Norichika Horie

堀江宗正:大学教員、宗教学者、スピリチュアリティ研究、死生学 著書『ポップ・スピリチュ…

Norichika Horie

堀江宗正:大学教員、宗教学者、スピリチュアリティ研究、死生学 著書『ポップ・スピリチュアリティ メディア化された宗教性』『スピリチュアリティのゆくえ(若者の気分)』『歴史のなかの宗教心理学』

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  • 日々の息継ぎ(詩集)

    眠りにつくための、毎日の詩作

  • ポッドキャスト「ノアエイジ NOrAGE」

最近の記事

kiseki

kisekiを拾う それを拾ったらもう kisekiではなくなる 1キロばかり歩き続けると またkisekiを拾う ほらもうkisekiではなくなった ところが、その二つのkisekiは ぴたりと重なり合った それはkisekiだった 二つのkisekiはなぜ 離れた場所にいたのだろう 元は一つだったのだろうか 同じkisekiをたどって 地面にたたきつけられて バラバラに飛び散った 私がそれを拾うことで 二つのkisekiは 一つになった いや、そうではない 二

    • つづく

      また一人 トリックスターが退場した その後も劇はつづく 世界は平和になり 人々は退屈になる 右下につづくという文字 何がつづくのか 新しいスペクタクルか 退屈はかまわない 危機を煽る偽予言者も 本当は退屈が好きなんだ では摩耗した死をどうぞ それがつづくという現実 パンデミックには飽きた もうニュースにはならない 私たちはそれを受け入れた 回避しようとすればするほど 死を先延ばしにするだけ 延命だけはやめてほしい モニターの右下に マジックで書き込まれた おわり 昨日夢

      • 不可視の光

        光を失う 光の中で 僕は走っている 空を仰いで もうすぐ夕日は沈むから ふいに見知らぬ人の肩に さえぎられ 光は影を映し出した その真っ黒な影の中心に 僕は飛び込んでゆく それもまた光 不可視の光 でっかい山だな 僕はそこに到達できない もうすぐ爆発するだろうから その滅びの瞬間 光を吸い込んできた山は 不可視の閃光を解き放つ 巻き添えにはなりたくないが 関わらずにはいられないだろう 僕は祈る すべて光で満たされますように 光は見えていないだけ 気づかれていないだけで

        • 信じることは愚かだなどと

          Xの頭も信心から などという人は Xの頭を馬鹿にするな Xにだって 感情もあれば 生きたいという思いもあれば 痛いという感覚もある 捕まえられて食べられて おいしかったと思うなら Xにも感謝せよ Xの頭にも いや、そういうことじゃないって? Xの頭を手に入れるために 何十万もの献金を積んだり それを拝むために 一日に何時間も費やしたり Xの頭を売るために 学校に行かせてもらえなかったり そのような信心は愚かだと それは信心が悪いのではない 信じ方が悪いのだ そう信じ込ま

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        • 日々の息継ぎ(詩集)
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          25本

        記事

          愛憎の彼岸

          ここは川じゃなくて 海じゃなくて 島々じゃなくて 無数の島々が互いに離れていても 互いを憎しみあっているわけでもなく むしろ惹かれ合っているが 距離をとっている そんな愛憎の彼岸が あの地平線の彼方にあることを 信じて 船をこぎ出す しかしその途中にも 過去の激戦地が 死者の骸は表に見えないだけ そんなことに比べたら僕らの諍いごとなんて あまりにも小さくて たまたま表に見えているから 大きく見えるだけ 針小棒大のジェンダー間闘争 普通に何かを声に出しても 左か右かに分

          気づかいのアーケード

          自転車で旅に出ようとしたら 晴れていたのに雨に降られ 駅前のアーケードで雨宿りしつつ スマホを取り出して 天気をチェックしようと思ったら 小学生にも満たない幼い子どもたち三人が 釣り竿を持って困ったような顔をしているので どこに行くのと尋ねると 僕たち釣りに行こうとしているのと言われ こんな小さな子どもだけで 川に行くのは危ないと思い 暇だし旅の始めに人助けでもと思ったら 道端にひっくり返っている蝉がいて 何となく助けようとしたら すでに死んでいて その一部を熱心に巣に運

          気づかいのアーケード

          願望への願望

          私の願いを叶えてください という感じの いい感じの願いを与えてください ないんです 無欲なんです 願望を願望します 別に恵まれているわけではありません 願望する自分が嫌なんです 嫌というのはちょっと違うな 願望したくないということになってしまうから 願望はしたいんです 周りからのプレッシャーがうざいんです そろそろ願望しなよって 自分でも願望しなきゃって思うんですけど そう言われたからって願望するのは ちょっと違うと思うんです あなたはどうして願望したくなったんですか

          願望への願望

          ただの妄想

          僕は恥ずかしいと思っていた 分かるだろ 君とのことだ 僕にすり寄ってきて そして振りほどいた あまりにも傷つけられたから 忘れられない ああ、でも、突然分かったんだ 僕はあらゆる力を振り絞って 君を殺そうとしていたんだ ああ、もう、絶対に君を愛したりなんかしない だって君は一人で立とうとしているのだから でも僕は知っている それは君の夢、ただの妄想 君が僕を愛した事実を 隠そうとしているだけ 今までこんな風に誰かを愛したことがない って言ったね 笑わせるなよ 嘘をつくな

          ご安全に

          昨日の君は安全を求めていたのに 今日の君は危険を求めている いや安全のために危険を冒しているんだね キャンディをどうぞ スマホに写った旅の風景 君は川遊びを楽しみ 帰宅すると安全を噛みしめる キャンディは噛まないで 熊の動画を眺めている 今回の旅でも熊には会えなかった 彼らは臆病だから レモン・コーティングされた苺キャンディは無敵 Have a safe trip! 日本人はこんなこと言わないよな 工場で「ご安全に」とは言う キャンディを舐めんなよ お土産を買った あ

          願ってもないこと

          それで君はどう答えたんだい?  「いや、もう願ってもないことです」と答えました ところが、相手の顔が曇ったと  そうなんです どうしてだと思いますか  もしかして言葉の使い方を間違えたかなと どんな風に?  「そんなことは願っていない」と聞こえたのかも 言葉の使い方は間違っていませんよ  そうですよね 君はいま相手のことを責めていますね?  え? いや、そんなことは 君が言いたかったのは「望外の喜びです」ということですね  そうです、そう言えば良かったな でも、「願ってもない

          願ってもないこと

          見えないドア

          光をともし 手探れば いつしか着くや 見えないドア 隠者となりて 山ゆけば 道を外れて 真っ逆さま 計画なきまま 追随し 末尾につけば 神隠し 身体をいじめる 労働も 芸術家として 全うす 見えないドアへ 導かれ 扉を閉めれば 戻れまい 見えないドアよ 導き給え 俺をここから 救い給え

          見えないドア

          日本人の宗教は神道?仏教?

          ここ数年、外国人から「日本のメインの宗教は神道でしょう?」と聞かれることが多くなりました。今日はTwitterアンケートをもとにクイズ形式でお話ししていきたいと思います。

          日本人の宗教は神道?仏教?

          日本人の宗教は神道?仏教?

          素材素行判定票

          兄は素行が良いが素材が悪い 姉は素材が良いが素行が悪い 弟は素行も良く素材も良い 妹は素材も悪く素行も悪い そう書き出した母は 「どうせ私が悪いのよ」と言う 父は「こんなものを親や教師に判定させる社会のせいさ」と言う 「あなたは気楽なものね 子どもの悪いところは全部 母親のせいにされるんだから」 だが結局、母が一番大事にしていたのは末娘だった 「素材も悪く素行も悪い」と書き出された妹だ 母もかつてそのように判定されたようだ 自分と似ていると思ったのだろう 母がいつも口論

          素材素行判定票

          偶然と必然

          私と彼との出会いは偶然なのか それとも必然なのか サイコロの目が6と出たのは 偶然なのか必然なのか どうも偶然とは事後的に 必然となるようだ 電車の中でこんな若者を見かけた それも偶然に 年季の入った和服 膝の上はすれて、あせている 足元は足袋に下駄 髪型はちょんまげに結っている もともと生え際の両脇がM字気味で まるで侍のような髪型だ 彼は黒いケースを左手に抱えている 木刀がケースの外側に 上と下はケースにはまり込んで ケースの中からも上に一本のぞいている この狭い車

          言葉をかけて

          さあ、言葉をかけて 困っているあの子に ああ… 機を逸したね もし、あのとき 言葉をかけていれば 世界はまるで 違っていたのに そんな咄嗟の反射神経 人はどう養うのだろう いつでも後から分かるのさ イメトレの中で救い続ける そして、こんな時はこんな言葉を かけるのさと悟ったら ああ… 陳腐な言葉しかかけられなくなるのさ 退屈な葬式の後に 坊さんのしけたふりかけのような 言葉かけ ごちそうさま 言葉かけはね マニュアルじゃないのさ 天使に背中を押されることなのさ はじ

          言葉をかけて

          残響と残像への愛

          現にそこにあるものと 失われたものとでは どちらが愛しく 思えるのだろうか 往年の名歌手なら 今のライブで聴くしわがれた声と 過去の録音で聴く若い頃の美声とでは どちらを愛でるべきなのか いや今そこにいる人の 愛しい声や容姿にも わずかながらの時間差と距離があり それが愛を生み出しているのではないか 私は残響と 残像を愛す いずれ会える人より もう会えない人を愛す それゆえ私は 自分が愛されることも 期待しない 現時点では 私は残響と 残像を託す 常にそのことを考え

          残響と残像への愛