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地方ドラッグストアの戦略を分解してみた(日経MJを読んで想うこと)

 新聞ってのは、ナナメ読みすると分かった気になるんですが、分かったような分からないような気分になるときもあって、そういう時は、読み返してみて、「あ、なるほどそういう文脈だから、ここはこう読むのか」となることが結構あります。え、わたしだけですか?今回は、そういうお話。

北陸食品小売りの戦略(上)ゲンキー 節約志向の新規客、鮮度高め獲得(2023/6/16日経MJ)

 最近また、値上げラッシュの報道が続いてますよね。コアラのお菓子とか。電気代も上がるんですよね。財布のひもは締まる一方です。そんな中、地方のドラッグストアがどんな戦略を描いているのか、今回の記事では、それが描かれています。
 ただ、1回ナナメ読みしただけでは、分かったような分からないような気持ちになりまして、少し分解して読んでみました。そしたら「あ、なるほどね、そういうことなのね」となりました。

基本のき、売上=客数×客単価

 日経MJを読むと、企業がいかに基本に忠実に行動を取るか、よく分かります。今回の記事内容はとどのつまり、売上をどう伸ばすか、それは客数×客単価である、これに尽きます。
 記事にはこうあります。「客数も1人当たり購入額も増えているが、1人当たりの買い上げ点数は落ちている」。これ、漫然とナナメ読みすると、分かったような分からないような、ま、いっか、次行こうという気持ちになります。
 ここで我慢してもう1回ナナメ読みすると...
 ①売上=客数×客単価でしょ?
 ②客数=既存顧客+新規顧客でしょ?
 ③客単価=買い上げ点数×商品単価だね、
 ④記事の「1人当たり購入額」は「客単価」だわね。
 客数×客単価が増えてるから、儲かってるんじゃないの?と誤解しそうになるけど、買い上げ点数が落ちてる...買い上げ点数が落ちてるけど、客単価が増えてる...「商品単価」が高いものを買ってるってこと?そうか、そういうことなの?となります。ちょっと、理解不能で、まあいいや、次行ってみよう!となります。

消費者行動を見ると、あ、そっちか。

 記事にはこうもあります。「例えば2,000円しか使わないと決めて店に入る。今までだと10個買えたけど、9個で2,000円に達する。だから買い上げ点数が下がる」。
 ここでようやく腑に落ちる。あ、商品単価が高いエクセレントなものを買うようになったんじゃなくて、今まで買ってた商品がそもそも値上がりしてるから商品単価が高くなっちゃて、ほしいものを全部買いたいけど買えなくなって、買い上げ点数が減ってるのか。そゆことか。おー、納得納得(ようやくか!)。

ものごとは前向きに捉えよう

 ここまでくれば、この書きぶりが納得できます。「消費者に節約ムードが広がっている。プライベートブランド(PB)や低価格にシフトした商品もある」。ここで後ろ向きにはなりたくないですね。「あ、PBは売れてるんだ」と考えたいものです。実際、この企業さんもそういう戦略を取ることが、後段で分かります。

そういえば客数も増えているんだった。増えているのは...

 冒頭で「客数も1人当たり購入額も増えている」とあって、へぇーと読み飛ばしてましたが、ここで客数の話になります。
 記事によると「スーパーなどでの買い物では節約に限界があり、ゲンキーならどうだろうとのぞきにくる顧客が増えている」「ゲンキーで生鮮品を買うことをためらっていた顧客に商品を手に取ってもらうチャンスだ」
 そう、チャンスだ!どちらかと言えば、新規のお客様じゃないか!一般的に、新規客の獲得は、既存客の離反防止よりも、大きなコストがかかると言われています。待ってたら来てくれるようになったなんて、超理想的!
...とまあ、そういうことです。

チャンスを生かす、”強みの磨き上げ”

 次に出てくるのが同社の強み。「肉の鮮度を高めるためのサプライチェーンの改善に力を入れている。例えば...」。ちょっと長いんで、例えばの後を意訳すると...
 ①ブロック肉を買ってきて切ってトレーに入れてラップして値札づけして
  店頭に並べるまでに3~4日かかってたけど、2日に短縮した。
 ②なんでかって言うと、ブロックのまま売ることにしたから。
 ③そうしたら、賞味期限が延びるから「ブロック肉でも2回に分けて使え
  ばいいや」となる。
 ④商品の回転率も上がるし、(最近値段が上がった)トレーの数も減るか
  らコスト削減になる。
 ⑤消費者も会社も、環境にもいいから、みんなハッピー(三方よし)
 
 ...そうか、と。核家族化・個人化した消費者が使いやすいように、使い切りの小分けにするのが主流だと思ってたけど、資材高・原材料高をカバーするには、こういう考え方もあるんだ、と納得したわけです。 

PBのこと(記事で頭出ししたことはちゃんと拾う)

 これだけで結構、おなか一杯になる記事なんですが、「PBを売り込む好機でもある」、と。ちゃんと拾ってくるなあ。「PBにシフトした商品もある」って、前半に出てきましたわ。
 記事では「PBが来店動機になり、多少立地が悪い場所にも出店できる」ともあります。
...そうか。PBがちゃんと良いものだと認知されれば、多少立地が悪くても(過疎地っぽくても)勝負ができるってことか。これ、いい話だな、メモメモ。 

とはいえPBって。

 PBって、流通経路を中抜きしてるってことだから、ナショナルブランド(NB)と同じものだったら、中身は一緒で価格が安い、そういうことでしょ?消費者にとって、いいことばっかりだよね?
 ...とはいえPBは「PB然とした商品だと、(買うところを)人に見られたくない、となったりする」と。私たち、どうしても、トップバリュやセブンプレミアムのような洗練されたPBをイメージしてしまうけど、それはほんの一握りで。安いとか、ダサいとか、品質が劣るとか、おいしくないとか...PBに対する誤解(とも一概に言えないの?実はそういうのもあるの?)がまだあるんですよね。

結びに。

 記事はこう結びます。「消費者心理を読んだブランドや商品の設計が重要だ」と。あぁ、もうっ!一言で片づけられちゃうとグウの音も出ませんが、消費者心理を読むことも、ブランドにすることも、商品設計も、それぞれがそもそも大変なのに...とモヤモヤした気持ちになります。
 ただ、地方都市で、スーパーがちょっと高いから、ドラッグストアをのぞいてみようかなっていう金銭感覚にシビアな人って...結構絞られますよね。それで、大手企業より小回りも利く中小企業は、消費者心理を読んで、読み間違えたって軌道修正すればいいんだから。まだまだ勝負ができるなって、そう思わせる記事でした。
 ただ、ちょっと今回は分解しすぎて、ちょっと疲れちゃった(おしまい)。

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