年々高級感を増すキングオブコント。その開催時期はお笑い好きにとってはちょうどいい

 近年増え続けるマイナーな大会を含め、現在数多く行われているお笑い賞レース。その中でも大会の価値や歴史、格式や権威などを踏まえたメジャーなものとして挙げられるのは以下の4つだろう。

 M-1グランプリ、R-1グランプリ、キングオブコント、THE W。

 テレビでの放送や優勝賞金額、大会で活躍した芸人のその後の飛躍などを踏まえると、この4つがいわゆる4大賞レースになる。ちなみにTHE Wが創設される前は3大賞レースだった。そして今年はまた新たな大会「THE SECOND 〜漫才トーナメント〜」が創設され、5月にその記念すべき第1回大会が行われたことは記憶に新しい。栄えある初代優勝者となったギャロップが今後どれほど飛躍するかはわからないが、大会の規模を考えると、来年以降は上記のメジャー賞レースのひとつに加えられても不思議ではない。現在はまさに5大賞レースの時代に突入しつつあると言えるだろう。

 多い。賞レース過多とはこちらの率直な感想になる。M-1、R-1、キングオブコントの3つで十分だとは筆者の見解になるが、とはいえ、予想以上に面白かったあのTHE SECONDを見せられると、賞レース過多の現状を否定する気持ちは多少なりとも薄らぐのもまた確かだ。THE Wもしかり。始まった当初は正直言って鑑賞に耐えられないレベルだったが、それでも回を重ねるごとに徐々にではあるが確実に大会のレベルは上がっている。質の高い正統派のネタを見せた天才ピアニストが優勝したことがその証だと僕は思う。

 とはいえ、だ。やはり(賞レースの)数が多いというその印象を拭うことは難しい。昨年のTHE Wの決勝が行われたのが12月10日で、その僅か8日後の12月18日にはM-1の決勝も行われている。これはTHE Wが創設されて以降常に付きまとう問題だが、どうにかその開催時期がM-1と被らないようにできないものか。ここ数年はTHE Wを噛み締める暇もなく、すぐさまM-1が始まってしまう。まさにそんな感じだ。これははたしてTHE Wにとっていいことなのか。ろくに大会を振り返る余裕もないまま、お笑いファンの目の前にすぐまた次の料理(M-1)が出されるというのが最近の現状だ。

 M-1を豪華なご馳走だとすれば、M-1の3ヶ月後に行われるR-1は言わば軽食だ。その注目度や大会の規模でM-1に劣ることは明らか。そして何よりR-1という大会そのものが、自らがご馳走ではないことをすでにある程度認識している。近年では特にそうしたムードを感じる。M-1から3ヶ月後というインターバルは、軽食としてはちょうどいい。豪華なのか質素なのかがまだ判然としていないTHE Wより、賞レースとしての自らの「色」を発信することはできている。

 今年第1回目が行われたTHE SECONDが来年以降どれだけ続くのかはわからないが、今後の繁栄のポイントを挙げるとするならば、いかに自らの「色」を確立するかだと思う。豪華路線で行くのか、質素路線で行くのか。大会アンバサダーとして松本人志さんを加えるなど、パッと見豪華な大会ではあるが、基本的には真のナンバーワンを決める大会ではない。大会名の通り、コンセプトとしては、これまで燻ってきた漫才師たちに「セカンド」チャンスを与えるための大会。M-1優勝者に出場資格が与えられない時点で、真のチャンピオンシップを決める大会とは呼べない。いってみれば間食という感じの大会だろう。

 そんなTHE SECONDから、いまちょうど4ヶ月が経過した。ギャロップ、マシンガンズ、囲碁将棋など、大会で結果を残したベテランコンビの露出がそれなりに目につくようになったが、お笑いファン的にはそろそろお腹が空いてきたと言うのが正直なところだ。そしてこのタイミングで行われるのが、コント日本一決定戦キングオブコント2023になる。4ヶ月前に食べた間食が消化され、次はガッツリとした料理か食べたくなった頃。キングオブコントは実はお笑い好きにとっては意外と悪くないタイミングで行われる大会だとは、賞レース過多となった最近思うことだ。

 キングオブコントの決勝が行われるのは10月。M-1の決勝が12月に行われるので、その間隔は約2ヶ月程度になる。キングオブコントで活躍したファイナリストたちが各番組に呼ばれ始めるのと時を同じくして、M-1も徐々に佳境を迎えるわけだ。これまでキングオブコントのファイナリストがM-1のファイナリストよりもあまり活躍が目立たなかった理由のひとつに、この開催時期の近さは確かに絡んでいる。だが、それはあくまでも出演者に関する話。大会を視聴するひとりのお笑いファンとしては、毎年ちょうど賞レースに飢えてきた頃合いに行われるキングオブコントは、その鑑賞へのモチベーションという視点から見れば、非常に優れた大会に見えてくる。

 キングオブコントには芸歴の制限がない。というわけで、M-1よりもある意味そのチャンピオンシップ度は高い。審査員を大幅に変更した2021年からは、戦いのレベルがまた一段と上がっているようにも見える。2020年からは「お笑いの日」という8時間を超える生放送番組の最後のプログラムとして行われるなど、その特別感、高級感も年々増している。かつて漂っていたマイナーな匂いはもはや完全に消え去った状態にある。

 昨年(2022年)、一昨年(2021年)と、過去の大会を超えるようなハイレベルな戦いが続くキングオブコント。今大会の予選に詳しく目を通しているわけではないが、準決勝進出者の名前を見る限り今年も間違いなく面白い。思わずそう断言したくなる顔ぶれである。9月20、21日に行われる準決勝、後に有料配信されるその模様を昨年同様今回も筆者は視聴する予定である。数日後にはおそらく大会の日程や今回の審査員などを含めた詳しい情報が発信されると思うが、準決勝の戦いを含め、楽しみに待ちたい。

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