幕府軍艦「回天」始末 (吉村 昭)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
吉村昭さんは私の好きな作家のひとりで、かなり以前には集中して何冊か読んでいました。
今回、まだ読んでいない作品が、いつもの図書館の新着本リストの中に並んでいたので手に取ってみました。
吉村さんの作品の中では、比較的軽めですね。幕末から明治維新期が舞台。函館に渡った旧幕府軍と新政府軍との一連の戦い(戊辰戦争)におけるエピソードのひとつを取り上げたものです。
小説なのでネタバレになるような引用は避けますが、精緻な取材に基づくノンフィクションを基本としつつも、「表現者」としての吉村さんの非凡な筆力を示すところを書き留めておきます。
新政府軍艦艇との戦闘に向かう「回天」が、中継地のある湾内に進んでいった場面です。
リアリティを積み上げた壮絶な戦いの物語を綴っている合間に、こういう一滴の清涼剤のようなくだりを織り込むところが見事なんですね。
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