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「戦う組織」の作り方 (渡邉 美樹)

(注:本記事は再録で、初投稿は2009年末です)

 ワタミはこの厳しい経営環境化においても、比較的好業績を堅持している企業です。そのワタミの総帥渡邉美樹氏は、このタイミングに社長から会長に退き、後進に経営の主導権を漸進的に移行させるという決断を下しました。

 本書は、その渡邉氏による組織論・リーダー論です。
 渡邉氏の考え方の基本軸が分かりやすく語られています。が、私はもっと臨場感・現場感のある内容を期待していたので、正直なところ、その点では少々不満が残りました。

 とはいえ、参考になる点は数多くありました。
 まずは、「育成」についての考え方について。

(p85より引用) 人は勝手に育つもの。伸びる人間は、自分で考え、挑戦して失敗し、また挑戦して壁を乗り越えながら、自分で成長していくものだ。
 だから経営者や上司が「俺があいつを育ててやる」などと考えるのは、大きな自惚れだと私は思っている。
 ・・・私にできるのは、部下が育っていける環境を整えることと、育つきっかけを提供することだけだ。

 よき上司は、部下が自分を乗り越え、追い越していくことを喜びとするとよく言われますが、渡邉氏の考え方も同じです。さらに、渡邉氏自身、そういう状況を生み出すべく積極的・能動的に動くことを実践しているようです。

 もうひとつ、社員の適材適所を追求する「多面的評価」に関する渡邉氏言葉です。

(p111より引用) あるポジションで成果を出せなかったからといって、「だから彼には能力がない」と決めつけることはできない。私は先ほど「シビアに社員の能力を判断しなくてはいけない」と述べたが、シビアであるというのは、一面的な視点からのみ、部下の評価をすることではない。
 「彼ははっきりいって、○○には向いていない。しかし□□のポジションであれば、その長所を存分に発揮してくれるに違いない」
 というように、シビアでありながらも、多面的な評価が不可欠となるのだ。

 経営資源として、よく「人・物・金・情報」といわれますが、渡邉氏は「人」を「経営資源」だとは考えていません。「人は会社そのもの」との意識です。
 資源と考えると「使う」「有限」「消耗」・・・といったイメージが浮かびます。が、渡邉氏は、人の能力の可能性を尊重します。ポジションに対する適性の評価はシビアですが、それはあくまでもその「ポジション=役割」の適不適の判断に過ぎません。その役割に適性がないからといって、全面的にその人の劣位を意味しないということです。

 一時の評価はシビアではあっても、次に別の適所を探す。リカバリするチャンスをとことん与える。こういう「人」を大切に考える姿勢は、私としても、何時も意識しとことん見習わなくてはなりません。

(注:今(2022年)時点で当時の読後感を振り返ってみると、いろいろと感じるところが多く、それはそれで“いい勉強”になりますね)



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