今だからこそ、イノベーションとは何かを話そう


 イノベーションという言葉がビジネス界を斡旋してから、もうどれだけ時間が経ったでしょうか。最初の発端はヨーゼフ・シュンペーターによる『技術革新』だったはずですが、今では随分と乖離してしまったように感じるのは僕だけではないと思います。

 もちろん、すべてのサービスが創始者にとっては革新的と思えるものです。ですが、それは傍から聞けば閉口してしまうようなモノであることなどが往々にしてあります。

 先に述べておきますが、僕は別に経営学者というわけでもありませんし、学歴で言えば高卒という底辺の人間です。ですが、実際にビジネスに関わり、プロジェクトを立ち上げ、今も新たなサービスを作って動いている一人の起業家として、戒めも含めて書いてみようと思います。また合わせて、本記事は特定のビジネスやサービスをこき下ろす目的で書いているものではないことも合わせてご理解ください。

 最初にタイトルに対しての結論を言っておきます。

 イノベーションとは『社会に属する多くの人の習慣に変化を促すことができるインパクトを持ったビジネス』のことです。(厳密には僕はそう思っていますってことです)

 これだけの話なんですが、このイノベーションを実際に成すとなるとめちゃくちゃ大変です。そういう話を書いていこうと思います。


それは『イノベーション』か?

 まずイノベーションとはそもそも何なんでしょうか。

 イノベーション(英: innovation)とは、物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。一般には新しい技術の発明を指すという意味のみに理解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す。

 上記はWikipediaからの引用です。

 元々、英語のイノベーションという言葉はラテン語のinnovareという「リニューアルする」という言葉から来ているそうです。

 このあたりの定義についてはインターネットや書籍やらで語られていますので割愛します。

 僕が普段多くのビジネスを見ていて思うのは『イノベーション』というにはインパクトが薄かったり、その人だけの独り善がりになっていたりすることです。
 起業家として活動をしていると色んな所から「このビジネスはどう?」とか「こんなサービスをしようと思っているが、参加しないか?」などお声を頂くのですが、そのほとんどがすでにある既存のサービスの上塗りでしかないものや、社会的な価値を広げにくいサービスなどがほとんどです。
 もちろん、そういう意図を含まずに自分の決めた目標に達するビジネスであればいいのですが、ほとんどの人は「これで世界は変わる!」と言います。僕はその度に「本当かな?」と思います。

思いつきでできるほど『イノベーション』は簡単じゃない。

 僕だけじゃないと思いますが、なにかしらビジネスを思いつくと興奮してすぐに誰かに話したくなります。が、そこで同時に思うのが「本当にそうだろうか?」という疑問です。
 思いついたアイデアを否定されるのは辛いことですし、疑われるのも心外です。ですが、多くの情報が溢れる今の時代に、自分だけがそのアイデアを思いつくというのはほとんどありえません。もし、そのアイデアがまだ世に実現していないのなら、実現しても価値がないこと実現不可能なことか、だいたいこの2つのどっちかです。

 僕は『イノベーション』という言葉自体が、起業家やビジネスマンにとって当たればでかい『一攫千金の金脈』のように言われているように思えます。結果として今のシリコンバレーや経済新聞を騒がせる名高い起業家たちの中にはそう見える人たちも少なくありません。が、ゴールドラッシュはいつか終わるように、表面に見える金脈はだいたいどこかの誰かが独占して終わります。それをたまたま自分が掘り当てると本気で思うなら、その人は起業家とは言えないと僕は思います。

 自分のアイデアだからこそ、自分が最も疑い続けることが必要です。

 これは本当に革新的と言えるだろうか?
 そんなに大きな価値があることだろうか?
 このコンセプトや理念は上っ面のモノではないだろうか?
 良いように言っているだけではないだろうか?

 かくいう僕も今「BookBase」という小説・漫画のCtoCプラットフォームを開発し、ローンチに向けて動いています。もちろん、出来上がれば革新的なサービスとなると本気で思っていますが、今でも「こんなサービスだれかが思いついていないほうがおかしい」とも思っています。実際、調べて見ると同じようなサービス(AmazonのKindleなど)はあるので、斬新なアイデアということでもありません。ですが、アイデアは同じでも至りたい結果はおそらく違いますし、価値を提供する相手(ターゲット)も異なってきます。

 今、世の中で「あれはイノベーションだ!」と呼ばれるモノも、当初の段階ではアイデアとしてはすでに実現していたものや、後発に真似されたりしてます。それでもそれが『イノベーション』という結果を残せたのは、アイデアだけに留まらず、そのビジネスを構成する細かな要素を至りたい結果にまで結び付けられたからでしょう。

 アイデアからイノベーションという結果を引き出すためには、執拗なまでに疑問を投げ掛け続ける必要があります。問われる疑問、壁を一つずつ乗り越えた結果、表面だけでは真似のし得ない唯一のビジネスになります。

 そして、そのサービスが世の中に徐々に浸透していき、その速度がどんどん加速して、ついに世界にまで波及してようやく『イノベーション』と言われるものにまで昇華されるというわけです。


イノベーションにとって、稼げるとは何か

 また、イノベーションを語る上で稼げるかどうかはとても重要なことだと僕は思います。
 昨今のビジネスは「社会課題を解決できるかどうか」ということも重要視されます。そのせいか、「困っている人を助けるための事業」というのばかり先行してしまい、肝心の稼ぎというのが見えないビジネスが多くあります。

 僕は最初にイノベーションとは

 『社会に属する多くの人の習慣に変化を促すことができるインパクトを持ったビジネス』

 だと書きました。
 この「多くの人」という言葉はめちゃくちゃ大切です。

 当たり前の話ですが、ビジネスとは商売です。そして、稼ぎとは価値に対しての対価のことです。つまり、稼げるかどうかというのは「どれだけ多くの人に価値を提供し、対価を受け取ったか」の指標です。もちろん、ビジネスで稼げないというのはイコール「そのサービスに価値がない」とは言い切れません。キャッシュフローの問題や集金の問題、様々な外的要因によって「稼げていない」という状況に繋がるものです。ですが、最終的な結果として稼げる未来が見えないなら、それは多くの人にとって本当に必要なサービスかは考えないといけないでしょう。

 また、必要とする人は少ないが革新的ということもあり得ると思います。

 クリステンセン教授による『イノベーションのジレンマ』という本を読まれた方ならご存知だと思いますが、この本に出てくる『破壊的イノベーション』というものは、大企業などが見向きもしないニッチな需要を満たし、最終的に大企業を崩壊にまで追いやることでイノベーションとなるというものです。

 スマホやPCなどがこれらのわかりやすい例かなと思います。
 最初はごく一部の人にしか必要とされないものが、拡大していくことで必要不可欠なものへとなったわけです。

 たしかに最初はニッチなものでしかないかもしれない。けれど、そのサービスが多くの人に必要とならざるを得ないほどのポテンシャルがあるものだからこそ、『イノベーション』というビジネスにとっての一つの頂きにまで到達できるのだと僕は思います。

まとめ:イノベーションとは結果論であり、結局はただの押しつけ

 革新的であることと、風変わりなことは紙一重です。
 そして、実際にイノベーションだったと言われるまでには時間差があって、言い出した最初は誰もそうだと信じてはくれません。そのサービスが生まれた瞬間に、水面に落ちた雫のように「世界に変革の波紋が伝わる!」なんて簡単なことではないです。人は根本的には変わりませんし、変わりたいとは思ってないのかもしれません。『イノベーション』を成すには、変わりたがらない人たちに何度も「これええやつやで」としつこく言い続けるか、その人達の意志とは関係なく変わらざるを得ないような状況を創る必要があります。ポンと出たアイデアが無条件に受け入れられ、広まっていくなんてことはないんです。

 『イノベーション』というものは意図しただけでできるものではありませんが、狙わなければ絶対に出来ません。
 真新しいテクノロジーやアイデアに溺れず、それが広まった後の世界を常に見据えながら、日々練り上げ、形にして、ようやく至る頂きです。

 積み上げて積み上げて、ようやく到れるという癖に『革新的だ!』なんて言われるのはほとんど全部終わってからでしかない。そんな望まれない押し付けを貫き続けないとこの頑なな世界は変わってはくれないでしょう。


 めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、書きたいことは書けたかなと思います。
 僕自身、これだけ偉そうに書いておきながら『イノベーション』の頂きにはまだまだ遠い挑戦者でしかありません。

 ですが、一つでも多くのビジネスによって、社会が良い方向に変わって、笑顔となる人が増えればいいなと思っています。

 読んで頂きありがとうございました!


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