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実践するドラッカー【行動編】 (佐藤 等)

 「思考編」に続いて読んでみました。
 こちらは「成果をあげるための具体的な方法」について記されています。

 もちろんドラッカーが語る示唆に富むアドバイスが列挙されているのですが、「行動」に焦点を当てている分、「思考編」に比べて解説が若干表層的なような印象を持ちました。
 とはいえ、引用されているドラッカー自身の言葉は、それぞれ、読者に対して改めて考え直すことを求めるものでした。

 その中からひとつ、「意思決定」について語ったくだりを紹介します。

(p54より引用) 意思決定についての文献のほとんどが、まず事実を探せという。だが、成果をあげる者は事実からスタートできないことを知っている。誰もが自分の意見からスタートする。しかし、意見は未検証の仮説にすぎず、したがって現実に検証されなければならない。『経営者の条件』

 これは、私としてもまだまだ習慣化されていない考え方です。やはり、何か「判断」や「決定」をしようとするときには、まずは「事実」を押さえてからというやり方に固執してしまいます。
 ドラッカーは、「事実」だと思われるものの多くは「仮説」であると指摘しています。すなわち、「意思決定」は、結局のところ、正しい問いをスタートにした「仮説→検証」プロセスによるのだというのです。このあたり、なかなか理解し難いところですし、どうもまだ身につかないですね。

 さて、本書も、「思考編」と同様に、実際にドラッカーの思想を行動に移すための整理ツールを用意しています。15の「実践シート」です。それらを覚えに書き留めておきます。

(p41より引用) 実践シート① あなたにとって、緊急ではないが重要な活動や行動は何ですか。この1週間、そのためにどれだけ時間を確保しましたか(確保した時間が十分でなかった場合は、その理由も書いてください)。

(p43より引用) 実践シート② あなたがやめること、もしくは人に任せることが望ましいと思う活動や行動を挙げてください。

(p81より引用) 実践シート③ あなたがいま、解決したい問題や課題を挙げてください。

(p83より引用) 実践シート④ 仕事を通じて叶えたい目標や夢を挙げてください。

(p113より引用) 実践シート⑤ 自分の強みや得意分野を軸とした、5年後の理想の姿を書いてください。

(p115より引用) 実践シート⑥ 組織の成果とあなた自身の貢献を確認し、5年後の理想とする貢献の範囲やレベルを具体的に書いてください。

(p117より引用) 実践シート⑦ 実践シート⑤⑥の回答を前提に、今年・今月・今週、集中して取り組む目標を一つ挙げてください。

(p137より引用) 実践シート⑧ いま解決したい問題や課題について、どうすれば解決できるか、具体的な行動を挙げてください。

(p139より引用) 実践シート⑨ どのようにすれば夢や目標が叶えられますか。具体的な行動を挙げてください。

(p141より引用) 実践シート⑩ 計画を定期的に振り返り、成果に近づくための工夫を挙げてください。

(p171より引用) 実践シート⑪ 師と仰ぐ人、影響を受けた人は誰ですか。それらの人から学んだことは、いまの仕事にどのように生きていますか。

(p173より引用) 実践シート⑫ あなたが教えることのできる知識や技能、経験は何ですか。どのようにすれば、教える機会をつくることができますか。

(p175より引用) 実践シート⑬ 継続して学習していること、今後も学習する必要があることを具体的に書いてください。

(p177より引用) 実践シート⑭ 仕事以外でどのような目標をもっていますか。具体的に行っていることがあれば、それを挙げてください。

(p179より引用) 実践シート⑮ あなたは何によって憶えられたいですか。過去はどうでしたか。いま、これからはどうですか。


 本書の最後の項は、ドラッカーの究極の問い「自分は何によって憶えられたいか」の答えについて記されています。

(p166より引用) 一つは、人は、何によって人に知られたいかを自問しなければならないということである。二つめは、その問いに対する答えは、歳をとるにつれて変わっていかなければならないということである。・・・三つめは、本当に知られるに価することは、人を素晴らしい人に変えることであるということである。「プロフェッショナルの条件」

 ドラッカーの組織論おける重要なコンセプトは「貢献」です。
 人は何に対して貢献するのか。それは「組織」に対してであり、「社会」に対してであり、より根本的には「人」に対してなのだと思います。ドラッカーにおける「顧客」は「人」であり、ドラッカーの「人に対する貢献」が「その人を変える」ということだったのでしょう。

 「人を変える」のは無理ですが、私もせめて「人が変わる手助け」ぐらいはできるようになりたいと思います。



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