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しあわせですか

昔々の思い出ばなし

伯母の家で従姉たちが美味しそうにパンを食べている

従姉たちは勝手に冷蔵庫を開けパンを出す

伯母さんは嬉しそうにわたしにもパンをくれようとする

従姉たちも楽しそう

そこで目が覚める

なんだ夢か…

伯母は亡くなって十年が経つ
最期は従姉ひとりに見送られ

従姉にはなんにも話さなかった
ずっとだんまり
 
葬式代も無く
従姉は母にせびってきた

伯母の家は祖父の代まで余裕のある暮らしをしていた

母とわたしはお金も身体も親も子供も全てが借り物という教えを聞いている

細く長く聞いている
 
自分の欲のために使うと全てを取られると聞かされる

母は伯母の没落を見ているから
ことさら 「お金も大切」と言っていた

伯母は博打をした
商才のない伯父に全てを掛けた
最初から一文無しになることは誰が見ても分かっていた

頭のない、力のない、プライドだけの高い、情けない婿養子の伯父である

世間知らずと言われるわたしにも分かってしまうほど

祖父の残した財産を湯水のごとく使い果たす

わたしも母の話を聞きながら「しっかりしろよ、巻かれるな」と伯母に対して思ったものだ

そして最期には
伯父の葬式代は伯父の兄弟が
伯母の葬式代は母が出す

残った娘たちと孫はどうしているのか
三人とも病んでいる

神様はやはりいる
神様を知ると自分のやったことは直ぐに返ってくる 

伯母は亡くなって
もう十年も経ったのに
家の直ぐそばにお墓があるのに
まだ入れない

従姉がお骨を握って離さない

母はそのことだけが心残りで
「姉ちゃんのお骨を墓にいれてこないと」と言っていた

母の望みは叶わぬまま
母も彼の世に還ってゆく

伯母の人生はしあわせなのか
夫に尽くせてしあわせだったのか

みんなを不幸にしてまでも

しあわせだったのか

伯母はなぜあんな無謀な博打をしたのか
本当は人生に失望していたのかも

何も叶わない人生に

伯父のいるお墓には入りたくないと言っているのか

彼の世に還ってからも伯父と一緒にいたくないのか

今はひとりでしあわせですか

伯母の笑顔が見える気がした

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