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Photo by
yamong
気づかいのアーケード
自転車で旅に出ようとしたら
晴れていたのに雨に降られ
駅前のアーケードで雨宿りしつつ
スマホを取り出して
天気をチェックしようと思ったら
小学生にも満たない幼い子どもたち三人が
釣り竿を持って困ったような顔をしているので
どこに行くのと尋ねると
僕たち釣りに行こうとしているのと言われ
こんな小さな子どもだけで
川に行くのは危ないと思い
暇だし旅の始めに人助けでもと思ったら
道端にひっくり返っている蝉がいて
何となく助けようとしたら
すでに死んでいて
その一部を熱心に巣に運ぼうとしている蟻がいて
それも手伝おうかと思ったら
雨が晴れてきて
子どもたちを見るとお父さんが登場したので
何だ子どもだけじゃなかったのかと
自分は再び自転車で
遠い山の彼方に向かおうとしたら
知り合いが車で来て
自転車なら俺の店に置いて
一緒に車でその山の向こうまで行こうというので
そこで降ろされたら歩きになるし
その後もずっとその知り合いを
道連れにするわけにも行かないので
迷惑をかけてしまうからといって
笑顔で手を振って
やっと僕は旅に出ることができたが
これからもこんな調子なのかと思った途端
自分は一人でいるのが決して好きなわけでなく
思いもかけず誰かと出会い
互いを気づかうその瞬間が好きなのだと
悟ってすってんころり怪我をして
家族に迎えに来てもらって入院して
旅は延期中なのだが
机の上の置き手紙を
家族は読んでないふりの
気づかいの時間が
継続中
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