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優しい行動力

 朝7時ちょうどに電話が鳴った。妻からだった。

「おはよう、ごめんけど娘起こしといて〜」とのこと。

仕事が早出にしては異様に早い出勤だなと思いながらも、眠気が消えない声で返事をしつつ、娘を起こす。見た目いつも通りの一日だった。

お昼をまわり、僕のLINEにどんどん写真が送られてくる。僕の母が小洒落た格好で湖に佇んでいるものや、寿司を食べながら満悦気味な表情を浮かべているものだったり。

ああ、母がどこか旅行へ行き、その写真を妻越しに僕に送って来てるのかな、と当初はそう思いながら写真を見ていると、そのうち "妻と母が映ったツーショット" がちらほら送られて来始めた。

そこで初めて「ん?」となる。何がどうなっているんだ?

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 改めて訊いてみると、どうやら僕の母の誕生日プレゼントとして、サプライズで北海道へ連れ出したようなのだ。写真の中で母が佇んでいた湖は、ウトナイ湖だった。

朝早くの LCC 飛行機に乗って、日帰りの弾丸で帰って来るという濃密なプラン。「美味しい寿司を食べさせたい」という目的一点を果たすために、母にあらかじめ日程だけ空けておくように伝えておいたとのこと。

母にしたら、待ち合わせ場所に着いたら何故かバスに揺られ関空へ向かい、そのまま新千歳空港に降り立っていたという訳だ。さぞ驚いたことだろう。

何より、僕や娘すらも計画を聞かされてなく、我々からしてもサプライズだった。帰ってきた妻は、驚く僕らを見ながらケラケラと笑っていた。

こうした時の妻の行動力は凄い。特に「優しさ」を基軸にした行動力には圧倒される時がある。僕が忙殺を言い訳に出来ないタイプの親孝行を、本人も忙しいだろうに、ごく自然な形で行ってくれる。

無垢でニュートラルなタイプの優しさを妻は持っている。そしてほんの少しの打算(自分自身も全力で楽しむ)も。

なにより妻と母は昔から仲が良い。僕の両親関係が良好なのは、妻がジョイントとなってくれることも非常に多く、本当に有難い話だ。

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 まあしかし、"写真と必要最小限のキャプションめいたLINEメッセージ" という妻からの端的な情報だけで、結果的に完全に騙されてしまった。

「おかんの旅行記録」という先入観がすっかり頭の中にあったので、そこに突然妻が登場した時は、大げさな言い方だと時空と次元の歪みを感じ、軽く混乱を覚えてしまった。

こういう時の先入観から一つ一つの謎が解き明かされていき、点どうしが一つの線になって繋がるという体験は、どのようなケースであれ一定のカタルシスを覚えるとともに、自分の中の凝り固まったフレームを溶かしていく。

妻の優しい行動力に、常に刺激を受けている。

今日はこんなところで。

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