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人間と人生を味わい尽くす~神山典士作品集

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音楽、スポーツ、演劇、芸能、ビジネス、料理等、あらゆるジャンルの人間ドラマを描くノンフィクション作家神山典士作品集
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#音楽

TheBazaarExpress108、『みっくん、光のヴァイオリン』4章、5章、あとがき

第4章 みっくん、カンタービレ!

《ソナチネ》

「美来ちゃん、五年生でコンサートが開けるなんてすごいわね。お客さんの前で何曲も演奏するのは大変だけど、がんばってレッスンをしましょう」

 石川先生はそう言って、コンサートの開催に賛成してくれました。もしこのとき石川先生が、「五年生でコンサートなんて無理です、早すぎます」と言っていたら、このコンサートは開けなかったかもしれません。なんに対しても前

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TheBazaarExpress107、それでも「ソナチネ」は弾いていきたい~少女の叫び

「私はそれでも『ソナチネ』は大好きだからこれからも弾いていきたい。でも、嘘の作曲家のクレジットが入るのはいやだ」

 義手のヴァイオリニスト大久保みっくん(愛称、現中1)がそう言ったのは、正月半ばのことだった。この夜集まっていたのは、大久保家4人(両親と妹)と私、そして神妙な表情でうなだれている作曲家・新垣隆氏。すでに新垣氏は前年暮れに、大久保家4人の前で「実は私が佐村河内の曲を18年間つくり続け

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TheBazaarExpress72、神に選ばれし子~指揮者・佐渡裕編

 その時、真っ二つに折れた指揮棒が宙を舞った。

 座間市民合唱団約三五〇名と読売日本交響楽団約八〇名の演奏が大団円を迎えた時、私には、折れた指揮棒の先端が放物線を描いてステージと客席の中間に弾むのがはっきりと見えた。

 ベートーベン作曲「交響曲第九番」。お馴染みの合唱の最後の音がホールに吸い込まれると、客席からは嵐のような拍手が鳴り響いた。佐藤しのぶ、吉田浩之ら四人のソリストは、四度もステージ

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TheBazaarExpress71、夢を叶え、叶え続ける~ベルリンにて、佐渡裕編

 ショスタコービッチの「交響曲第五番」。軽快なメロディーの最後に重厚なティンパニの音がホールに吸い込まれた瞬間。万雷の拍手が指揮台で祈りのポーズをとる佐渡裕(50歳)に注がれた。5度目のカーテンコールを終え、楽団員全員が引き上げても拍手は鳴りやまず、手拍子すら起きた。独りぼっちのカーテンコール。めったにない光景だ。

 5月20日から3日間開かれたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会での

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TheBazaarExpress70、「しあわせ運べるように」~神戸市音楽教諭・臼井真編

 日本列島の北半分、約500㎞に渡って地震と津波の被災地が続く東北一帯にあって、一曲の歌がじわじわと被災者の心に深くしみ入りつつある。

『しあわせ運べるように』

震災から4カ月目となる7月11日、仙台国際センターで営まれた「東日本大震災慰霊祭」でこの歌を歌ったのは、震災直後には約450人の避難所になった仙台市若林区の市立八軒中学校の合唱部員たちだった。

「地震にも負けない 強い心を持って

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TheBazaarExpress56、誰も見たことのない青空を求めて~ピアニスト辻井伸行編

   世界のクラシック・シーンの厳しさを改めて垣間見たのは、ピアニスト・辻井伸行のアメリカ合衆国コロラド州・アスペン音楽祭での演奏会に同行取材した時のことだった。

 辻井の到着は予定より1日遅れ、演奏会のわずか23時間前のこと。同行して来た母・いつ子に聞くと、「出発直前までビザが降りなかったので、演奏会はキャンセルかもしれないとすら思ったんです」と言う。

 しかも主催者から渡された飛行機のチケ

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TheBazaarExpress31、夢の力、桜島7万5000人コンサート、長渕剛編(2004,09,01)

 「オールナイト・ライブを発表してから二年間、いちからの整地から本番まで、長い気がしていたけれどいざその当日を迎えると、やはり短かった気もします。  オールナイトをやってみて、わいてきたのは心からの感謝の気持ちです。  はるか遠方からやってきて、朝まで拳を突き上げてぐさたファン、そしてブルドーザーで整地して汗を流してくれた人たち、桜島の皆さんの理解に本当に感謝します」

 街に秋風が立ち始めた頃

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TheBazaarExpress30、ミスチルはいかにしてナンバーワンになったか~ミスチル編(1995,05)

1 夜明け前

 それは、夜明け前の光景だった。

 東の空にはうっすらと光の帯が広がり始めてはいたが、まだ太陽はその姿を現していなかった。

 ’94年1月1日午前5時頃。大田区下丸子の路上に、7〜8人の若者たちが姿を現した。

「楽しい夜だったよ」

「また来年も集まろうよ」

「また鍋で盛り上がろうか」

「今年もお互い頑張りましょう」

 元旦の早朝。寝静まった街にそんな会話を響かせながら

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