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【論争】PCR検査の問題点

PCR 検査とは?

「(RT-)PCR検査」という単語について、もはや聞いたことがないという方はいらっしゃらないかと思います。新型コロナの診断の際、「陽性」か「陰性」かを判断するのに使われている検査ですね。では、この検査を使用することが適切かどうかを巡って長く論争が行われていることはご存知ですか?

そもそもPCR検査とは、PCRという遺伝子を増幅させる技術を使った検査であり、キャリー・マリス博士がこの技術により、1993年にノーベル賞を受賞したというほど、画期的なものです。では、なぜこの画期的な技術について「適切ではない」という主張が出てくるのか?それはあくまでもこの検査の使い方、もしくは設定に問題があるからです。

PCR検査については、下記の画像に簡単にまとめています。できるだけシンプルに!でまとめましたので、専門の方から見て表現にあらさがあったらすみません。

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CT値(遺伝子を増幅させるサイクル)の問題

上記のまとめ(画像)にもあります通り、この検査の特徴は、PCRの技術で遺伝子を増やしていくため、少量のサンプルでも、検査が可能ということです。問題はこの増幅のためのサイクルを何回行ったか?にあります。この回数を表すのがCT(Cycle Threshold)値です。

PCR検査の仕組みをきちんと理解されたい方は、たくさん良い動画がありますので、ぜひネット検索してください。ここではPCRやCT値がなんぞや?がぼんやりでもPCR検査をめぐる議論を理解していただくために、下記の表をご覧ください。徳島大学名誉教授でいらっしゃる大橋眞先生がYouTube等でお話しされたものをまとめたものです。

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CT値が10のときー増幅のプロセスを10回行ったとき、サンプルの中にウイルスが1千万個あれば陽性となります。20のときには、十万個で陽性、30ならば千個、40ならばわずか10個で陽性となります。

現在設定されているCT値は、アメリカでは37−40、日本では45になっているそうです。一般的に、感染する際に必要なウイルス数は100,000個以上と言われています。ところが現在の設定では、ウイルスが鼻腔に10個あっただけで陽性判定が出てしまうのです。(日本の設定45では10個以下ですね。)

適性ではないという指摘は、この数字の高さからきています。なぜこんなに高くしているのか?パンデミック当初、COVID19は未曾有のウイルスと言われていました。そのような中、どんな小さな感染のかけらも見逃さないぞ!そんな意気込みから高すぎる設定になってしまった、とも言われています。確かに当初、検査が陽性者を見逃してまう「偽陰性」が大きな問題となっていました。混乱の中では、仕方のないことだったのかもしれません。

ところが、昨年の8月、「Your Coronavirus Test Is Positive. Maybe It Shouldn't Be」という記事がニューヨークタイムズで紹介されました。ハーバード大学T.H. チャン公衆衛生大学院のマイケル・ミーナ博士(疫学者)らによる、高すぎるCT値が治療や隔離の必要がない陽性者を多数出してしまっているため、適正値に変更するべきというものでした。さらに、ニューヨークのWadsworthラボがCT値を適正化した際の驚くべき数値を出していました。下記の表です。

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同ラボで設定されていたCT値は40。その設定で、同ラボが検査していた昨年7月、陽性判定は、872件でした。同じサンプルをCT値35、30に変更した場合、陽性サンプル(872件)が陰性となったケースは、35の時に43%、30まで下げると63%だったとのことです。陽性と判断された人の半数(以上)が、隔離などされずに澄んだということになります。新型コロナの特徴の1つは、無症状感染者が多いと言われていましたが、実際には、ウイルスが体内に存在していても、感染はしていないという偽陽性の人が多いとも考えられます。

適切なCT値とは?

前出ミーナ博士は、同記事が出された昨年8月の時点ですでに、「検査の感度が低くても、迅速かつ安価で、必要な人全員を頻繁に検査できるコロナウイルス検査が必要だ」と指摘し、適正値は30かそれ以下としています。症状があるにも関わらず、陰性が出た場合には、時間を置いて再度検査していくことで、偽陰性の問題を防ぐことが可能だからです。

ここでミーナ博士の言う「安価」であることがとても重要になります。PCR検査は専用の機器と、熟練した検査技師が必要な検査ですので、1回あたりの検査費が安くはありません。「偽陰性の可能性もあるから、もう1回やってみましょう」とは言いにくいと言うのが医師の本音でしょう。

適切なCT値については他に、カリフォルニア大学のジュリエット・モリソン博士は30-35、大橋先生は、20-25が適切だとしています。いずれにしても、アメリカの37-40、ましてや日本の45は高すぎます。日本の陽性者のうちの何割かは、他国では陰性となってしまうのが現状なのです。

なぜか改善されない?

このような論争は、遅くとも昨年の8月には出ているものでした。では、現在のPCR検査はどうでしょうか?おそらく変更はされていないかと思います。むしろ、もし、CT値が大幅に変更されているのであれば、それが広く伝わっていないことは大変問題です。現在のコロナ対策は、感染者数の推移を見ながら決められていますが、CT値を変更すると、他の状況が全く同じでも、感染者数が増減するからです。

特に、現在はワクチンによる効果を測定するためにも、より多くの人が感染者数の推移を見守っています。感染者数の減少がワクチンによるものなのか、CT値の修正によるものなのか、明らかにする必要があります。CT値を変更していないのだとすれば、このことが理由かもしれません。ただし、いくら政策決定・評価のために重要な数値であったとしても、統計の数字のために、必要のない人まで隔離を求めてしまう現在のCT値を続行させるのも問題です。

正しく理解してもらうのは簡単なことではないかもしれませんが、過去の数値を実数とCT値を下げた場合の推定値の両方で表示する等の工夫をすることで、これらの問題を解決することができるのではないでしょうか。

Glossary

しきい値:Cycle Threshold Value

疫学者: Epidemiologist

ウイルス学者:Virologist



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