感想 司馬遼太郎の日本史探訪
司馬遼太郎の対談集。
源義経、楠木正成、斎藤道三、織田信長、関ヶ原、朱印船、シーボルト、緒方洪庵、新選組、坂本竜馬、幕末遣欧使節、大村益次郎、新世界”蝦夷地開拓史”の章立て。
義経~戦国の辺りは特に新味がない。まあ今更新味を求めて司馬遼太郎を読んでるわけじゃないんだけど。
幕末・明治にかけての話はおもしろい。特にシーボルトと蝦夷地開拓史。
シーボルト
ちょうど蘭学が盛んになった頃に日本にやってきたオランダ人の医師。医術だけでなく自然科学全般に強かったそうな。医術を餌に長崎奉行から便宜を図ってもらい、あちこち測量をして地図作りに励んでいたらしい。
弟子たちを使って博物学的な資料もそろえ、いざオランダに帰国というところで船が難破。当時禁制だった日本地図を持ち出そうとしていたことが発覚して追放処分となった。
なんで医師が地図をわざわざ持ち出したのだろうとうっすら疑問に思ってはいたので、事情が補完できてよかった。晩年のシーボルトが「余は美しき平和の国へ行かん」と言い残す〆の話も麗しい。
蝦夷地開拓史
黒田清隆が大胆に外国人に開拓を任せ、クラークがフロンティア・スピリッツでそれに応えたというような話もおもしろかったが、もっとおもしろかったのは戊辰戦争で賊軍となった仙台の伊達藩の話。
ほとんどお家取り潰しのような憂き目に遭った伊達家支藩の亘理藩の武士たちは、殿様以下全員で新天地を求めて北海道に移住したそうな。極寒の地でアイヌに粟を借りたりと苦労を重ねつつも、寄り添って頑張っていたらしい。
結局廃藩置県で平民になってしまい、北海道初の牧場やクラーク考案の甜菜工場も本土からの資本に太刀打ちできずに人手に渡ってしまったとのこと。おしまいは悲しい。
しかし、「北面の武士」の体面を胸に、いじらしくも理想のコルホーズのような集団生活を送っていたというのは実に魅力的で絵になるなと思った。
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