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#アイとアイザワ
【舞台版「アイとアイザワ」によせて】「私のために小説を書いてくれる?」
原作版「左ききのエレン」を描いている時に、一番良い所で長期休載をした事がありました。描く事がツラくなって、もう二度と漫画は描けないかも知れないと思ったからです。休載を発表して間もなく、noteで書き始めた小説が「アイとアイザワ」でした。エレン人気が絶頂の時だったので「遊んで無いでエレンを描け」と散々言われました。でも、あの時は必死にしがみつく様に「アイとアイザワ」を描いてた。
「アイとアイザワ」
「アイとアイザワ-Magic hour-」第1話
「時間が無い。」そう聞こえた。
床の木目が、美しい蜜柑色の光で照らされていた。夕刻。
ぼやけて七色のモザイクアートに見えていたものが自室の本棚だと気がつくと、指先でつまんでいた眼鏡にやっと焦点が合った。
ぼくは目が悪い。度がキツイ眼鏡を牛乳瓶の底に例えるが、まさしくそれだ。フレームから不恰好にはみ出した分厚いレンズを、くたぶれたTシャツの裾でぬぐうと、よく女性にお褒め頂くシュッと形の整った鼻の
「アイとアイザワ」第31話(最終回)
パラパラとページをめくる。1ページにつき1秒にも満たない速度で。ページの端が弧を描き右手の親指に受け取られると、間も無く次のページが左手の親指を離れる。それはメトロノームの様に一定、かつ極めて早い速度で繰り返される。
「はぁ…やっぱり最高だわ。藍沢正太郎の6年ぶりの新刊…。藍沢節、全開って感じで。」
神保町の古本屋は全て回ってしまった。次の入荷まで、もう見るべき書店は無い。愛は、小説はもちろん
「アイとアイザワ」第30話
冷たい空気に満たされた広大な地下室。さっきまでの地上の暑さが嘘のようだった。汗は引き、呼吸が正常に戻ってきた。アイは辺りを見渡す。無我夢中で駆けてきたので、自分がどれくらい地下にいるのかも定かでは無い。何も無い空間。当然窓など一つも無い地下なのに、まるで屋外の様な明るさだった。照明器具は見当たらない。これもアイザックの技術だろうか。
「ようこそ、私の住処へ。」
アイは声のする方を向く。アイザワ
「アイとアイザワ」第28話
アイザワがエンドフラグを予言した日がやってくる。日付変更線を越えたあたりで、アイは時差はどう考えるのだろうか疑問に思ったが、フラグを回収し続けている自分らが物語の中心にいると考えても決して横柄では無いだろう。自分らがニューヨークにいるのなら、きっとその日付が基準になるのだと理解した。モーリスは会社の経費で日本に来て居たのだから帰るのも経費で済んだ。アイはルミから旅費を立て替えてもらい、無事に帰国し
もっとみる「アイとアイザワ」第27話
「アイ!2秒経ったぞ!!」
モーリスの声と同時に、アイはアイザワに向かって叫んでいた。タイマーが3秒を刻むと同時に、アイザワの意識は戻った。
「アイザワ!アイザワよね!?アイザックに取り込まれて無いよね!?」
「…とても長い時間を体感しました。7日間ほどでしょうか。私はアイザックと一緒に居ました。」
「アイザワ…身体が熱い。無茶し過ぎよ…。ちょっと冷やす?」
アイは水をよく絞ったタオルの
「アイとアイザワ」第26話
これまでの「アイとアイザワ」
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アイザワは新宿の繁華街に立っていた。看板から溢れる文字や色彩の情報、様々なBGMと雑踏が入り混じった音の情報。人間とは情報処理能力が桁違いであるアイザワにしてみても、ここ新宿は「うるさい」と感じた。繁華街は、情報の洪水だ。アイザワはショーウィンドウに映る自分の顔を見て立ち止まる。整った顔立ち。清潔感のある白シャツ。全てアイが望んだ姿だ。アイに愛される様に整えた