見出し画像

ポンペイにいた。


この1ヶ月半のヨーロッパの旅の何もかもをすっ飛ばして昨日のことを書く。



ポンペイ遺跡に行ってきた。
イタリアの南部、ナポリから列車で1時間ほど。
ここに来ることは何十年も前から頭にイメージしてきた。
今回の世界多分一周旅の行程の中で、はっきりと、「絶対に行く」と決めていた数少ない場所のうちの一つであった。

ポンペイの前編はこちら↓


ポンペイには駅が2つ(もしくは3つ?)あり、「ポンペイの遺跡の入り口のすぐそばの駅を選ぶように」と前日にツーリストインフォメーションの人に念押しされていた。なのに、私は別の列車に乗って、もう一つの遠い方のポンペイの駅に着いたらしい。
Googleマップで見ても、ポンペイ遺跡が巨大過ぎてどこが正面入り口なのか分からないし、カミーノを歩いたことで、別に徒歩1時間くらいなんてことないと思って旅してるから、私の降りた駅から入り口まで徒歩20分と聞いて、むしろ駅近だと感じた。

20分、遺跡の外側を歩きながら、チラチラ見える遺跡に心が弾んだ。
遺跡と反対側を見ると巨大スーパーマーケット、カルフールがあったりして、今ヴェスヴィオ山が再び噴火して、またこの地が火山灰に埋まったら、カルフールも、未来人にとって遺跡になるんだろうなぁとか考えながら歩いた。


開園前に着いたのにディズニーランドのような人だかり。
さすが世界有数の観光地である。
ほとんどがツアーで来ている団体客で、旗や傘を持ったガイドがあちこちでしきりにグループに話している。
私は1人なので、集団の合間をすいすいと先に通らせてもらえて、USJのシングルライダーのように、あれよあれよといち早く入場できた。こういう時に、一人旅はラッキーだなと思う。

入り口で、紙の地図をもらったが、日本語のガイドをQRコードでダウンロードし、My pompeiというアプリもダウンロードする。

最近はこういうタイプの観光スポットが増えてきていて、非常に効率的で便利になっているが、年配の方々やスマホのない人は置いてきぼりになりがちである。
駅には高額なオーディオガイドレンタル屋がいくつもあり、そこで借りてくる人が多いようだったが、無料アプリにオーディオガイドもついていたから、こういう情報って知らないと悔しい思いをするなぁと思った。(私はアプリとかについては知らなかったけど、ポンペイ展も見たしオーディオガイドは要らないや、とケチった末の選択だったが結果的に正解だった。)

さて。
いざポンペイへ。

ポンペイは、イタリア・ナポリ近郊、ヴェスヴィオ山のふもとにあった古代都市。西暦79年のヴェスヴィオの大噴火で発生した火砕流によって地中に埋もれたことで知られ、その遺跡は「ポンペイ、ヘルクラネウム及びトッレ・アンヌンツィアータの遺跡地域」の主要部分として、ユネスコの世界遺産に登録されている。

wikipediaより


ポンペイ遺跡のチケットは、ポンペイ展で気に入って買ったクリアファイルにも使用されている、例の犬のモザイクである。なかなかかわいい。

ディズニーランドかと思った。

遺跡。
街の跡、丸ごと。
ポンペイの町には娯楽のための劇場が大中小と徒歩圏内に3つもあって、闘技場もあった。歩いてるだけでワクワクして、写真を撮りまくった。
かなり暑い中を歩き回っているうちに、古代のポンペイの街をイメージし、また、祖父が歩いた50年近く前を想像し、おじいちゃんはここを歩いたんだなぁと思うと、嬉しかった。

これは当時の横断歩道。
馬車の車輪の幅を計算して作られている。

ポンペイは、遺跡だけれど、ちゃんと町なのである。
いくつも通りがあって、住宅街があり、犬を飼っている家には「猛犬注意」と書かれたモザイクが玄関にあり、居酒屋やパン屋もあり、当時の広告の跡もある。

これ、台所。
居酒屋のカウンター的な。
この穴の大きさで貨幣の価値を判別した、って言ってた気がする。
これは当時の広告。
実は遺跡の中に、今も育っている葡萄畑があったりする。ワインになる。
神殿跡。
向こうに見えるのが、この町を沈めた火山、ヴェスヴィオ山。
当時のパン屋の前で現代のパンを食べて休憩。
ヴェスヴィオ山
遺跡を上から眺める。
穴から眺める。
給水ポイントあり。助かります。
古代人も飲んだ水を飲む。
出た!あの犬!
猛犬注意と書いてある!
京都のポンペイ展で買ったクリアファイルの犬と本家の犬とご対面させた。
猛犬のいる家の並びにパン屋がある。
パン窯が立派。
またもパン屋の前でパン休憩。
アンダルシアで買ったジャムがとても美味しい。


逃げ遅れた人の型に石膏を流したもの。恐怖に怯えた感情が、時を経てまだ伝わってくる気がする。

見事なモザイク。
そしてなんと。
風俗店まである。
公衆浴場のすぐそばに娼館があって、壁に書いてある体位的なもの、つまりはコースを指差して選んだという。
ベッドがいくつもあった。
こちらはテルマエ。
公衆浴場。
つい阿部寛が風呂に入っているのを想像してしまう。
綺麗に残っている、何か忘れたもの。
貝殻のビーナスの絵。
綺麗に残されている。

遺跡の1番奥に闘技場があった。
映画「ポンペイ」で剣闘士が戦っていた場所。映画「グラディエーター」はローマのコロッセオだったが、ポンペイにも奴隷同士を戦わせて殺し合わせる場所があった。

ピンクフロイトがここでライブをしたらしい。

そして、最後に、少し離れた場所にあった秘儀荘。なんとも神秘的な名前。「Villa de misteri」秘密の館。
ここも興味深かった。
キリスト教がまだ普及する前の時代に、ギリシャから伝来された秘教「ディオニソス教」の信仰のための建物。
これがなぜかぞくぞくした。
ディオニソスの秘儀へ入信するための儀式を描いた連続した絵になっていて、なんというか、とてもミステリアスなのである。
そして、この朱色。
ポンペイレッドと呼ばれていて、火山噴火以前は黄色い壁であったのが、ヴェスヴィオ火山の噴火と噴出ガスによって赤色に変色したといわれている。
あまり写真は撮らなかったが、釘付けになって見てしまった。

意外とすぐそばにあるヴェスヴィオ山。
また噴火したらどうしようってちょっと不安になった。



あっという間に6時間近くが経過していた。
遺跡の中を歩いていた時、突然、なんとも言えない感動が私の心の中に起こった。
大好きなおじいちゃん。
今は亡きおじいちゃんがここを歩いたんだなぁということ。
おじいちゃんが、まだ学生だった私に、「イタリアのナポリの近くにポンペイという町があってな。」と言って、ポンペイの思い出話を何度もしてくれていた。

「とにかく素晴らしい場所だったから、いつか行って見ておいで。」

だいぶ遅くなったけど、見にきたよ。
本当にワクワクする場所だね、おじいちゃん。

2000年近く前にここに町があって、火山の噴火で埋まる前までは、生き生きとした生活があった。そこで突然命は終わり、ポンペイの歴史も終わってしまったけど、封じ込められて、こうやって、一部がそのままの形で残っていること。
息吹すら感じる。
おじいちゃんが見たものは、きっと今もほぼ変わらない姿でここにある。
それがタイムスリップしてポンペイの町とおじいちゃんと私を繋いでいる気もした。私の想像力の果てしなさゆえの。

今は亡き大切な人たちの生き生きした生活。命は終わっても、私の中に残っている。
おじいちゃんが生きている間に、「行ってきたよ、凄かったね!」って言いたかった。
でもそれはもう叶わない。
その代わり、ポンペイを歩きながら、「おじいちゃんもこれを見たの?」と口に出して呟いた時、おじいちゃんが「すごいやろ」と言ったような気がした。
私の想像の産物だけど、それでもいい。
とにかく感動した。
感動以外の言葉を探したけど、見つからない。
心がじわーっと熱くなって、嬉しいのと素晴らしいのと、信じられないような気持ちと、大好きなおじいちゃんの思い出が蘇る感じと、寂しい気持ちも少し。
そのミックスを感動と呼びたい。
遺跡一つ一つよりも、この場所を歩いている自分に感動した。
やっとここに来られたことに、ひどく感動した。





この記事が参加している募集

#旅のフォトアルバム

38,890件

#おじいちゃんおばあちゃんへ

2,696件

サポートしていただければ、世界多分一周の旅でいつもよりもちょっといいものを食べるのに使わせていただきます。そしてその日のことをここで綴って、世界のどこかからみなさんに向けて、少しの笑いを提供する予定です。