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【アメリカのコロナ事情】感染爆発の原因を探るVol.2

7月に起こったアメリカの感染爆発の謎について検討してみるシリーズの第2です。肌感覚として、絶対関係あるよなと思っていたのが、飛行機を使った旅の増加と新規感染者数増。飛行機を使った旅の数字としては、米運輸保安局(TSA)がカウントしている保安検査場を通過した旅行者の数”TSA通過量(赤線)”を用いてグラフを作ってみました。

2020年3月にグラフがガクンと落ち込んでいますが、これはご想像の通り、外国人の入国を制限したためです。諸外国も同様の政策をとっていたため、アメリカ人が海外にいく数も減っていたと推測されます。緩やかな増加傾向を始めた5月は、学校の夏休みが始まる時期(地域によって異なる)。そこから11月のサンクスギビング、12月のクリスマスとホリデーシーズンが続きます。この秋から冬にかけてのホリデーシーズンに向けて、ハワイ等の観光地では、PCR陰性証明がある旅行者の受け入れを検討し始めた頃でした。10月にはパンデミック開始以来初めて100万人を突破という記事も出ていましたが、通常の旅行客量と比べればまだまだ半分くらいの回復といったところでした。

10月以降に感染者数が増えているのは、旅行客増によるものではなく、経済や学校の再開による影響ではないかと思います(データでは未確認)。

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1月始めをピークに新規感染者数が下がってきているのは、ワクチン接種者数との相関関係があるようです(【米国コロナ】7月10日以降の感染爆増要因を探る)。春休みの時期には、これまで我慢していた旅行好き層が「もう我慢できない!」と出かけた時期でした。この頃、接種を希望する医療従事者であれば、ワクチン接種が完了していましたので、そう言った層を中心にTSA通過量を押し上げたのではないかと思います。

そして、続くTSA通過量のピークが問題の夏休み(5月〜8月)です。注目したいのは、TSAのグラフの上がり具合と、新規感染者のそれが異なるという点です。春休みの感染者増は、夏休みほどTSAの通過量増の影響を受けていないのです。

春休みと夏休みを比べて大きく異なるのは、ワクチン接種を希望する人の多くが夏休み前には接種を完了していたということです。ワクチン接種者数と新規感染者数に負の相関関係があるのであれば、夏休みの時期の感染者爆増は、奇妙です。ここで忘れてはならないのは、CDCやファウチ博士の助言に基づいたマスク・ポリシーの変更です。当初はワクチン接種者にも求められていたマスク着用ですが、5月に突然ポリシーを変更し、「ワクチン接種者はマスク着用しなくて良し」としたことです。

新規感染者増の影響を与えたと考えられる要素

7月の感染者爆増の原因として考えられるものをグラフにまとめてみました。私は超文系ですので、編集者が謎解きのために作ってみたグラフということで、いろいろご容赦ください。

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政府やCDCは感染者増の原因を、ワクチン未接種者の責任としていますが、そうすると、緑の完了者増(未接種者減)と青い新規感染者増に負の相関関係がなければ説明がつきません。私がいくら超文系と言っても、これだけは断言できます。

それよりも、ワクチン完了者のうち接種から6ヶ月経過した人の数と、新規感染者数の方が相関関係があるように見えますし、デルタが優位になったことも、感染者増に影響を与えたと言えるのではないかと思います。

そして、先ほど指摘した、ワクチン完了者に対するマスク着用義務の緩和と、再び制限した時期もグラフに入れ込んでみました。緩和策が減り続けていた新規感染者数のグラフのベクトルを変えてしまった原因の1つであると、言えないでしょうか。

CDCやファウチ博士の嘘

”ワクチンが完了したらマスクが不要になる”ということは、個人的には、これは絶対に嘘だなと思っていました。なぜなら、ファウチ博士とランドポール上院議員のバトルで、ファウチ博士自身が変異株によるブレイクスルーの懸念を指摘し、「ワクチン接種完了者にもマスク着用が必要」と発言していたからです。CDCの勧告にも疑問がありました。接種完了者はアメリカ国内ではマスクが不要であるものの、国外の感染拡大地域ではマスク着用を推進していたからです。

これだけ怪しい要素が揃っていたにも関わらず、中には医師という職業である人も「濃厚接触者のうち、どうしてワクチンが完了しているAさんが陽性反応で、未接種のBさんが陰性なの?」と、ファウチ教を根強く信じ続ける人たちもいました。

そもそもファイザー社がEUAを獲得した際の治験データ(変異株が騒がれる前のオリジナル株でのデータ)でも、ワクチンが感染を100%防止するとは言っていません。Aさんはワクチン群の発症数8と同じことが起こり、Bさんはプラセボ群で発症しなかった21,566(21,728-162)と同じことが起こったというだけのことです。

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嘘をついた理由を考えてみる

ここからは推測なのですが、マスクを極端に嫌うアメリカ人にとって、”マスク不要”は、ワクチン接種を推進する上で何よりのインセンティブになります。当時のアメリカは感染が抑えられている状態でしたので、”確率論的に、ブレイクスルーケースはそんなに目立たないはず”、一方、感染が拡大している国に行く場合、”感染する確率がアメリカよりも高くなるため、マスク着用による感染防止をしなければブレイクスルーケースが目立ってしまうかもしれない”と、考えたのではないでしょうか?だとすれば、彼らの大きな失敗は、ワクチンを打ちさえすれば、日常が戻るというキャンペーンをやりすぎたという点です。旅行やイベントに出かける多くのワクチン接種者がマスクを着用しなかった、その結果、感染者の74%がワクチン接種者というマサチューセッツ州の事例のようなことが起きてしまったと推測できます。

メキシコの友人は、「アメリカ人旅行客のほとんどがマスクをつけていない。それはワクチンを打っているから安心なのだろうけど、メキシコではワクチン接種がそこまで進んでいないから、マスクをつけていない人を見かけるとナーバスになる」ということを話していました。また、接種完了している友人で、日常生活の中では引き続きマスクをつけている人もいましたが、そのような慎重な人であっても、解放感を求めて出掛けるリゾート地ではもちろんつけないと話していました。

信頼できないデータ

先ほど、感染者の74%がワクチン接種者というCDCが出したデータを使いましたが、基本的にはCDCが出すデータを信頼していません。CDCは後日、感染者の71.4%は未接種者であるというロサンゼンス郡のデータも出しています。どちらも、データの取捨選択が可能な局地的な統計ですし、後者の未接種者の数には”接種後14日以内”と”接種ステイタスが不明”の数も謎に含まれています。接種完了者の定義に忠実なデータを扱いたいというのであれば、”接種後14日以内”や”接種ステイタス不明”という項目を作って数字を分ければ良いだけの話です。イギリスのデータはそのような分け方になっていたと思います。

さらにすごいのがニューズウィークの記事デルタ株、感染者の74%はワクチン接種済み WHO 「苦労して獲得した成果が危機に

CDCは「戦いに変化が起きたことを認めるべき」とし、急速に拡大するデルタ株を巡るリスクを周知させるために新たな対応が必要と強調した。ワクチン未接種者が感染する確率は、ワクチン接種を完了している人に比べ3倍高く、重症化もしくは死亡するリスクは10倍以上高いという。(中略)また、CDCが30日に公表したマサチューセッツ州で発生した感染の調査に関するデータからは、感染者の約4分の3がワクチン接種を済ませた人だったことが分かった。データによると、公のイベントで新型コロナに感染した469人中、74%がワクチン接種を完了していた。さらに、感染者133人から採取したウイルス検体の90%がデルタ株だったことも明らかになった。

同じ記事の中で、CDCがデルタ株について出した2つのデータが真逆のことを語っていますが、記者、編集者、校正者の誰一人として、「あれ?」っとならなかったのでしょうか。ちなみにCNNが報じる、別の記事中のCDCのデータでは・・・

(CNN) 米疾病対策センター(CDC)は11日までに、ワクチン未接種者が新型コロナウイルスが原因で死亡する比率は接種した場合と比べ、11倍高い可能性があるとする研究結果を発表した。
入院率は10倍高くなりそうだとも分析。CDCのワレンスキー所長は、未接種者の感染率は約4.5倍増える可能性があるともした。

さらにCDCデータの信頼性が低いと考えるのは、感染者数のカウント方法が不思議な感じになっています。前提として、症状のない人に行うPCR検査は、偽陽性の可能性が小さくないこともわかっています(【論争】PCR検査の問題点)。にも関わらず、接種完了者の新規感染者数は、症状がある陽性者のみに限定されていますが、未接種者の新規感染者数は、陽性者全てを計上しているそうです。そこを区別する理由は何なのでしょうか。

いろいろな数字が出てくるということは、日常生活の中で感染する原因となることはワクチン接種という1つの要因に限定できないということではないでしょうか。感染拡大の原因を、無理やり未接種者の責任と決め付けていることは、原因と考えられる他の要素を意図的に見逃していることになります。ということは、この人たちに対策を委ねている限り、パンデミックは絶対に収まらないと思うのですが。


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