見出し画像

【ベンチプレス】肩前部を痛めないための『肩甲骨を”寄せない”正しい位置』について

今回は、ベンチプレスで肩の前側に痛みが出る肩甲骨の間違った位置について解説をしていきます。

ベンチプレスは「大胸筋」を中心とした上半身のトレー二ングですが、間違ったやり方で行うと適切な刺激を入れることが出来ずに、肩や腰を痛める原因になります。

画像2

ベンチプレスをするときには、『肩甲骨を内側に寄せて行う(肩甲骨の内転)』とよく言われますが、この意識だけでベンチプレスを行うと運動連鎖が乱れてフォームが不安定になり、肩を怪我するリスクがあります。

今回はベンチプレスをするときの肩甲骨の正しい使い方について解剖学的に解説をしていきます。

【この記事の信頼性】
現在までに「柔道整復師」として、整形外科やスポーツ現場で、多くの運動器障害(関節や筋肉の怪我や障害)に携わってきました。現在は「トレーニング指導者」として、バーベルトレーニングを中心とした『怪我をしない』ためのフォーム指導をしています。今までに学んだ知識と経験をYou Tubeチャンネル【トレーニングラボ】で発信しています。

肩甲骨を内に寄せる必要があると言われる原因は?

『ベンチプレスをするときには肩甲骨をしっかり寄せて行いましょう!』
トレーニング指導者や一般トレーニーが間違った方法で指導をしているのをたまにお見かけします。
この理由はおそらく「ベンチプレスをするときの肩関節の水平外転(肩を外転位90°で腕を後ろに伸ばす方向)の可動域を極力減らしたい」からです。

画像3

ベンチプレスをするときには「肩甲骨を内側にしっかり寄せる」ことで、ボトムポジションで肩関節の水平外転可動域を、出来るだけ減らすことが可能です。

画像4

ベンチプレスで「最も肩を痛める原因の一つ」が、肩関節の水平外転可動域を超え、肩の前側を支持している「上腕二頭筋長頭腱」「棘上筋腱」「小胸筋」へのストレスが高まることです。

ベンチ

これらのストレスを出来る限り減らすためにも、肩甲骨を内転することで肩関節の水平外転可動域を減らすことが可能になっていきます。

肩甲骨を寄せると肩を痛める本当の原因

確かに、肩甲骨を内転することで肩全体が後方に移動し、肩関節の水平外転可動域が低下しますが、その姿勢でエアーベンチプレスを行なってみましょう。

エアーベンチ 肩甲骨内転

肩甲骨を内転した状態では、胸に力が働いていないのがわかると思います。この原因は「①肩甲骨が安定していない」「②大胸筋の作用を最大限使えていない」からです。

①肩甲骨が安定していない
肩甲骨を寄せる(内転)筋肉は「僧帽筋の中部繊維」と「大菱形筋・小菱形筋」になります。

肩甲骨内転 筋

これらの筋肉によって側方への安定性は保たれていますが、上下方向の安定性はありません。ふらついてしまうので、ベンチプレスでバーを降ろして押し出す動きをするときに、肩甲骨が上下に移動しやすく不安定になります。

ベンチ 肩挙がる

そうなると自然とフォームが崩れて、肩を痛める原因になります。

②大胸筋の作用を最大限使えない
ベンチプレスの主働筋である大胸筋の作用は肩関節の屈曲、内転、内旋、水平内転となります。

大胸筋 作用

これらの動きの中で、ベンチプレスをするときにフォーカスをされるのが、「水平内転」です。それはベンチプレスの動きが、肩関節の水平内転・水平外転に酷似しているためです。

水平内転、外転

ですが、大胸筋の付着部を分けて見たときに、肩関節の水平内転だけでは、大胸筋の機能が最大限使えないのがわかると思います。

画像11

画像12

画像13

そして、肩甲骨を内側に寄せると、自然と脇が広がった姿勢になります。その姿勢からでは、押し出す方向は肩関節の水平内転しかありません。大胸筋が上手く機能しないので、『肩や腕の力で押す動作』になってしまいます。そうなると肘や肩を痛めるのは時間の問題です。

脇広がり

ベンチプレスにおいての肩甲骨の正しい位置

ベンチプレスをするときに必要な肩甲骨の動きは「下方回旋」と「下制」になります。

下方回旋

下方回旋→肩甲骨の下角が内に寄る動き、下制→肩甲骨が下方に寄る動き

イメージ的にはしっかりと胸を張り出して胸骨を斜め上に張り出す動きです。
この肩甲骨の下方回旋と下制の姿勢では、肩関節がおおよそ外転45°で脇を閉じた姿勢が、肩関節にとって一番楽に感じると思います。

水平内転 エアベンチ

肩を痛める脇が開いたフォーム【肩甲骨内転+肩関節水平内転】

下制、下方回旋

【肩甲骨下方回旋・下制】でエアーベンチをすると、胸の収縮感を強く感じることが出来ると思います。

これは脇を閉じる動きをすることによって、肩関節が外旋されて、バーを押し出すときに肩関節の内旋の力が自然と働くためです。

脇開く

さらに、肩関節の外転可動域が狭くなることで、肩関節の水平内転・水平外転の動きだけでなく、肩関節の屈曲・伸展の関与も大きくなります。

エアベンチ 外旋、屈曲

これで大胸筋の作用を最大限使ってベンチプレスを行うことが可能になります。

ベンチプレスの肩甲骨の正しい位置 ~実践編~

ベンチプレスをするときの肩甲骨の位置や、大胸筋の作用について理解が深まったと思います。ここからは実際にベンチプレスでラックアップするときの、下方回旋と下制の入れ方について解説していきます。

ラックアップ前、ベンチ台に足を置いてお尻を持ち上げます。
このときにお尻を頭の方向に押し出します。

スクリーンショット 2021-01-06 21.31.28

押し出したらその力を肩甲骨で受け止めていきます。このときに軽く胸を張ると、自然と肩甲骨の下方回旋と下制の動きが入ります。


さらに、胸を張ったときに背中に緊張感が入りますが、それは広背筋が収縮している証拠です。

広背筋

ここでは深く解説しませんが、ベンチプレスをするときには広背筋の機能が正しく働くことで、肩甲骨が「下制」と「下方回旋」の姿勢で安定しやすくなります。

最後に顎を引いて二重顎を作るようにしましょう。

顎引く

顎を引くことによって、肩甲骨と肩甲骨の動きがより自然になり、広背筋も収縮しやすくなります。胸も張り出しやすく、アーチが高くなります。

ベンチ台が滑りやすく、お尻を持ち上げるときに肩甲骨で力を受け止めることが出来ない方は、滑り止めの購入をおすすめします。100円均一ショップなどで購入いただけます。個人的には、あるとなしでは「雲泥の差」です。

スクリーンショット 2021-01-06 22.07.11

②そのままお尻を落として足を地面で踏ん張る

このお尻を落とすときには、広背筋の収縮感が抜けないように丁寧に落としましょう。

スクリーンショット 2021-01-06 21.46.59

お尻を遠くに落としてしまうと広背筋の緊張が抜けてしまい、肩甲骨の下制と下方回旋の位置も崩れていきます。

スクリーンショット 2021-01-06 21.50.36

そのままラックアップをしてベンチプレスを行うことで、自然なフォームでベンチプレスが出来るようになります。肩の怖さもなく、無意識的に体全体で押せるフォームになっていきます。

ベンチプレスをするときの注意点

ベンチプレスをするときに一つだけ注意点があります。それは肩甲骨を過剰に寄せて落とす動きをしないことです。
無理にブリッジを作ろうと、肩甲骨を過剰に下制・下方回旋を行うと、運動連鎖が崩れて、ベンチプレスをするときにフォームが不安定になっていきます。

スクリーンショット 2021-01-06 21.54.11

ベンチプレスでは肩甲骨を固定するのではなく、あくまで安定させるだけです。動作を繰り返すときには、肩甲骨も同時に動いています。
スタートポジションからバーを降ろしていくときに、肩甲骨が更に下方回旋されそれに伴って、ほんの少し胸のアーチも高くなります。

胸高くなる

ラックアップをするときに、肩甲骨を無理やり固定しようと意識しすぎると、肩〜肩甲骨の連動性が崩れてしまい、ベンチプレスを気持ちよく出来なくなります。

あくまで、肩甲骨の位置を意識するのではなく、お尻を持ち上げたときの広背筋の緊張感を意識するほうが、フォームが安定しやすくなります。

まとめ

ベンチプレスをするときの肩甲骨の正しい使い方は「下制」「下方回旋」です。ただ、意識的にこの動きをするのではなく、ラックアップ前のアーチを作るときに、軽く胸を張って顎を引くことで自然とその動きがなされます。

ベンチプレスをするときに、意識的に肩甲骨を寄せてされていた方は一度試してください。

You Tubeにて動画の解説もしています。
【初心者】怪我をしないベンチプレスの正しいやり方【イチからフォーム解説】

【ベンチプレス】重量が伸びるとフォームが不安定になる3つの原因と改善方法

最後までご覧頂きありがとうございます!
この記事が皆さんの為になれると幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 皆様から「サポート」や「シェア」をしていただけると今後の活動の励みになります。