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地方にこそ、"スタートアップの聖地"と呼ばれるビルがほしい。

はじめに

株式会社POLAR SHORTCUT(ポーラー・ショートカット)の大久保です。普段は札幌で、スタートアップ投資(シードVC)を行っています。

先日札幌で開催した「スタートアップ・ベンチャー交流会」で、とある起業家とした話がそうだよな〜と感じまして、せっかくなのでnoteにまとめてみました。スタートアップビル、つくりたいですね。
後半には、最近の北海道のスタートアップがどんな感じかも近況的に触れています。では!

コワーキングスペース、じゃないんだよね。

「大久保さん、エクイティで資金調達したスタートアップだけを集めたシェアオフィスみたいなの、札幌にもほしいですよね。」
先日の交流会で、少し前に東京のベンチャーキャピタルからシードラウンドでの資金調達をした、札幌在住の起業家から言われました。

「札幌にもDRIVEとかEZOHUBとかコワーキング的なものはいくつかあるけど、もっと同じ悩みとか熱量を共有できる場所がほしいんですよね。コワーキングスペースだと、ヒントが欲しくて近くの人に話かけても、フリーランスの人とは悩みの範囲が全然違うし。」

札幌で、いや、地方でスタートした起業家ならではの悩みだよな〜と感じました。
私はもともとスタートアップのキャリアを東京からスタートさせていて、前職に投資してくれていたVC繋がりの経営者だったりとか、人事・広報とかバックオフィス関係の繋がりとかが今も活きていて、どういう人をtwitterを追っていれば情報が入ってくるかわかるし、必要があればメッセンジャーで声掛けして30分なり1時間なり相談にのってもらうこともできる。だからこそ、地方に住んでいても何も不利は感じないのだけど。

スタートアップを経営するうえでのオペレーション面での細かい悩みとか、それを解決するノウハウって、今の時代においても結局口伝なんですよね。
だからこそ、仕事そのものはフルリモートでできてしまう時代でも、同じラウンドのスタートアップ経営者が同じ場所で物理的に働くことっていうのは、とても意味があると思います。

渋谷にあるスタートアップの聖地、第一暁ビル

その一言に共感できたのは、私自身が、渋谷にある「スタートアップの聖地と言われるビル(第一暁ビル)」で働いたことがあるからです。

ちょっと前の記事ですが…

1階にはファミマが入っていて、2階からがオフィススペースとなっている渋谷・道玄坂にある第一暁ビル。
当時、2階には宇宙ベンチャーのインフォステラ、4階にはQiitaを運営しているIncrements(現:Qiita株式会社)、5階には動画学習のスクー、6階はnoteやcakesを運営するピースオブケイク(現:note株式会社)、7階が私の前職である動画制作のCrevo(VideoWorksの運営会社)、9階に無料ホームページ作成サービスのペライチなんかが入居していました。このラインナップ、いまみてもすごい、、、!

ちなみに、過去には女性メディア「MERY」の運営会社(ペロリ)や、セキュリティソフトのキングソフト、LINEの前身であるNHN Japanが入っていたこともあるらしい、まさにスタートアップの聖地でした。
これらの会社間では、経営陣やエンジニア同士の交流もあり、私もスクーの人事責任者とよくランチ行ったりしていました。

ちなみに、なんでそんなに注目のスタートアップが入っていたの??とよく聞かれるのですが、おそらく家賃が安かったからでしょう。
私たちが入居していた2015年〜2017年当時で、家賃が高騰する渋谷エリアで坪単価20,000円を下回る物件は、ここ第一暁ビルと新大宗ビル(スカイランドベンチャーズやテックキャンプが入っているビル)の2つのみだったように記憶しています。
新大宗ビルもついに再開発で建て替えだそうで。

憧れが現実(リアル)になった原体験

そんな第一暁ビルで働いていたとき、自身の感覚が大きく変わった原体験がありました。当時入居していた誰もがざわついたニュース。

4階に入居していた「Increments」がエイチームに買収されたというニュースです。そして、株式100%取得額(=Valuation)が14億5,300万円で、直近年度の売上高が8,995万円、最終損益が8,022万円の赤字、という生々しい情報。

当時、私の所属していたCrevoの売上は既に数億円規模になっていたこともあり、スタートアップ界隈で名の知れていたQiitaの売上が想像よりも低かったこと、それでも15億円近いValuationがついていたことに、二重に驚いた記憶があります。
そして、何より自分たちと同じようなフェイズで、同じような売上規模で、同じような人数規模で、同じような悩みを抱えていた、3階下のフロアの会社が買収されたことで、「本当にEXITって身近なことなんだ…」と、知識として知っていたことが、リアルになった感覚がありました。

札幌のスタートアップ関係者と、東京のスタートアップ関係者で最も差があるのは、この「スタートアップで起こること」を(教科書的に知っているだけでなく)どれだけリアルに想像できているか、だと感じます。
たとえ自ら起業したことがなくとも、スタートアップで働いた経験があるか、スタートアップ界隈の知り合いがどれだけいるかで、ここの解像度の高さは大きく変わってきます。

札幌のスタートアップ起業家にも、ぜひこういう(自分と同じレイヤーにいた人たちがレベルアップしていく)経験をしてもらいたい。こういう原体験をもった起業家が増えると、地方のスタートアップ・エコシステムの平均的な目線が上がり、コミュニティ自体が急成長していく気がしています。

そのためにも、「エクイティで資金調達したスタートアップだけを集めたシェアオフィス」なのか、「聖地と呼ばれるスタートアップビル」なのか、そういうものを札幌につくることは、自分がやるべきこととして、ずっと考えています。(ですが資金がない。札幌市がドンとお金出してくれてもいいんですよ…笑)

札幌で伝説をつくるなら、このビルしかない!

ここからは妄想の話になりますが、札幌で「スタートアップの聖地と呼ばれるビル」をつくるなら、ここしかない!という候補が既にあります。
平岸にある「平岸グランドビル」です。

ハドソンが入居していたころの平岸グランドビル

私のnoteを詳しく読んでくれている方ならご存知かと思いますが、平岸グランドビルは、かつて札幌にあった伝説のITベンチャー「ハドソン」の本社ビル跡地です。

1981年当時、既に日本を代表するパソコンソフトメーカーの一つだったハドソン。その創業者である工藤兄弟の下に、米国の大学を卒業後、起業してわずか1年足らずの24歳の若者が訪ねてきます。
その若者の名は孫正義。ハドソンと独占契約を結んだソフトバンクというベンチャー企業は、これを機に日本のインターネットの歴史の中で大きな躍進を遂げていくことになります。

札幌で、スタートアップにまつわる新たな伝説を紡いでいくなら、やはりこのエピソードにあやかりたいですよね…!詳しいエピソードはこちらのnoteを!

ロールモデルの創出まで、あともう少し。

最後に少しだけ近況報告的な話を。久々にお会いした人から、「最近どうですか?北海道のスタートアップ盛り上がってきてる?」とよく聞かれます。
私の実感値としては、ようやく「ロールモデルの創出まで、あともう少し」というところまできています。

先日の交流会にも何名か来ていましたが、札幌にいながらにして、スカイランドベンチャーズ、ANOBAKA、F Venturesなど、全国的にも有名どころのベンチャーキャピタルからシードラウンドで資金調達できるレベルの起業家が少しずつ増えてきました。

当社の投資先も、長い仕込みの期間を経て、売上がぐっと上がる可能性が見えてきました。
そして、正式リリースはもう少し先ですが、私が提案する「地方における新しいスタートアップ起業の形」も年内にはお披露目できそうです。
着実に、北海道のエコシステムに変化は起こり始めています。それが花開くまで、あともう少し。

私が思うに、地方のスタートアップエコシステムの正の循環に必要なのは、時価総額1,000億円のユニコーンなんかじゃありません。
それよりも「普通の学歴の普通のキャリアを積んだ人が、自分が感じている課題感に気づき、それを事業化して、立派な経営者になっていく」事例をいくつも生み出すこと。
そしてそれを見ていた「今まで起業なんて考えたことがなかった人たち」が独立したり、スタートアップで働き始めたりすること。それを実現したい。

僕らのまわりでも、今までは普通のサラリーマンをやっていたけど、一歩踏み出して新しいことに取り組み始めた人たちが増えてきました。
身近なロールモデルを輩出することで、地方に根付く "あたりまえ" を、少しずつ変えていける。不可逆な流れは来ています。あとは、後押しをしていくのみ。

さいごに

今回は、交流会での会話をきっかけに、勢いのあるスタートアップ同士が同じ空間にいることの意義、ちょっと妄想、でも最後は少しずつ進んでいる実感のお話まで、短めの記事としてまとめてみました。
もし「実は平岸グランドビルの関係者」とか「そういう場所をつくるためのお金なら出す…」みたいな方がいたら、ぜひお声がけお願いします!!

また、起業したい方や、起業かはわからないけど業界のこういうところに課題感を感じている…という方がいれば、ぜひご連絡ください!
Mail:info@polarshortcut.jp
Twitter:@OkbNori

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