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デマ・陰謀論・カルト (物江 潤)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつも聴いている大竹まことさんのpodcast番組に著者の物江潤さんがゲスト出演していて、本書の紹介をしていました。

 最近のネット社会で流布している情報は間違いなく “玉石混交” ですが、その中には「いくら何でもそんなことはあり得ないでしょう」といった類の信じ難い内容のものも流通しています。
 本書は、物江さんによるそういった「妄説」が流れる実態の解説本です。

 ともかく “事実は小説より奇なり”、ここまで浸食されているのかと大いに驚いたのですが、そういったネット社会と付き合ううえでの警鐘として、「検索すればするほどデマを信じてしまう」の章では、物江さんはこう指摘しています。

(p117より引用) フェイクニュースの生みの親は、実は自分かもしれないということ。そしてその多くは、正義感・使命感・感動といった感情の高ぶり、高揚感がもたらすことを、現代社会に生きる私たちは知る必要がありそうです。

 何気ない「いいね」や「リツイート」の連鎖が情報の歪みを増幅しているという現実。ともかく、今、私たちを取り巻くネット環境に流通している情報は、悪意にもとづく意図的な加工に加え、背後で動くアルゴリズムや “善意のつもり” の集積により何等かのバイアスがかかったものになっています。
 そういった雑多な情報の氾濫により “歪んだ言論空間” が形成されていると考えなくてはなりません。ネットで目にする言説は、決して “世の中の平均的な姿” を映し出してはいないのです。

 さて、そういったホットな世情を扱った本書ですが、読み終わっての感想です。

 扱っているテーマ故だと思いますが、正直、私には読みにくかったですね。
 そもそも “通常の理解?” を越えた事象なので理解のための土台が私の中に準備されていないことに加えて、同じようなエピソードやコメントが再三登場していて解説内容もかなり冗長だったことも、その要因です。

 取材した材料はかなりのボリュームがあるのでしょうから、デマ・陰謀論・カルトといった個別の小テーマごとに取り上げるケースを絞ってでも、実態をもっと具体的に深彫りして立論にメリハリと厚みを持たせた方が良かったように思います。

 タイムリーで興味深いテーマを取り上げている著作なだけにちょっと残念です。



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