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【東大理転激闘記2】内定者ガイダンス編

小学四年生で法学部に憧れるほど文系として生きてきた人間が
東大に入って理転した話の続き。
「東大理転激闘記」と題して連載している中の第3話。

0. ここまでのおさらい

 これまでの2つの記事では理転を決めるまでの話と、夏休みにしていた準備の話をした。上のマガジンにまとまっているのでぜひ読んで欲しい。

 ただあなたも、私の記事を2つも読むほど暇ではないかもしれないから、簡単にまとめると

・東大に文科二類(主に経済学部へ進学)で入学
・2年夏の進振りで、工学部電子情報工学科に勢いで理転
・夏休みは高校物理をかじる
・いよいよ新学期が始まろうとしている

という感じだ。

 前略される感じ、受験の小説の最初にあるリード文だな。つまり、ここには筆者が読み進めるにあたって大事だと思うことが書かれているのだぞ。


1. 内定者学部ガイダンス

 電子情報工学科は電気電子工学科とまとめて電気系のくくりとなり、「EEIC」と呼ばれていることは前にも書いたが、2年生の授業は全部一緒だし、システムも大体同じなのでガイダンスは電気系全体で行われる。

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 9月24日、木曜日。開始は朝10時。夏休みで鈍った体にも優しい時間設計だ。
 まず初めに学科長からの挨拶があったみたいだが、校長先生の挨拶みたいなもので内容は当然よく覚えていない。(ごめんなさい)

 続いて学習グループなるものについての説明があった。これはオンライン授業がメインになることに伴い、今年度から始まったシステムだ。学生10人程度からなるグループに対し先輩のチューターがついてくれて、週一程度のオンラインミーティングを開催していくというものである。

 さすがEEICだな、と思った。

 文系向けのサポートシステムがしっかりしているのは知っていたが、そこにも現れているように、「受け入れた以上、全力でサポートする」というマインドが先生の間で共有されている。これは授業開始後も、さまざまな場面で感じてきたことだ。

 その後に待っていたのがカリキュラム説明である。このカリキュラム説明、「数学演習」と「カリキュラム全体」の二部構成である。 

 おかしい。違和感を感じざるを得ない。どれくらいかと言えば、違和感を「感じる」と書いてしまうくらいである。
 なぜ、全体の中の一科目にすぎない「数学演習」だけ別で章立てされているのだ…?全体の方では卒業までの単位数とかの話をするのに、それと同列とはあまりに恐ろしい…。

 この時、私は例の「EEICからのメール」を思い出した。(詳しくは前回の記事「【東大理転激闘記1】夏休み編」を参照)
 そういえばこんなことが書いてあったのだ。

文科系科類から電子情報・電気電子へ進学した先輩が努力を要してきた必修講義としては,2年Aセメスターの「電気磁気学」と「電気電子数学演習」があります.教科書を以下にご紹介しますので,もし生協などで見つけられたら,手に取ってみてください.

 ああ…。「電気電子数学演習」、先輩方が苦しんできたのか。おそらく先生も頑張ってポジティブに言おうとして、辿り着いた表現が「努力を要してきた」なんだろうなという感じが伝わってきた。だから、多分「死ぬほどの努力をしないと単位は取れない」ということなのだろう。

 そして、実は私は偉いので、先生の仰せの通りに教科書を手に入れていた。用事があって駒場に行った時に購入していた。

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 この3冊(ベクトル解析、常微分方程式、複素関数)を2コマ×1セメスターでやるのだが、授業方法についてこのように説明された。

・指定された教科書の問題と追加問題、計10問以上が一回の授業の対象
・それらの問題を予習として解いてくること
・授業では問題ごとに希望者でじゃんけんをして、勝った人が発表できる
・演習範囲の内容は教科書を用いて各自自習すること

 色々とツッコミどころはあるが、とりあえず無理なことはわかった。だいたい微積分も線形代数もちゃんとやっていない自分に、その合いの子のベクトル解析などわかるはずもない。しかも「演習」だから内容の解説はなく、自力で解いてこいというのである。

 ああ、崖から落とされたライオンの子供はこういう気持ちなんだな。


2. わっくわくの時間割

 そんなことを思っていると、カリキュラム全体の説明へと移っていた。
 ここでは履修についての説明があった。どの授業を取って、合計何単位取れると卒業できるか、というお話。とっても大事だから一回数学演習のことは忘れて、ちゃんと聞いた。

 必修と、「限定選択」という準必修みたいなやつがあって、それらを取った上で、卒業までに95単位取らないといけないと告げられた。これは経済学部や法学部など、文系の学部と比較すると10単位近く多いのである。
 これは周りに文系の人間が多い私しか知ることのない、悲しい事実だ。

 そして目安として、17コマは取っておけよ、みたいなことも言われた。いや、これもおかしい。前期教養学部で最大取れるコマ数は15コマだし、法学部も15コマ以上取れない仕組みになっていると聞いた。それなのに最低17コマは取らないといけないとか言われるし、学科の標準時間割は21コマ埋まっているのである。控えめに言って、正気の沙汰ではない

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電気系HPに掲載されているもの。数理手法Ⅴは今年度不開講だったので、例年は22コマあることになる)

 工学部はだいたいどこも20コマ近くあるらしく、これはやはり専門課程を2年半で終わらせるという、土台となる基礎理論から始まり社会実装という応用の部分まで学ばないといけない工学部にとって、厳しいカリキュラムとなっている東京大学のシステムのせいであろう。

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 これは1年のAセメスターの時間割であるが、例の一次独立もやらない「数学Ⅱ」と、進振り時の点が有利になる履修点を稼ぐためにとった「情報システム工学概論」くらいしか関連する授業がない。情報システム工学概論もオムニバス形式で研究の紹介だったりして、面白かったけど結局今学期の授業の役には立ってない。
 基礎統計も関係あるだろって?うん、それは撤退したんだよ、坊や。詳しくは前回のnoteの最後のおまけを見てくれよな。

 とにかく、そんな21コマもある時間割をこなしていくことになると知ってはいたものの、実際にそうだぞと言われるとものすごいプレッシャーだし、単純に嫌である。人間限界というものがあるだろ、と素直に思う。

2.5 研究室配属

 しかも、このカリキュラム全体の説明の時に研究室配属の話もされた。3年生の終わりに卒業研究の研究室配属があるのだが、これも進振り同様基本的に点数で決まる

 難関の東大に合格してきた人たちの中で点数を争う進振りも大変なのに、ましてそれを勝ち残った、いわば理系のエリートの集まる電気系の中で、文系出身の私が希望の研究室を点数で勝ち取るのはあまりにも厳しいものがある。しかし、ルールだから従うしかない。

 結局、永遠に点数で評価されるのだなと思った。大学入試、進振り、研究室配属。先を見ても大学院入試、就活時の基礎学力テスト、大学の成績、入社後の人事評価。
 嬉しくはないが、だからと言って悲しくもない。ただ、点数のことを気にして生きないといけないのは息苦しいなとは正直思う。

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 その後は3年生の後半で分かれる各履修コースの説明があった。この履修コースは各自の興味に従って自由に選べて、コースによって準必修の扱いとなる科目が異なる。A1, A2, AS/BS, B1, B2の5コースがあり、電情の人間なのでA1, A2, ASの中から選べるらしいことがわかった。


3. 昼休み

 10時から始まったガイダンスは12:20となり、昼休みを迎えた。この後13時からは、先輩方が企画してくださった役職ガイダンスと懇親会のようなものがある。

 しかし、私に休みなどなかった。12:20から「文系ガイダンス」なるものが始まってしまったからだ。この見出しをみて、美味しそうなお昼ご飯の紹介があると期待してしまった読者の皆様には申し訳ない。お詫びとして、この間作った美味しい麻婆豆腐の写真をあげておく。

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 幸い実家暮らしの私は母親に用意してもらった昼ごはんを食べながら参加したが、一人暮らしの民はガイダンス中にレンチンなどで用意したご飯を食べていたのだろう。

 文系出身者は文Iから1名、文Ⅲから3名で、文IIからは私一人だったので合計5人ということになる。5人に対し、文系サポート担当の先生が3名ついてくださっているのでかなり手厚いサポートと言える。

 自己紹介を一通りした後、例の「EEICからのメール」に書かれていたような内容を伝えられ、1ヶ月後にまたミーティングをしましょう的なことを伝えられた。文系向けの放課後教室的ななんでも質問できる会を、先輩のTAをつけて毎週開催していた年もあるらしく、その実施の有無などを次回決めようということになった。多少の希望を感じた。

 とりあえず頑張れよ的な感じでこの会は終わり、続いて午後のガイダンスになる。休む暇などない。


4. 130人自己紹介リレー

 午後のガイダンスの最初は2年生の自己紹介である。各自が名前と出身科類と趣味など一言いうだけなので、一人20秒ほどで終わる爆速の自己紹介リレーなのだが、EEIC全体で130人以上いるので、つなぎの時間も考えると1時間近くかかるのである。普通に長い。

 そして何を隠そう、誰も覚えられないのである。

 私は人の名前を比較的覚えられる方であると自負しているが、なんせ20秒だし名前だけだし顔もよくわからないし、130人もいるので覚えられるはずがない。

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 そういえば例の1Aの時間割にあった「認知脳科学」という授業でチンパンジーは一度に提示された数字を処理する能力が人間よりも高く、賢いと習った。しかし、そのチンパンジーが覚えていた数もせいぜい9つであり、それをはるかに超えている。チンパンジーにも無理な量を私が覚えられるはずがない。

 めっちゃカメラ好きなアピールをしていたやつがいたことは、自分もカメラ好きなので印象に残ったが、それ以外の人は友達でない限り覚えていない。ごめんな、みんな。テニサーとバドサーのやつらがなんとなく多いなと感じたくらいだな。

 ちなみにここで高校同期が2人もEEICに来ていたことを知った。テニパから3人とBizjapanから3人来ていたことは知っていたが、高校同期は限られた人たちとしか話していなかったので知らなかった。

 そんなこんなで、とりあえず一周して自己紹介リレーが終わると、役職についての説明と役職決めが行われた。前期課程のクラスでもあったような、シケ長・パ長の類のものである。五月祭の学術企画の担当とか、後はWeb長なんてのもある。

 クラスではパ長をやっていたが、理転して忙しくなるのが目に見えていたので役職は理系のプロたちに任せることにした。みなさま優秀で手を挙げてくれたので、四人もいるパ長をはじめ、全ての役職が無事に決まり、15時からは懇親会が始まった。


5. Gather.town

 15時からは2年生に先輩チューターや教員も参加しての懇親会がGather.townというサービスを利用して行われた。

 このサービス、ポケモン的な感じで自分のキャラクターを動かしていって、自分の周り9マスあたりにいる人たちとだけ会話ができるというもので、さすがEEIC最先端を行くなと感心した。

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 最初はみんな初めてだったので使い方に慣れるまで多少の時間を要したが、だんだん慣れてきて、実際の懇親会のように動き回って別の人と話したり、話の輪を作ったりということもできるようになってきた。

 そんなGather.townでの生存戦略は、初めての人と一対一は厳しいから、テニパの友達K.S.と一緒に近くにいて、そこに来てくれた人と話して友達の輪を広げる、というものである。
 これが功を奏し、うまく友達の友達みたいな感じで知らない人と話せたりした。最も、テニパやBizjapanの人たちが集まりがちでそこまでは広がらなかったのだが。

 懇親会自体17時までの予定だったが、私は16時前に渋々抜けて、カテキョへと向かった。



しかし、この日、実はここで終わらない。

ただ、このnoteもう5000字以上書いてしまっているので、次回作に続く。

更新をお楽しみに。

→更新しました!

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今回のトップの写真は、夏休みに行ったディズニーランドのメリーゴーランドの待列で撮った一枚です。

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