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きみが校長をやればいい 1年で国公立大合格者を0から20名にした定員割れ私立女子商業高校の挑戦 (柴山 翔太)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 東洋経済ONLINEの記事を読んで興味を持ったのですが、ちょうど同じタイミングでいつも利用している図書館の新着本リストにアップされていたので手に取った本です。

 テーマは今までにも時折見かけたものですが、やはり実際の取組みを当事者本人がリアルに描いた内容は刺激に満ちています。
 そういった多彩なエピソードの中から、私の関心を惹いたくだりをいくつか覚えとして書き留めておきます。

 まずは、私立福岡女子商業高校の挑戦の主役、30歳の若さで同校の校長に就任した柴山翔太さんの基本姿勢をうかがい知ることができるくだりです。

(p73より引用) 僕の進路指導のスタイルは、生徒の意向は尊重しつつも「生徒の選択肢を増やす」こと。
 最終的な意思決定は生徒がしますが、「大学に行けばこういう可能性があるかもしれない」「その仕事に就きたいなら、こんな道もあるかもしれないね」などと、生徒にできる限りの情報を与えて、生徒自身に選択肢を増やしてあげることが大切です。

 そう、“生徒たちに自らの可能性に気づかせ、自分で判断することを求める”、とても大切なことですね。
 これはいわゆる「学力」の高低とは全く関係ありません。テストの点数がよくても、主体的行動がとれない生徒は山ほどいます。

 柴山さんが実践している小論文の指導スタイルからも、生徒の自主性の育成をとことん重視しているのが見て取れますね。

(p200より引用) もちろん生徒によっては、合う・合わないがあるので僕の指導スタイルは生徒たちに学習方法を紹介するという表現が適切かもしれません。
 例えば目から情報を吸収する方が向いている視覚優位な子と耳からの方が吸収しやすい聴覚優位な子では適切な方法は異なります。大事なことは自分に適した方法を見つけ調整していく自己調整力を身につけることだと考えています。

 ここでも、調整するのは生徒自身です。

 柴山さんは、生徒が “自主的に判断” し、その目標に向かって歩み始めるにあたって、各自の目標を書き示すことを勧めました。

(p89より引用) 20枚程度の気合いの入った書き込みが揃った頃、職員室の先生方の間では「自分の名前を書いてあんなに高い目標を掲げると受からなかったら可哀想じゃないですかね」と言う声も上がりました。
 そのような声に対する僕の考え方は、「合う・合わないはあるので嫌であれば書かないし、後から嫌になったら外せばいい」です。
 学校現場は少しでもリスクがあるものを大人が先回りして潰しすぎていると思います。

 このあたりの対応姿勢も肩に無用な力がはいっていなくていいですね。
 やってみて、合わなければ個別に修正すればいい。一人ひとり考えや性格が違うのですから、無理に同じ思想や行動を求める必要はありませんし、そういった均質的な価値観の強要は、“生徒に合わせた個別指導” の放棄でしょう。

 さて、生徒や教職員を巻き込みながらの柴山さんのチャレンジですが、もちろんそれは緒に就いたばかり。

(p178より引用) まだまだ全校生徒にとって熱量の高い時間にはできていませんが、中間層が動いてくれれば空気が変わると思っているので今後も心が動く時間を作り出していきたいと思っています。

 こう語る柴山さん。

(p236より引用) 「普通科への進学が難しかったから商業高校」「高校卒業後に就職を目指しているから商業高校」などというイメージから脱却し、「高校からビジネスを学び、将来的にはビジネスの世界を牽引したいなら商業高校」というような高い志のもとで選ばれる学校になりたいと思っています。

 目指すべき目標に向かって、柴山さんと福岡女子所業高校のみなさんが成しつつある現在進行形の変貌ぶりが大いに楽しみです。



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