不機嫌な職場-なぜ社員同士で協力できないのか (河合 太介 他)
帯には、「あなたの職場がギスギスしている本当の理由 社内の人間関係を改善する具体的な方法をグーグルなどの事例もあげて教えます」と書かれています。会社には、いろいろな職種・階層を問わず、何とかして活き活きとした職場にしたいと考え悩んでいる人は数知れずいますね。
さて、河合太介さんをはじめとした著者たちは、この問題の原因分析と対策検討にあたって、「役割構造」「評判情報」「インセンティブ」の三つのフレームワークを用いて議論を進めていきます。
その中の「役割構造」でのキーワードは「組織のタコツボ化」です。人に帰納させると「属人化」ということになります。
二つ目の「評判情報」。
これは、「相手のことを知る」ことがスタートになります。そのための方法として誰でも思いつくのが「ソーシャルメディア」の社内活用です。
この著者たちのコメントは、一面真実だと思いますが、世の中の多くの企業の実態を抑えていない結論でもありますね。
企業内でこういった情報共有・連携ツールを浸透させるには「面白さ」だけでは無理です。そこには「ツールを使う必然性」が条件に加わってきます。いくら面白いブログでも、自分の業務に役立たなくては結局は使われないのです。
それから、もうひとつ。「そもそもこの手の仕掛けに響かないメンバも厳然と存在する」という現実もあります。これは、良い悪いの問題ではなく、所与の環境条件です。
私自身、以前、2・3の組織で1年以上にわたって社内SNSの試行をやってみましたが、やはりこれらの壁を乗り越えられず一定以上の利用拡大には至りませんでした。
三つ目は「インセンティブ」。
この最後の点が最大のポイントです。
いかに仕組みができても、とどのつまりは「マインド」の問題が残るのです。この点が最も悩ましいところです。著者たちも十分に認識しています。みんな気になっている、現状には心を痛めている、でも「協力への第一歩」が踏み出せない・・・。
これが「援助行動の傍観者効果」といわれるものです。
この「傍観者」を生まないようにする方法が難しいのです。著者たちは、このためには、「感謝と認知のフィードバック」が重要だと説いています。が、このあたりになると俄然具体性に乏しい立論になってしまいます。
本書の物足りなさは、まさにこの主張にあります。「マインド」の部分、すなわち「応用心理学」的観点からの分析やアプローチが弱いのです。
読み通してみて、本書の示唆にはリアリティの希薄さを感じざるを得ませんでした。200ページ程度の新書ですが、内容は20~30ページもあれば伝え切れる感じです。
残念ながら、現場の一人ひとりの「心」の実態に刺さり込んでいない表層的な処方箋だという印象が残りましたね。
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