見出し画像

冬じゃないのに餅を焼く【初めての上高地⑧】

小梨平のキャンプ場は、20分間ずつ時間を指定してお風呂に入れる。大きい湯船につかってゆっくりできるのが気持ち良かった。
私は、キャンプでは風呂上がりは髪の毛もドライヤーなどしないし、顔だってアベンヌウォーターを振りかけてニベアクリームをべた塗りして終了スタイルなので、20分もあれば余裕。むしろ、ゆっくりさせていただけて大満足。しかも、同じ時間帯の入浴メンバーが、なぜかタトゥーだらけのフランス人かわいこちゃん3名だったので、「キモチイイネ」と言い合って楽しかった。

さて今晩のメニューはどうしようか。
実のところ、あまりお腹が空いていなかった。
なぜなら、調子に乗って、上高地のお菓子をあちこちで買い食いしていたし、朝ごはん2回と昼ごはんは山賊焼き、そしてもう一回アップルパイを食べたりしていたせいである。
適当なものを買ってさくっとつまむだけでいいや、と思い、小梨平の売店をチェックした。
昨日から気になっていたのが、サトウの切り餅を1個ずつバラ売りしていた点。私は、真冬はミカンと餅だけを食べて生きているのではないかと思うくらい餅が好きである。ミカンも好きだけど。

そこで、私という人間は、何故か冬にしか餅を焼いて食べないことに気づいた。
これって何故なんだろうか。
私の子供の頃は、年末に家の前で餅つきをして、大量の餅を作って、毎日それを消費するというのが年末年始のしきたりであった。
日本の、正月に餅を食うという文化から、正月を年末年始まで拡大解釈され、最終的に冬というシーズンに餅を食べるという形に変換されているだけではないかと思うがどうだろう。
だって、餅などに旬はないだろうし、いつだって食べられる。
なのに私はまんまと「餅は冬に焼くもの」という歪んだ認知で生きてきたことに気づいてしまった。
あんなにも好きな食べ物なのだから、冬限定で食べなくても良いし、年末年始の休みに1日7個餅を食べてしまい激太りして、「餅1個はお茶碗1杯分のごはんと同じカロリーやで」と毎年必ず誰かに言われるお決まりの言葉で戒められるのもうんざりである。(ちなみに私は、そんな訳あるか、とカロリーの概念自体をサンドイッチマン伊達ちゃんが言い出すよりも前から信じていない。)

よし。
秋だけどお餅、食べちゃうもんねー。
と決心し、売店で切り餅を4個買った。
「さくっとつまむ」の範疇を若干超えてしまったがまあ良い。
そして売店で買ったウィンナーの残りと、缶チューハイ(ほろよいの桃味はほぼジュースです)とで本当に簡単に晩酌を開始。
砂糖は家から紅茶用に持ってきていたが、醤油は持ってきてなかったので、小分けのミニボトルで50円くらいで売っていたものを買った。(なんて気が利くの、小梨平の売店。)
私は、餅を食べる時は砂糖醤油一択であり、砂糖6醤油4の、とろっとしたバランスにこだわっている。何度もペロッと舐めて確認する。キャンプとは言えどもかなり神経質になって配合して仕上げた。
餅は、焼き網を持ってきていなかったので、炊飯用のこじんまりした固形燃料に火をつけて、ダイソーのBBQシートを敷いて焼くことにした。
ちなみにBGMとしてインド映画をタブレットで上映中。
お隣の野郎は、朝はアレサフランクリン、夕方はボリウッドが聴こえてきて、動揺しているかもしれないが、こちとら知ったこっちゃない。

画像4

あんまりうまくプクーっと焼けなかったが、中まで柔らかくなったから、ちゃんと焼けているし、良しとした。

画像1

ちなみに2個焼いて食べて、1個追加、1個追加の計4個をペロリ。

画像2


お正月も関係ない、寒くもない、こたつでもない環境で餅を焼いて食べたわけだが、当たり前に美味しかった。
「餅は冬しか焼かない」という決まりごとは、知らず知らずのうちに、私の生き方を狭めていたのである。また一つ私は解放された。
キャンプ飯に力を入れすぎる必要もないし、野菜を必ず添える必要もない。餅4個、ウィンナー3本の晩ごはんでもいいのである。
小梨平の売店は、私にまた一つ人生においてとても大切なことを教えてくれた気がする。気のせいか。いや、気のせいでもなんでもいいけど、餅は美味しかったし、やっぱり砂糖多めの砂糖醤油が一番好きだと再確認。
学びと再確認。
これだからキャンプは楽しい。

続く…

みかんについてはこちら↓



サポートしていただければ、世界多分一周の旅でいつもよりもちょっといいものを食べるのに使わせていただきます。そしてその日のことをここで綴って、世界のどこかからみなさんに向けて、少しの笑いを提供する予定です。