見出し画像

ゴリラの森、言葉の海 (山極 寿一・小川 洋子)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 先に読んだ山極寿一さんの本「ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」」がなかなか面白かったので、続けて手に取ってみた本です。
 こちらは、作家の小川洋子さんとの “対談集” です。

 さて、読み終わっての印象ですが、勝手に一人合点で思っていた(期待していた)内容とはかなり違っていましたね。
 もう少し山極さんから「ゴリラの興味深い生態」の話が聞けるかと思ったのですが・・・。そういった点からいえば、かなり欲求不満が残りました。
 また、別の本でリベンジしなくてはなりません。

 とはいえ、なるほどと感じるようなお二人のやり取りもありました。
 屋久島の原生林の中でのお二人の会話です。

(p213より引用) 小川 作家が作るのは「架空の物語」です。しかしそれは、読者の生きている場所と断絶した世界ではありません。時空間を測る尺度が現実と異なるだけで、どこかに実在するかもしれない世界なんです。
(中略)
山極 ゴリラとわれわれは同じ時間を生きているわけですよね。でも、人間はゴリラの世界に入ったことがなかった。ゴリラも人間のことは知らなかった……。ゴリラの世界を知ることは、小説を読んだ後の感触とすごく似ているんです。

 「野生のゴリラを知ることは、ヒトが何者か自らを知ること」、ゴリラの研究と小説との共通点を山極さんは感じ取ったのでしょう。

 本書は、“人間”と対比された“類人猿”の社会的生態のトピックが散りばめられた「対話という形のエッセイ」です。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?