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【スクワット】膝前部を痛める原因『大腿四頭筋の機能低下』を解説

こんにちは、トレーニングラボのノリです。今回はスクワットをするときに膝の前側を痛める原因である「大腿四頭筋の機能低下」について解説をしていきます。

皆さんはスクワットやしゃがんだときに、膝に痛みや違和感が出たことはありませんか?

フォームエラーや下半身の関節の硬さなどの問題が起こると、膝関節へのストレスが強くなり、そのままトレーニングを続けると「関節」「筋肉の付着部」「腱」「靭帯」を損傷する危険性があります。

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最終的には、膝関節を構成している骨が変形し、正座ができなくなったり膝を伸ばすことが出来なくなります。

これを未然に防ぐ為には、膝関節に過剰なストレスを加えずに、体全体の関節や筋肉が上手く働く環境にさせる必要があります。

今回は、【大腿四頭筋の機能低下】から引き起こされる膝の痛みについて解説をしていきます。

スクワットと大腿四頭筋

スクワット動作は、下半身の多くの筋肉が動員されます。そして股関節を伸展させる筋肉は、「大殿筋」「ハムストリングス」「内転筋群」と数多くありますが、膝関節を伸展させる筋肉は大腿四頭筋しかありません。

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つまり、大腿四頭筋が適切に働かなければ、膝関節が不安定になり、スクワットの動作を遂行することが出来ません。

世間では、
『スクワットをするときに、膝をつま先より前に出さないようにしましょう』
といった情報を目にすることがあります。

これは大腿四頭筋の活動を抑えて膝の痛みを予防する目的、さらには大殿筋への刺激を高める為です。トレーニング指導者の中にもこの指導方法で解説している方もいらっしゃいます。ですが、これは場合によっては間違いです。

膝を既に痛めている、さらにはお尻を重点的に強化したい場合で、自体重でSQを行う場合は問題ありませんが、バーベルスクワットでは重心がずれてしまい、膝や腰を痛める原因になっていきます。

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そして、膝を既に痛めている方やお尻を重点的に鍛えたい場合、スクワットではなく、ヒップリフトやルーマニアンデッドリフトなどを行うことで安全にトレーニングをすることが出来ます。

本来、スクワットというには、しゃがんで立ち上がる動作になるので、股関節を伸展させる「大殿筋」「ハムストリングス」「内転筋群」と、膝関節を伸展させる「大腿四頭筋」を同時に強化するトレーニング種目です。

無理にフォームを変えて、膝を伸ばす大腿四頭筋を使わないようにすること自体がエラー動作です。目的に合わせて、トレーニング種目を選択していくべきだと考えています。

そして、膝関節を伸展させる筋肉は、大腿四頭筋しか使われないので、もし大腿四頭筋の機能低下が起こると、自然とフォームエラーが起こり、膝への負担が強くなります。

大腿四頭筋の解剖学・運動学

大腿四頭筋は名前の通り、太ももの前側についている4つの筋肉から成り立っています。

大腿直筋《[起始部]:腸骨の下前腸骨棘→[停止部]:脛骨粗面》

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中間広筋《[起始部]:大腿骨体前面→[停止部]:脛骨粗面》

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外側広筋《[起始部]:大腿骨(粗線外側唇→[停止部]:脛骨粗面》

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内側広筋《[起始部]:大腿骨(粗線内側唇)→[停止部]:脛骨粗面》

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上記からみてわかるように、『大腿直筋』は「骨盤の腸骨」から大腿骨を通り越して「脛骨」に付着しているので、股関節と膝関節の2つの関節をまたぐ関節『2関節筋』となりますが、その他の筋肉は「大腿骨→脛骨」と膝関節しか関与しません。

筋肉の付着部からみて分かる通り、「大腿直筋」の作用は股関節の屈曲と膝関節の伸展になり、その他の「3つの筋肉」は膝関節の伸展となります。

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この股関節の屈曲動作は、深層にある「腸腰筋」と「大腿直筋」がバランスよく働くことで、自然と股関節を曲げることが可能になっています。ですが、腸腰筋の機能が低下したり、筋短縮が起こることで、大腿直筋のみで股関節の屈曲を担うことになります。その結果、長時間歩いていたり、ランニングをしたときに大腿直筋の付着部である股関節の前側に痛みや違和感の原因になります。

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大腿四頭筋の機能解剖学

次に、大腿四頭筋の機能についてもう少し深く解説をしていきます。

大腿四頭筋の付着部である「脛骨粗面」ですが、膝のお皿である膝蓋骨を通して、膝蓋腱となり脛骨粗面に付着しています。

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膝関節の「屈曲・伸展」をするときには、大腿四頭筋から膝蓋骨と膝蓋腱を通して、脛骨粗面へと力を伝えます。

そして、膝関節を屈曲するときに同時に「膝蓋骨は下方」に動き、膝関節を伸展するときには同時に「膝蓋骨は上方」に動きます。

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膝を伸ばした状態で膝蓋骨に、上下左右の遊びがあるのは、大腿四頭筋を効率よく機能させるためです。

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この膝蓋骨があると、効率よく大腿四頭筋の力が発揮することができます。その理由は「テコの原理」が働き、膝蓋骨が滑車の役割を果たして強い力を発生させます。

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この膝蓋骨の「安定性」や「可動性」が保たれることで、大腿四頭筋が効率よく力を発揮することが可能になります。

安定性=関節を固定してふらつかずに維持できる能力
可動性=関節を動かす能力(≠関節可動域)
「関節可動域」は関節がどこまで動くかの範囲の視点ですが、「可動性」は関節を自分自身の力でどこまで動かせる力の視点です。

大腿四頭筋の機能低下と膝蓋骨の安定性・可動性の低下

膝蓋骨の安定性と可動性が低下すると、大腿四頭筋を最大限発揮することが出来ません。

▪膝蓋骨の可動性低下
何らかの原因で膝蓋骨の可動性が低下すると、膝関節の屈曲・伸展をしたときに膝蓋骨が上手く動かないので、大腿四頭筋の機能を発揮することが出来ません。

膝蓋骨と大腿骨の間には、「膝蓋下脂肪体」と言われる組織があり、関節同士でぶつからないようにクッションの役割があります。

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膝を痛めると炎症が起こり、その炎症反応により、膝蓋下脂肪体が変性し硬くなることがあります。硬くなると、膝蓋骨の可動性が低下し、その結果大腿四頭筋の機能も同時に低下していきます。

▪膝蓋骨の安定性低下

膝蓋骨を安定させる役割のある筋肉が内側広筋です。内側広筋には上2/3と下1/3で筋肉の走行が違います。上2/3では筋肉の走行が大腿骨から膝蓋骨の方向になっていますが、下1/3では、斜めの方向になっています。

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この下1/3の部分を「斜走線維」と呼ばれていて、これが膝蓋骨の安定性に関与していきます。

肩関節のインナーという言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

肩関節のインナーとは、肩関節を動かすためには、肩の深層にある小さな筋肉です。インナーが機能することで肩が安定して上手く動かすことが出来ます。

この肩のインナーと同じ役割があるのが、内側広筋の斜走線維です。

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内側広筋斜走線維の機能が低下すると、膝蓋骨の安定性が低下し、その結果大腿四頭筋を最大限活かすことが出来なくなります。

これらの膝蓋骨の安定性と可動性のどちらかが低下、もしくはその両方が低下していると大腿四頭筋の機能が発揮されなくなります。

スクワットと大腿四頭筋の機能評価

では、実際大腿四頭筋の機能がどこまであるかを評価をしていきます。皆さんの大腿四頭筋が上手く使えているかを一緒にテストをしていきましょう。

大腿四頭筋の機能が低下していると、膝関節屈曲10°付近から伸展位、しゃがんでいる深屈曲位で力を発揮することが難しくなります。

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この姿勢で力が働くか見ていきましょう

①セッティング(膝関節伸展テスト)

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片足を台の上に乗せてもらい、膝の下にクッションやバスタオルを巻いたものを挟んでもらいます。膝の裏を地面に近づけるように押し付けます。その姿勢から膝を伸ばしたときに、膝の内側上方の内側広筋が収縮しているか確認してください。

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上記の部位に収縮感と触ったときに筋肉が硬くなっているかをチェックします。

収縮感や筋肉の硬さに左右差がある場合、内側広筋の機能が低下している可能性があります。

②しゃがみテスト(膝関節深屈曲テスト)

一番踏ん張りやすい足の幅で、しゃがんでいきます。このときに意識的に大腿四頭筋に力を入れてしゃがんでいきます。股関節が膝を超えても大腿四頭筋が収縮し、膝の位置が安定しているかを見ていきます。

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このときに、爪先に対して、膝をほんの少し外に開きながらゆっくりしゃがんでいきましょう。膝を外に開くことで内側広筋に力が働きやすくなります。

途中で大腿四頭筋の収縮感が弱くなったり、膝がふらつく場合は、大腿四頭筋の機能が低下している可能性があります。

以上の2つのテストで問題があった場合、スクワットをするときに膝にストレスを感じやすく、しゃがんで立ち上がるときに膝をしっかり伸ばすことが出来なくなります。

そのままスクワットを続けていても、膝を前に出すのが怖くて重心が後ろに流れたフォームになっていきます。

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この姿勢では、重心が後ろになり、上半身の前傾角度が強くなり膝だけでなく腰へのストレスも強くなっていきます。

まとめ

スクワットをするときには、大殿筋にばかり目が行きがちになりますが、大腿四頭筋の機能も不可欠で機能低下が起こると、膝に痛みや違和感が出て、スクワットをするときの重心も後方に移動して、フォームが乱れていきます。

そしてこれらの問題を解決するためのエクササイズはYou Tubeで解説をしています。

スクワット 膝痛い2

上記の動画では、今回お話をした内容も序盤で骨模型を使って解説をしています。

皆さんがスクワットをするときに、膝関節に痛みや違和感、さらには不安感を感じながらされている場合、一度参考にしてもらえると幸いです。

最後で見ていただいてありがとうございました!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 皆様から「サポート」や「シェア」をしていただけると今後の活動の励みになります。