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朝も、昼も、夜も、うまくいかなくても。

私の人生を救ってくれた歌がある。

幼い頃の日々はどん底だった。家では毎晩家族に怒鳴り散らす父に怯えて暮らしていて、厳しい部活動の中で決して上手ではない私は毎日怒られて疎外された状態。部活の時間が恐ろしくて昼間の学校の時間も苦しかった。

明日が来なければと布団の中で毎日泣いていた。

仮病を使うのも部活を辞めると言い出す勇気もなくて、具合が悪くなればいいとお腹をわざと出して寝るぐらいの度胸しかなかった。(もちろんそんなことで意図的に腹痛にはならなかった。健康体万歳。)

行かなかったら次の日がもっと苦しくなると、逃げ出せなかった。

そんな苦しい中でも父が寝静まった後、母と過ごす僅かの時間は幸せだった。

ふと母が見ていた深夜番組で流れるエンディングのメロディが耳に入る。なんてのんきな曲だろうと思いつつ画面に流れる歌詞に目が行った。

ちらりと見えたフレーズが無性になんだか気になった。
当時はネットで曲など聞ける環境もなく、かろうじて、覚えのあるわずかな歌詞とバント名(うろ覚え)だけを頼りに家に一台だけあったパソコンで曲のことを調べた。
ネットでぽちっと買うことはできないし、街にある少ないCDショップに連れて行ってもらって探し回った。

探し回ってみつけたそのバンドのCDをようやく買って、家族がいない時にリビングにあるCDレコーダーでひっそりと聞いた。

「朝も、昼も、夜も、うまくいかないけど
明日は晴れるよって笑い飛ばせるような
心意気がありゃ、しあわせざんすっ」

歌詞カードで言葉を追いながら曲を聞き終えるころには、ぽろぽろと涙が出たのを覚えている。

ああ、私だけじゃないのかもしれない。と思った。

全部が全部うまくいかなくて、朝から晩までつらいことばかりで嫌になる。自分を否定してばかりで、自分には価値がないように思えた。

それでもその歌は

「笑って後悔するなら、30年後でいいじゃないの」

と高らかに歌った。

その曲を何度も何度も聴いて、歌詞カードを穴が空くほど見返し、何度も何度も口ずさむ。

少しだけ、もう少しだけ頑張ろう、耐えようと思った。

今、こんなかたちでしか生きることしかできなくても、生きようと思った。

そのあとそのバンドのCDを少しずつ集めて、何度も聞いては、励まされてどうにかこうにか生きてきた。


そして今こうして穏やかに暮らしてる。

あの歌のとおり、10年以上経つと世界はガラリと変わり、大人になって自分で選択できることが増えた。

明日を楽しみに眠りにつくことや、静かな部屋でお茶を飲む時間や、大切な人と食べる朝ごはんも、嬉しかったことを話しながらお酒を飲む夜も、すべてが当たり前ではなくて幸せな時間だ。

幸せだなあ、としみじみ思う時間は、同時に毎日泣いて暮らしたあの日々のことが必ず脳裏に浮かんでくる。

だから間違えない。だからまっすぐ生きようと思う。

自分の幸せは、自分で選ぶことができる。

だから、大丈夫。


私の人生を救ってくれた歌がある。


大人になって、東京に来て、その歌を歌うバンドのことを「知っています、僕はこの曲が好きで…」という人と初めて出会い、私はその人と結婚した。


これからも、たくさんたくさん、幸せを重ねる。


読んでいただきありがとうございます。 いただいたサポートは、じぶんの心が休まるものへ使い、またnoteを書く時の励みにしたいと思います。