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書店員さんに賞を――デンマークの事例

ブリクセン賞とは?

https://blixenprisen.dk/prismodtagere/prismodtagere-2023/

 デンマークにはブリクセン賞という文学賞がある。ブリクセンとは、お察しの通り、『アフリカの日々』や『バベットの晩餐会』などで知られるデンマークを代表する作家、カレン・ブリクセン(イサク・ディーネセン)が由来となっており、デンマーク文学に寄与する人、団体、機関等の功績をたたえるため、2015年から、デンマーク作家協会、デンマーク文学協会、デンマークの出版業界により与えられる賞だ。

 ブリクセン賞には、「今年の本」「今年の小説」「今年の伝記」「今年のミステリ」などオーソドックスな部門もあれば、「今年のオーディオブック・ナレーター」「今年の文学普及」など少し変わった部門もある。中でも日本であまり聞かないのは、「今年の書店員」部門である。

今年の書店員

 今年の書店に選ばれた書店員は、10.000 DKK(日本円でおよそ21万円)ほど授与される。

   2023年にこの賞に輝いたのは、フレゼリシアにあるビルン書店の店長エルサ・ビルン。ビルン書店は今から73年前に開店したとのことだ。賞をもらったことで知名度が高まり、書店員の士気も高まると喜ぶ書店のオーナー。ビルン書店はその品揃えの豊富さで知られる書店だそうだ。

   2022年の受賞者は、コペンハーゲンの街中にあるブルー文学バーのクラエス・ベンティエンとアンナ・ヤハンセン。執筆者も赴いたことがあるが、書店員さんの本の知識が豊富で、特に若い作家さんたちの集いの場になっているようだ。一人出版社など、小規模出版社の本も多く取り揃えている。


  2019年の受賞者はアーノルド・ブスクというチェーン店で働くクレア・バウティスタという書店員で、その文学への情熱が評価された。

  2018年は第2の都市オーフスにあるクリスチアン F. ミュラーとう書店の店主マリアンナ・ミュラー。1905年に作られ、4世代に渡り経営を続けてきた。特に純文学の品ぞろえがよく、読書会など様々な催しを行ってきた。


  2016年の受賞者はアンデルセンの生まれた町として知られるオーデンセに2015年からあるケアの本という書店の店長、パニッラ・ケア。

2015年の受賞者は本&思想というチェーン店のホーセンス支店の店長ヘッレ・ナンケ。女性向けの文学クラブを運営。会員は100人、会員になりたいと待っている人は200人もいる人気ぶりだ。文学クラブでは毎月作家がやって来て、講演やワークショップを行う。

 日本にも書店向けの賞を

 どの書店員も、インタビューでは書店の苦境を訴えたり、謙遜したりしつつも、これまでの労が報われたことに、ほっとしたような表情だ。候補のお店は複数ノミネートされ、注目を浴びる。
 日本にも様々な書店があるが、このような書店で働く書店員さんの労をねぎらうような賞ができてもよいのではないか。参考までにお伝えすると、今回紹介した賞の運営者は作家協会、文学協会、出版業界だった。

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