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若者の就職観(日経MJを読んで想うこと)

 A社とB社があって、どちらにも内定をもらった。A社は東証プライム上場企業。B社は名前も聞いたことがない中小企業。さあどっち?
...と言われたら、A社一択だと思うんだけど、最近の若者はどうやらそうでもないらしい。今回は、そういうお話。

エン・ジャパン、若手転職サイト登録者1.5倍 企業名より仕事内容、成長探る(2023.6.30 日経MJ)

 エン・ジャパンの若手ハイキャリア向けの転職サイト「AMBI(アンビ)」の登録者数が前年比1.5倍と増え、2日に100万人を突破した。
...どれどれ。試しに登録してみようと思ってアプリをダウンロードしたんです。当然と言えば当然なんですが、「優良企業やヘッドハンターから厳選スカウトが届きます」って、ガチ勢が使うアプリです、これ。20-30代しか登録できなくて、登録者数がうなぎのぼりで100万人を超えたってか。生産年齢人口(15-64歳)のうち、20-30代の人口を見てから言うべきだと思うんだけど(見てない)、結構なボリュームだよねこれ。

「どこに所属するか」よりも「自分に何ができるか」

 アンビさんの利用者アンケートによると、「終身雇用を期待していないが8割を超えた」。その理由として「報酬・待遇に不満が5割、自分の成長が感じられないが3割」
 一般的に、金銭的な報酬は「衛生要因」と呼ばれ、不満を解消してもやる気にはつながらないとされています(ハーズバーグの二要因理論)。そういう意味では、ほんとはアンケートで報酬と待遇を分けないと真の要因は分からないのでは?と思ったりもして。非金銭的な待遇は「動機付け要因」といって、モチベーションアップにつながるっていうから(あれ?報酬が上がれば待遇も上がるってこと?分けられない?現実世界はきれいごとで済まない?)
...ということで記事から真の要因は読み解けませんが、終身雇用を期待してないのは、恐らく、今の会社が不満だから(衛生要因)、というよりも、今の会社に期待してないから(動機付け要因)ってことだろうなと読みました。記事には、「どこに所属するか」よりも「自分に何ができるか」という目線から成長の場を探す傾向が強いとあります。

適度なストレスが人を成長させる

 「自分の成長が感じられない」っていうのは、もう少し分解する必要があると思うんです。1つ目は「せっかくバリバリ仕事がしたいんだけど、会社ってこういうところなの?」というものです。
 行き過ぎた株主偏重主義が株式市場で取沙汰されてますけど、行き過ぎたホワイト企業ってのもあるらしいですな。これ、Mっぽい発言になっちゃいますが、適度なストレスを与えること(チャレンジ・ストレッサーと言います)が、人を成長させるという考え方があります。
 「定時であがっていいよー」「もっと休んでいいんだよー」「そんなに大変な仕事はないよー」「うちはホワイト企業だよー」、で自分の成長が感じられるか!と。24時間、働けますか?はちょっと行きすぎだけど、適度なストレス(これが難しい!)は必要でしょう。

やらされ感をやりがいに

 2つ目は「やりたい仕事ができない」かな。これもちょっと分解できて、「やりたい仕事をやらせてもらえない」という会社への不満もあれば、「やりたい仕事ができる能力が(まだ)ない」という自分への不安もあるでしょう。だから、「自分の成長が感じられない」と、余計に不安が増していくのかなって。
 記事には、アンビの方のコメントとして、こうあります。成長している実感が得られたり、自分の仕事に誇りを持てたりすれば、この国はもっと活気に満ちるはずだ、と。
...ということで、転職しようがしまいが成長が実感できることが大事なわけです。もう少し現場にかみ砕くと、やらされ感がある仕事をやりがいのある仕事に変えていけば、成長している実感が得られて、自分の仕事に誇りを持てたりするわけです(こういう考え方をジョブ・クラフティングといいます)。

素敵な社長、素敵な上司たれ。

 結局、1つ目(甘やかさずに、適度なストレスを与える)も2つ目(やらされ感がある仕事をやりがいのある仕事に組み替える例を見せる)も、ポイントになるのはその若者の近くにいるのが、素敵な社長か、素敵な上司か、というところです。
 これ、自慢話ですが、私は若いころ(…って話すとお前何歳だ?そんなに語れるのか、と我ながら思うが)、「どんな仕事でも信念を持って取り組め」と言われました。根性論ではありますが、結構心に響いてます。会議の資料を机に置く時きれいに並べたり、電話を取り次いでくれた方に「ありがとうございます」と言ったりとか、まあ、そんなところに刺さってる言葉です。言ってくれた人の、仕事ぶりもよかったんだと思います。
 そういう素敵な社長、素敵な上司に、今の自分はなれているんだろうかって、いつも自問自答です。あなたはどうですか?(とも聞きたくなる(笑))

譲れない一線を持つこと

 「結局、社長や上司が大事ってことかい。当人に問題はないのかい」っていう視点で考えると、キャリア・アンカーって考え方も大事だなって、記事を読んでいて思いました。自分のキャリアにアンカー(船のいかり)、譲れない一線を持つことです。WILL(どうなりたいか)、CAN(なにができるか)、MUST(人生でなにを成し遂げたいか)の3つで、自分のキャリアを考える、というものです。
 これって、学校でやってきてると思うんですけどね。「将来の夢は?」とかって。ただ、もしかして「夢を考えてこい」とだけ言って、WILL、CAN、MUSTを見つめてないとしたら、会社に入ってブレちゃう原因にもなるのかな(自分だって偉そうなこと言えないだろ、と思わず突っ込む)。今からでも遅くないです。キャリア・アンカーの考え方で、自分を見つめ直して、譲れない一線を持つことができれば、今の仕事を続けようが転職しようが独立しようが、あなたの軸はブレないはずだから。

会社としては、経営戦略と人材戦略は表裏一体

 記事では、アンビさんがやることとして「求人掲載に伴って企業の人材戦略構築を支援する取り組みをさらに進めていく方針だ」「必要な人物像の設定から採用戦略、受け入れるための体制作りまでノウハウを生かして積極的に助言などをしていく」とあります。
 やばい、競合するぜ...ただ、私としてはこの時、中小企業庁が発表した人材活用ガイドラインの考え方に沿って、経営戦略と人材戦略をセットで考えたいなって思います。
そうすれば「この国はもっと活気に満ちるはずだ!」そんなことを考えた、今日の記事でした(おしまい)。


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