきます。
正に、達観の境地です。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?