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サンクコスト(埋没費用)の扱い方

数兆円の赤字の果てに消えていったコンコルド

1962年、超音速旅客機コンコルドは、
世界初の超音速旅客機として約4,000億円をかけて開発が進められました。

開発の途中でこのプロジェクトは大赤字になることがわかりました。

でもそれまでの投資を無駄にしたくない思いから
結果的に開発は進められ、
最終的に数兆円の赤字になりました。

今はなきコンコルドの悲しい歴史です。

このことから、
サンクコスト(埋没費用)にとらわれて
非合理な選択を行うことを指して
サンクコスト効果=コンコルド効果(コンコルドの誤謬ごびゅう)
と呼ばれるようになりました。

サンクコストとは

サンクコスト(埋没費用)とは、
すでに支出され、
どのような意思決定をしても回収できない費用のことを言います。

例えば、1億円の資金を使って
何か新しい事業を進めたけれど
事業は赤字で、
今後も黒字の見込みが立ちません。

このとき
支出した1億円がサンクコストです。

サンクコストの「サンク」は、
サンキュー(Thank you)の「thank」ではなく、
沈んでしまった、という意味の英単語「sunk」です。

米国の軍事作戦がベトナムやイラクやアフガニスタンで長引いた原因には
やはりこうしたサンクコストへの囚われがあったと考えられます。

「これだけ費用をかけたのだから、今さら後にはひけない」

人は意地になってプロジェクトを継続してしまいがちです。

サンクコスト効果とは
このように
過去に投資したものの回収不可能であり
さらに投資を続けることは
損失につながるにもかかわらず、
何かを行ったり、継続しようとする
心理効果を言います。

身近な話をするなら
誰にも心当たりのありそうなのが
服の整理です。

ぼくは長いあいだに10着以上のスーツやジャケットを持っていましたが
ここ数年
どれもほとんど着ていませんでした。

「いつか着るかも」として取っていましたが
クローゼットがあふれて他の服を入れる余地がないし
引っ越しの時にはこのために箱をいくつも追加したりと
まったくのむだでした。

こんどのコロナ禍を機に
いっそのこと整理しようかとも考えましたが
それぞれの買った時の値段を思い出して
どれも捨てられませんでした。

合理的な判断であれば、
何年間も着ていないんですから
捨てるという判断が正しいわけですが
合わせて数十万円というサンクコストを考えてしまいました。

もしかしたら
もしかしたら
いつかまた着る機会があるかもしれないじゃないですか。

これがサンクコスト効果です。

スーツとジャケットの場合は
奥さんが軽々と
なんのためらいもなく片っぱしから処分してくれたので
わが家のサンクコストは消えましたが
それをとなりで見ていたぼくの気持ちは
かなりつらいものがありました。

このサンクコスト効果の落とし穴にはまって
身動きが取れなくなる社長やリーダーは
とても多いです。

ぼくの知り合いの社長さんから
あるプロジェクトがあって
ぼくの説明でサンクコストと分かったけれど
これまでの経緯と関係者への顔向けから
どうしても割り切って止められない、
という悩みを聞いたことがあります。

管理会計からの答え

サンクコストの扱いについては
管理会計の世界ではすでに答えが出ています。

・過去に埋没した回収不能なコストは、次の行動を決断する際に重視してはならない
・埋没費用に囚われると、非合理な選択を行いがちである
・サンクコストに囚われないことで、冷静で客観的な判断を下せる

払ってしまったお金のことは忘れて
今この時点でゼロベースで
一番幸せになれる道を選択すべしということです。

管理会計では
サンクコストに囚われないことは
オポチュニティコスト(機会費用)を手に入れるチャンスだと
考えるわけです。

ただし、
管理会計は
人間社会のしがらみやメンツ、
社内政治の複雑さを
まったく考慮しません。
当たり前ですけど。

仮にそのプロジェクトを推進したのが
政治界産業界軍隊の大物であったら
そのプロジェクトを途中で打ち切るという決定は
至難の業(わざ)でしょう。

新国立競技場は取り壊すか維持するか

オリンピックとパラリンピックが終了した新国立競技場ですが
この先の使い道が見えず
毎年、高額な維持費がかかるそうです。

無理して活用して赤字をふくらますよりも
今の時点で思い切って取り壊してしまうほうがよくはないか。

そんな議論があるそうです。

多額の税金を投入しているので
経済合理性のほかに
さまざまな角度から検討しなくてはなりませんが

何より
利害関係者が複雑すぎて
交通整理もままならないようです。

これが管理会計上だけの判断なら
答えは一つですが。

新国立競技場は
いったい
どうなるんでしょうか。

プロフェッショナル社長はころんでもただでは起きない

ビジネスの世界は
こうしたものに比べると
とてもシンプルです。

経営者は
サンクコストから自由になると決めたら
自分一人の決意で
それを実行できます。

これまでの投資額がどんなに大きくても
経緯やしがらみがどんなに複雑で事情があっても
しょせん
自分の会社のことですから
社長がやると決めたら
サンクコストを切り捨てられないことはありません。

それだけでも十分プロフェッショナル社長ですが
ほんもののプロフェッショナル社長は
ころんでもただでは起きません。

埋没費用の回収はあきらめても
問題の検証と反省を徹底的に行って
それを見える形、使える形に残して
組織力強化に使います。
そうすることで
長期的にその損失を取り戻していきます。

がんばってください。
応援しています。

※画像は「2003年10月24日、JFK国際空港からラスト・フライトに飛び立つブリティッシュ・エアウェイズのコンドルド。AP」を使用させてもらいました。


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