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「顧客価値の提供」と「利益方程式」|9冊目『ビジネスモデルの教科書』

ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 編(2020, ダイヤモンド社)

ビジネスモデルが足りない

仕事や趣味の活動の中で、「こんなものがあったら便利だな」とか「世の中にこれが足りてないな」と思うことがときどきあります。
それはきっとビジネステーマでありビジネスのアイデアなのだと思うのですが、そこから先に進みません。
正確にいうと、それを解決するための方法としての商品やサービスを考えたりもするのですが、それでビジネスが成立するという確証を持てず、その結果、いまだに社長にはなれていません。

アイデアはあってもビジネスモデルがないのです。

RBS(立教ビジネススクール)の必修科目に『ビジネスシミュレーション』という授業がありました。
テーマ(私たちのときはワイナリー経営)に沿って事業計画をつくります。

修士論文ではおよそ半分の人がビジネスプラン(ビジネスデザイン)に取り組みました。
自分は論文(ビジネスリサーチ)を選んだのですが、ゼミはビジネスリサーチとビジネスデザインと分けていたわけではないので、同じゼミのゼミ生の発表を聞いて、一緒にビジネスプランについて学ばせてもらいました。

よくできたビジネスプランにはよくできたビジネスモデルがあることが理解できました。


ビジネスモデルの可視化

RBSの授業やゼミでも「ビジネスモデルキャンバス」はよく使われていました。

WEBやスマホアプリの技術によって様々なイノベーションを起こすことができていますが、そうした仕組みの図式化されたものを見ると、なるほどこれがビジネスモデルか、と思います。

ビジネスモデルの定義

ビジネスモデルの教科書』は月刊の論文雑誌『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された論文からビジネスモデルについて書かれたものを集めたものです。

修士論文を書くには、先行研究を調べることが必須なのですが、学術論文は専門家が専門家に読んでもらうために書いているものですから、それを読むための前提となる知識や用語の理解が必要で、何しろ難解です。

ハーバード・ビジネス・レビューの論文は論文ではありますが、専門家オンリーではなくて一般の人を読者対象にしているので読み易く、定期購読の学割プランもあったのでビジネススクール在籍時はたいへんお世話になりました。

『ビジネスモデルの教科書』には「ビジネスモデルキャンバス」を取り上げた論文もありますし、他にも興味深いものがありますが、今回は特にマーク・ジョンソン氏とクリステンセン教授、ヘニング・カガーマンの『ビジネスモデル・イノベーションの原則』のビジネスモデルの定義に注目したいと思います。

以下は自分がビジネスプランを考えるとしたらの思考プロセスです。

私は、ビジネスプランを考えるときに、外部環境、すなわち社会のニーズやトレンドについて考えます。

それから、まったく自分と関係のないビジネスにはなかなか手を出しづらいので、今までの自分の経験や学んできたこと、あるいは現在の自分の職業など、すなわち自分が持っているリソースに目を向けて、ビジネスとして何ができるのかを考えます。

ビジネスのテーマが決まったら、差別化を考えます。
既存に同様のビジネスがないか。
あるとしたら、自分の考えているものはそれとどう違って、どこに競争力があるのか。

このあたりまではときどき考えるのですが、なかなかそこから先に進みません。
致命的なのは、収益化の仕組みが構築できないのです。

ビジネスモデルキャンバスはビジネスの構成要素を9つに分けて、それを図に落とし込みます。
項目を埋めていくことで、ビジネスモデルが一目瞭然に可視化されます。

『ビジネスモデルの教科書』の本ではスタンフォード大学のスティーブ・ブランク准教授がビジネスモデルキャンバスについて書いています。

9つの要素には仮説が付随しているので、ビジネスモデルキャンバスを見ながら仮説を検証する必要があると言います。

クリステンセン教授らの『ビジネスモデル・イノベーションの原則』ではビジネスモデルは4つの要素で構成されるとしています。

すなわち「顧客価値の提供(CVP)」「利益方程式」「カギとなる経営資源」「カギとなるプロセス」です。

特に重要なのが顧客価値の提供(CVP)だと言います。

ビジネスモデルキャンバスでも中央に記載されて、重視されるのが「価値提案」です。

ビジネスモデルキャンバスは構成要素が9つあるので、自分はそれを埋めることに注力してしまい、目的そのものとしてしまっていました。
そして「収益の源泉」「コスト構造」が下部に書かれているので、それを考えることを後回しにしてしまいがちでしたが、ビジネスを成立させるためには「利益方程式」は超重要項目です。
それができないとビジネスになりません。

構成要素の数が違うだけで、ビジネスモデルキャンバスが表していることはクリステンセン教授らの4要素と、だいたい一緒です。

しかし、項目が4つに絞られると、何から考えていくべきなのか、何が必須なのかがさらに明確に整理される気がします。

ビジネスモデル・イノベーションの原則(カガーマンさん、イラストなくてごめんなさい)

60歳までに自分の会社を起業したいという夢。
昨年、友人と立ち上げた一般社団法人。
これらを成功させるには、ビジネスモデルの構築が必須です。

今年は勤務先の高校の起業ゼミ(高校なのにゼミがあります)にプロボノとして参加させてもらうことになりました。
そのためにもビジネスモデルについてもっと学びを深める必要があると思っています。

参考書籍
アレックス・オスターワルダー&イヴ・ピニュール 他 著 小山龍介 訳, 2012 『ビジネスモデル・ジェネレーション』翔泳社
近藤哲郎, 2018『ビジネスモデル2.0図鑑』KADOKAWA
王 沁, 2021『中国オンラインビジネスモデル図鑑』かんき出版



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