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ゼロ州VS満載州比較から考える義務化の効果【アメリカのコロナ事情Vol.17】

ハワイ州とテキサス州、感染者数の推移

コロナ関連の義務化:ゼロ州VS満載州比較【アメリカのコロナ事情Vol.16】の続編です。

ハワイ州とテキサス州の新規感染者数の推移は下記の通りです。人口が違いますので、あくまで波の形(感染拡大・縮小時期)で見てください。

真逆の政策をとっていますが、夏に感染爆発した時の”波”が共に減少し、落ち着いてきているように見受けられます。ハワイは今年6月以降に起こったデルタ株による感染爆発以外の時期は、比較的”波”という波は起きていなかったようです。それだけに夏に襲われた”大波”以降、慎重になっているのかもしれません。

ハワイ州の感染拡大の原因は?

そして、この大波の原因として考えられるのが、アメリカ国内からの旅行客です。下記はハワイ州政府のサイトから持ってきた、ハワイを訪れた国内旅行者数です。

ピンク色のグラフ(2020年)を見ていただくと、3月25日以降、ハワイ州のメインの産業である観光が大ダメージを受けたことがわかります。昨年、夏頃にはすでに観光客をターゲットとした飲食店や店舗の閉鎖のニュースが聞こえてきていました。PCR検査がアメリカで本格稼働(検査供給が需要に追いついた)したのも夏頃だったかと思います。その頃から、ハワイ州政府は、PCR陰性証明を条件とした、観光客誘致の再開を検討しているようでした。昨年10月以降、グラフが上向きになっているのは、ハワイ州セーフ・トラベルズ・プログラム(事前検査)開始の影響です。

一方、ネイビー色のグラフ(2021年)を見ると、まず3月頃、小さな山があります。アメリカではこのあたりに1週間程度の春休みがあります。5月から8月にかけての山は、夏休みです。9月に一度、旅行者が減少した後、再び上昇傾向にあるのは、10月後半から12月末にかけてのホリデーシーズンにはいったためです。

興味深いのは、今年5月、本土からの旅行者が約61万人超で、過去最高を記録した2019年を4.3%上まったといいます。5月以降、コロナ前の2019年よりも若干高い位置で推移しています。一方、米国外からの旅行客はいまだ回復できていません。

この2021年のアメリカ国内からのハワイへの旅行者数と、ハワイ州の新規感染者数の推移を比較してみたのが下の画像です。それに感染者数や旅行者数に影響がありそうな政策、ワクチン接種率のグラフを加えています。データから起こしたグラフではなく、画像を貼付けたものですので、あくまでご参考程度にご覧ください。

当然といえば、当然なのですが、旅行者数の増減と新規感染者数は、緩やかな相関関係が見られます。ただし、関係のある政策も実施時期を入れたのは、感染者数は、何か1つの要素のみが影響するわけではなく、さまざまな要因が影響しあって増減するものだと思うからです。*”青丸に数字”が緩和策です。

ここで注目していただきたいのが、春休みと夏休みの2つの期間を比べると、春休みよりも夏休みの方が新規感染者数が旅行客増の影響を受けていることです。本来、ワクチン接種の進んだ夏休みの方が、旅行客増の影響を受けにくくなっているべきです。この原因を私は、CDCやファウチ博士によるミスインフォデミックにあると考えています。ブレイクスルー感染が想定されていたデルタ株の拡大が始まっていたにもかかわらず、ワクチン接種推進のため、「ワクチンを打ちさえすれば、元の生活が戻る!」ような宣伝をしていたからです。ワクチン完了者の間でも感染拡大が起きてしまい、このキャンペーンは7月末には終了しました。

■詳細は・・・【アメリカのコロナ事情】感染爆発の原因を探るVol.2

ワクチン接種完了者であっても、他の感染対策を一切取らなければ、感染を広げてしまう可能性はあります。ところが、連邦政府もハワイ州も、その後もワクチン完了者の陰性証明が不要にする等、未接種者より制限がない政策を続けています。私は何も”制限をたくさん加える方が良い”と、考えているわけではありません。未接種者よりも緩い制限で良いということは、どうしても”ワクチンのみ打っておけば大丈夫”という印象を与えてしまいます。これが問題だと考えています。

ハワイの旅行者向け政策(2020年10月〜)

観光がメインの産業であるハワイ州にとって、安全に、かつたくさんの旅行客を獲得することは死活問題ですから、その分、現在、他州より厳しめの政策を、状況に応じて緩和したり引き締めたり細かく実施してきたように見受けられます。

驚いたのが下記の一覧の、「2021年5月30日:屋外でのマスク着用義務撤廃 」。本格的な夏が始まる5月とはいえ、ハワイです。屋外でもマスクの着用義務を設けるほど、厳しい措置をとっていたとは・・・。ハワイ州とは対照的に、テキサスではその2ヶ月前には、マスク着用の義務化が解除されていました(義務化の解除であり、マスク着用が禁止というわけではありません)。でも、これで”なぜ屋外なのにマスクをしている人がいるのだろう?”という謎が解けました。海岸沿いをランニングしている人の中にも、マスクをしているがいて・・・。
SARSの時、医療施設が充実していなかったことで院内感染が問題となっていたベトナムでは、”徹底した換気”を取り入れたことで、最速でSARSを封じ込めることができたのですが。屋外で果たしてマスクは必要なのでしょうか?

ハワイとテキサスの比較による”義務化”考

ハワイとテキサスは、ソーシャルディタンシングの取れ具合や産業、人口等、さまざまな違いがありますから、一概にどちらの政策が良いとはいえないかと思います。ただし、”義務化”による感染対策については、その効果に疑問を感じています。

前編(コロナ関連の義務化:ゼロ州VS満載州比較【アメリカのコロナ事情Vol.16】)のコロナ・ルールの運用のところでも触れましたが、何かを強制させられると、人はそれに従うかもしれませんが、本人がその必要性を感じていない場合、取り組みがおざなりになったり、抜け穴を探したり・・・してしまう人もいます。本当にその政策を実施させたいと思うのであれば、その必要性が伝わり、理解されるような情報提供を行っていくのが本来の民主主義のあり方だと思います。
パンデミックが始まったばかりの頃は、「マスクの義務化くらい、どうしてここまで抵抗するのだろう?」と思っていましたが、強権発動はどんどんエスカレートしてきて、リベラル派が実は共産党だったということをもはや隠さないようになってきました。抵抗する力が大きくなっているのは、当然です。

実際、義務化によって、ワクチンの接種率が期待するほど効果がないことも分かっています。

未接種者がレストラン等の施設を利用する場合には、48時間以内の陰性証明を義務付ける等、未接種者の負担が大きいハワイ州ですが、ワクチン接種の義務化を禁止しているフロリダ州と接種率はほぼ同じです。義務化を強いても、必要がないと思う人は打たないとのです。だとすれば、ワクチン接種の義務化は、ワクチン推進という点も失敗しています。

さらに、こうして無理やり導入した政策は、本当に効果があるものなのか?
政策立案者に対しても疑問を感じています。

例えば、ハワイで行われていた、未接種者に要求された陰性証明の提示は、無症状を対象としたPCR 検査を行うことで、感染者のスクーリングを行い、”感染していない人”だけが特定の施設を使用できるので安心というものです。
もし、本当にハワイ政府がこのスクリーニングが有効と考えているならば、陰性証明は、未接種者だけでなく、接種完了者にも要求するべきです。というのも、”ワクチンの役割は、感染拡大の防止対策から、重症化対策に移行した”ということは、デルタ株が拡大した際に、CDCの所長、ワレンスキー博士も認めています。まさかCDCの言いなりになっているのに、CDCの所長の発言を聞いていないなんてことはないですよね?みんなが安全だと思っている施設に、ブレイクスルー感染者がいる可能性がいるかもしれないということは、感染拡大の種になり得ます。


加えて、無症状者に対するPCR検査自体も、信頼性に疑問点が残ります。
【論争】PCR検査の問題点
■【
アメリカのコロナ事情Vol.7】ミスインフォデミック(2)PCRの闇①        ■【アメリカのコロナ事情Vol.8】ミスインフォデミック(3)PCRの闇②

上記はPCRのCT値の高すぎる設定問題について取り上げたものですが、PCR 検査を無症状者に行うことは、統計学的にもスクーリングの精度を下げることになります。PCR検査の特異度(感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られる割合)は、推定では特異度99%以上とされていて、この数字だけ見ると、正しい検査結果が出てきそうな気がします。ただし、ハワイ州で行われているPCR 検査は1日、150万件くらいです。そうすると、1日あたり最大1万5千人はコロナではないのに、コロナと判定されてしまうことになります。小さくはない数字です。このようなことからも、症状が出た人、濃厚接触者等、検査すべき対象者を絞る必要があると思います。

もちろん、新型コロナウイルスについてよくわからず、治療法も見つかっていなかったパンデミック当初には、このようなスクリーニングも意味があったと思います。しかし、すでに長期戦に入っています。これだけ時間をかけてコロナ対策のみに力を注いだにもかかわらず、彼らのコロナ対策は全く効果がなかったのです。

さらに長期化してしまったことで、今度は、心と体の健康、仕事(経済活動)や学業、ソーシャルライフ等々と、コロナ対策とのバランスの考慮した政策が絶対に重要になってきます。

昨年の9月に出された論文に、COVID-19パンデミックが子どもの成長と発達に与える潜在的な影響:システマティック・レビュー(The potential impact of the COVID-19 pandemic on child growth and development: a systematic review)があります。コロナ対策となると、何でも「未曾有のパンデミックだから・・・」を繰り返す為政者がいますが、新型コロナのパンデミックは初めての経験であっても、過去には世界各地でさまざまなパンデミックが起こってきました。それに対するさまざまな研究はすでに行われており、パンデミック対策が長期に渡ることによる、ネガティブな影響についても指摘されています。
この論文は、「パンデミックのようなストレスの多い時期に子どもたちの健康を守るためには、医学的な文献にもっと注目してもらう必要がある」ということで、過去の伝染病および・またはCOVID-19パンデミックの結果として、子どもと青年の一般的な健康、発達、精神的健康に与える影響に関する科学文献のレビューを行ったものです。

この論文でも言及されていた”持続可能な開発目標(SDGs)”ですが、義務化や制限を長期化させることによって、子どもの健康、教育、貧困・・・等、SDGsで掲げた項目に悪影響が出ています。皮肉なのが、SDGsはリベラルが大好きな政策であるにもかかわらず、SDGsに悪影響を及ぼす”義務化”や”制限”を積極的・長期的に導入・実施している州や、連邦政府もリベラルたちということです。

義務化の導入が果たしてコロナを封じ込める解決策となるのか?私はとても効果的な政策だとは思えません。その上、他の政策の推進との兼ね合いを考えても、バランスが悪い政策と言えます。

最初にシェアさせていただいた、ハワイとテキサスの新規感染者数の推移を再び掲載しますと、2つの州の、夏以降の波形はとても似ています。産業もスペースの問題も全く異なりますから、それぞれの状況に適したコロナ対策が必要だとは思いますが、果たしてそれは”義務化”なのか?と言えば、そうではないように思います。

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