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5分でそこそこ把握できる2023年版中小企業白書(前半)

 2023年4月28日、2023年版中小企業白書が閣議決定、公開されました。合計約760ページです。実は、同じボリュームの小規模企業白書も同日、公開されました。
 これを熟読して、最も参考にしていただきたいのは、中小企業の経営者の方々です。ただ、読んでいていつも思うのです、これは一般人には”苦行”でしかない、と...
 今回は、多忙な経営者の方々に、白書のポイントだけでもつかんでいただきたいなと思い、ナナメ読みした感想を記述します。
※中小企業診断士は教科書としてこれを熟読するんですよ、もちろん(汗)

エグゼクティブ・サマリー

 今年度から、概要版にカッコ書きで“エグゼクティブ・サマリー”と付され、従来より格段に分かりやすくなりました。ある程度、概要(エグゼクティブ・サマリー)が掴めるようになっています。このため、アウトライン(輪郭)はエグゼクティブ・サマリーに譲るとして、ナナメ読みして気になった点をいくつか記載いたします。
※どうもカタカナ言葉が好きですよね、日本人は。ちょっと引き締まった印象になるもんな、と私は納得しています。

1.事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック(白書第1部 56ページ

 ポストコロナを見据えて中小企業の新たなチャレンジを支援する「事業再構築補助金」、現在10回目の公募中ですね(2023/5/3現在)。これまで応募のあった約8万件の申請をAIに読み込ませ、有望な事例に共通する特徴をまとめたそうです。それが、事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック。130ページあるので、これはこれでポイントをまとめたいところではあります(笑)
 そうですよ。皆さんと一緒で、ひょっとしたら、ChatGPTに「申請書を書いて欲しい」と言えば、そこそこの申請書ができるのかもしれない、と思いながらこれを書いています。でも、補助金の審査員はAIではなく人間。そこを意識して、企業の真の課題を解決する事業再構築を申請したい、そうも思いました。

2.中小企業・小規模事業者のカーボンニュートラル
白書1部 58ページ

 政府が2050年カーボンニュートラルを宣言して、私たちの脱炭素に関する理解はだいぶ進みましたよね。今年はりんごの花の開花が早くて、関係者はやきもきしています。開花が早ければ、その後、気温が低く霜が降りた場合、受粉しづらい、実になりづらいなど、りんごの生育にいいことはないんです。
 ...脱線しましたね。さて、2020~2022の3年間でカーボンニュートラルの重要性に関する中小企業の理解は進んだものの、自社のCO2排出量を把握している企業(段階2)は約6%のまま、横ばいです(60ページ)。

                           出典:2023年版 中小企業白書 第1章

日本全体のCO2排出量のうち、中小企業が占めるのは20%であり「まずは大企業がちゃんとやれ」という意識があるのかもしれません(72ページ)。
 一方で、設備投資や生産プロセスの改善により、エネルギー使用量が減ることで、エネルギーコストの削減に繋がる、結果して御社の利益にもなる。それが、カーボンニュートラルに取り組む効果でもあります。

3.価格転嫁・賃上げについて(白書1部 75ページ

 全体的なコストは改善傾向にあり、原材料費の価格転嫁は中小企業でも進んでいるとされています。一方で、パワーバランスの関係上、エネルギー価格や労務費の転嫁が進んでいない様子が窺えます(78ページ)。

                       出典:2023年版中小企業白書

白書には「賃上げをするためには、価格転嫁を進めることが重要」と明記されてもいます(88ぺージ)。
 同じく賃上げを進めるためには「生産性の向上」が必要であり、①設備投資によるコストダウン、だけでなく、②社員の多能工化、③離職率の低下(各種制度の整備・浸透)をセットで行っている企業が賃上げを果たしているとのこと。
 これらを同時並行で...と言えば格好いいですが、現実的には、順番に一つずつ、地道にクリアしていくことで、ようやく賃上げに繫がっていく、という意味だと思って読みました。一筋縄ではいかないな、と。

4.若者・女性の東京圏への人口移動(白書第1部 105ページ

 タイトルでわざわざ「女性」と名指ししています。消費の観点からも、企業風土の活性化も、地域活性化も、子育て・人口減も、キーパーソンは女性なんですよね。田舎では①希望する仕事がない、②賃金の待遇が良くない、と言って都会に出ていくそうです。
 一方で、東京は基礎支出が多い(全国No.1)ので、「実感的な可処分所得」が低いそうです。加えて、東京はフルタイム労働者の「可処分時間」も平均を下回っているとのこと。

                             出典:2023年版 中小企業白書

 いったん地元を離れてチャレンジしたいという気持ちは、応援してあげたい(自分もそうだった)ので、引き留めるのは難しいですが、一度離れたからこそ、故郷の大切さ・ありがたさを想うものです。チャンスがあれば帰ってきたいという気持ちも、心のどこかにあるはずで。”東京にはない、豊かなお金の使い方、豊かな時間の流れが、ここにはあるよ”、私たちが強みにできるのは、そういうことなんだろうなって思いながら、白書第1部を閉じました。
                           (後半に続く)

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