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25歳の補習授業 ― 学校で教わらなかったこれからいちばん大切なこと (福岡 伸一 他)

 20歳代の若者をターゲットに、幅広いジャンルの論客?が応援メッセージを送ります。

 登場するのは、分子生物学者 福岡伸一氏、コピーライター 糸井重里氏、ジャーナリスト池上彰氏、政治学者 姜尚中氏、解剖学者 養老孟司氏、タレント 太田光氏、経営者 渡邉美樹氏の7名で、それぞれの皆さんの、若者に自らの思いを何とか伝えようという真摯な気持ちが感じられる内容です。

 それぞれの方は、自身の専門分野の話題から、若者へのアドバイスを紡ぎだしていきます。

 たとえば、「自分探し」についての福岡伸一氏のお話。

(p29より引用) 細胞はひとりでは生きることすらできないのです。
 どんな細胞にでもなれる可能性は持っているのに、周囲との相互作用がないと自分の存在をいうか、自分自身を定義できない。
 つまり、生物学がずっと探してきたものは“関係性”だったというわけです。
 これと同じように考えると、人間も「自分とは何か?」「自分のあり方とは?」というようなことは、自問自答して、内省してもわからないということになります。

 また、「人間関係」についての糸井重里氏のコメント。

(p54より引用) ほかのメンバーと仲良くできる人の特徴って、なんだか分りますか?
 それは、「人当たりがいいこと」ではなくて、「あの人、すごいな」とか「いいヤツだな」なんていうように、「職場の仲間のことを尊敬できること」なんですよ。

 こういった感じでそれぞれの方々がいろいろな話をされているのですが、その中から特に私の印象に残ったものをひとつご紹介しておきます。

 太田光さんからのメッセージです。

(p160より引用) たとえば、団塊の世代って、「俺たちのときはもっと活気があって・・・」みたいなこと言いたがるんだけど、「果たして本当にそうかな」って思うんですよね。
 学生運動にしても、ただ何も考えずに流行に流されてただけでしょ。・・・
 そんな、しょうもない世代に比べれば、むしろ今の若い人たちのほうが恵まれてるかもしれない。
 それこそ今の時代は本当に混沌として、このあいだの選挙みたいに何がどうなるか分からないっていう意味で、可能性が満ちあふれてるわけでしょう?・・・
 これはもう、「何をやってもいい時代」が来てるんだよ、きっと。
 みんなが同じ方向を向いていた高度成長期やバブルのころに比べりゃ、何倍もワクワクできる。

 いつの時代でも、現状についての「若者」としての不満や悩みはあり、将来についての不安や夢もあるはずです。そしてまた「未知の可能性」も。
 ただ、これは年齢に関係のないことでもあります。これはとても大切なメッセージです。

 他方、ちょっとした不満も感じました。

 本書のタイトルには「25歳・・・」とありますが、中学生でも高校生でも気軽に読める内容です。むしろ、25歳=社会人には、もっとしっかりした「コンテンツ(思想・思考)」で伝えるべきものだと思います。

 この本のメッセージに込められた想いは全く否定するものではありませんが、いい年のオジサンとしては、「25歳の大人が、こんなかたちで元気づけられるなよ」と言いたくなりますね。

 しかし、やはり今は、こういう時世なのでしょうか・・・。



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