見出し画像

恋した剱岳、そして限界へ①【雷鳥沢2021夏 2日目】

雷鳥沢にテントを張って、のんびりと焼き肉丼を食べて温泉に入って寝た。
雷鳥沢2日目の朝。
コロコロ変わる天気予報によると、この日が唯一の晴天かも知れない。明日以降、台風が来てずっと雨マークが並んでいる。
運良く、早起きもできた。と言っても7時半だが。

時は今。
ツルギくんに会いに行くべし。
是非に問わず!!

大慌てで準備を開始。
コンプレッションタイツに履き替え、山に登りまっせという本気スタイルに着替える。
それから適当にパンにセブンイレブンのたまごサラダを挟んでラップに包んだのを2つ。
カレーヌードルとお湯を幻ボトルに入れて、固形燃料とライターとスノピのマグ。忘れずに箸も入れた。
ポカリの粉と大量の水と、手ぬぐいとトレッキングポールと山登り用のハットをかぶり、8:20に雷鳥沢キャンプ場を出発。

テントのすぐ下を流れている川を渡る。
実はびびりで吊り橋など一人で渡れないタイプの私なのだが、地味にこの浄土橋が一番の足が震えるポイントだったりする。板はぐらぐらしています。

画像1

良い天気。

画像2

雷鳥坂の道は登ったことのある道だから平気だが、天気の良い日に登るのは初めてだ。
めちゃくちゃしんどい坂だということを分かって覚悟している。雷鳥坂からキャンプ場を見下ろす。
良い景色である。

画像4


ちなみに、写真に説明を入れてみた。

画像3

赤○が私のテント
黄色が、ココアを飲む、温泉もある雷鳥荘
青矢印あたりがみくりが池

温泉に入りに行くことが簡単ではないのが分かっていただけただろうか。赤○から黄色まで上がるのが実は一番しんどいポイントだったりする。ちなみに標高2450mなので息切れ半端ない。
そして、今から進む方向を向いて雷鳥荘からの帰り道に撮った写真がこちら。

画像5

そして説明を入れてみた。

画像6

赤○が私のテント
そこから雷鳥坂と呼ばれる黄色い矢印のような道を直行で登っていき、
黒○の剱御前小舎へと、まず登る訳である。
昨年のゴール地点である黒○まで行くと、左向こうに隠れている剱岳がようやく見えてくるという切なさの募る演出。
とにかく2時間、登り続けるしかないのである。

しばらくすると。
おや。

画像7

雲行きが怪しくなってきた。

画像8

そうなると足取りが一気に重くなる。
登ってもツルギくんはまた今回も見えないかもしれない…。
そういう思いがしんどくさせていく。
山登りはつくづくメンタルに左右されるのだなあと思う。
私なんて筋力も体力も運動神経もないから、気力と好奇心のメンタルでしか登ってないと思う。
もう降りちゃおうかな。
別にまだ2日目だし、まだ何日かいるつもりだし。
やめる言い訳探しが頭の中で連呼する。
でも、足を動かしてれば前に進む、辿り着くさ、と以前スペインでニコラスに言われた言葉がこだまし、ただ無心に前へと足を動かした。時々雲が途切れて青空が見え隠れするのも頑張れるモチベーションとなった。
ちょうど2時間後、なんとか剱御前小舎に到着。
トイレよりも水よりも真っ先に剱岳の見える看板のところまで駆け寄った。

画像9

お!
剱岳の足元が見える。

昨年の、1回目よりも見えている!
2回目よりもこれから見えてくる可能性がある!
まだ朝の10時半だから、剱岳が見えてくるまで、ここで1日粘ってもいい。

剱御前小舎は、昨年はコロナ禍で中に入れなかったが、今年はマスク着用の上、密を避ければ中へ入っても良かったので、初めて中に入ってみた。
私にしては早く出発したので、まだまだ時間はあるから、晴れ間が出るのをここの休憩スペースで待つことにした。
ちょうど窓から剱岳の方面が見えるので、手作りたまごサンドを頬張りツルギくん方面を監視。
出待ちタイムに入った。
我ながら手作りたまごサンドがめちゃくちゃ美味かった。(はさんだだけ)

画像10

おや。
ちょっと晴れてきたかな。

画像11

むむ。

画像12

1番上のとんがり部分がどうしても隠れるなぁ。
でも空が青い。
もうちょっと、行ってみたろかな。

妙な欲が湧く。
「剱沢小屋まで下り40分」という看板。
剱岳に行くには剱沢を経由するらしい。
剱沢までは、ヘルメット(ガチな人たちはみんなリュックに付けている)や、カマキリみたいなやつ(ピッケルと言うらしい)や足の裏のトゲトゲ(アイゼンと言うらしい)を持ってきていない私のような不届き者でも行けるのかを剱御前の人に聞いてみたら、
「剱沢ならここから40分下るだけで着くから大丈夫ですよ。雷鳥沢から上がってきたんなら行けます行けます」とさも簡単なことのように言う山小屋のお姉さん。
そう?
行けるかな。
「多分今日の天気なら、剱沢まで行けば、剱岳は真正面にでっかく見えますよ」
ほんまに?
行きたい。
「剱沢で一泊して剱岳の頂上に登って降りてくるコースならそんなに難易度は高くないですよ」
いや。
お姉さん、さすがにそれは無理や。
鎖掴んで岩をよじ登るなんて、想像するだけで何パターンもの死を予想できた。
「まあ、明日から台風来ちゃうし、今日が最後かもですね。
しばらくはチャンスはないかも。」

うむ。

「お姉さん、ペットボトルの水を2本ください!剱沢に行ってきます!」
私の目はギラギラと燃えだした。
ツルギくんに間近に会えるチャンス。
逃してたまるか。
行くで、行ったるで。
トイレに寄り、出せるものは出し、出ないものはそのままでいてくれと願い、下り40分の剱沢への道を歩き出すことにした。
しかし、実際のところ、剱沢へは私の足ではその2倍以上の時間がかかる道のりであった。
そして、ずっと下るということは、帰りはずっと登らないといけないこと。そして、曇っていても雲の隙間から容赦なく太陽が灼熱の勢いで照り始めたこと。
これが寝不足でまだ体がいまいち高所に慣れていない私のメンタルとフィジカルの両方を削りまくってしまうのであった。

画像13

画像14

画像15

ロープに沿って、この道(いや道なのか?)を、剱岳の足元めがけて、地の果てに吸い込まれるかのごとく、ずっとひとすら下っていきます…


後編へ続く…






この記事が参加している募集

サポートしていただければ、世界多分一周の旅でいつもよりもちょっといいものを食べるのに使わせていただきます。そしてその日のことをここで綴って、世界のどこかからみなさんに向けて、少しの笑いを提供する予定です。