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春の、あしおと。

「わたしの居場所」という本を読みました。

ひきこもり当事者の調査結果として、
行政支援の課題が書かれていました。

そして、思い出しました。
仕事探しや転職を考えて訪れた先でも、
確かにいろんな人が居たなあと。

高校中退後、遅れに遅れて社会に出て、
アルバイトが出来るようになった頃。

次のステップを踏み出したい、
でも怖いし、わたしに出来るんやろうか。

そんな気持ちでハローワークに行くのを
躊躇っていると、当時親しかった人から、

「怖くなったら逃げて来たらいい」

と言われ、目からウロコが落ちました。

翌日からはアルバイトを続けながら
せっせと毎週必ず求人検索に向かう日々。

検索だけなら手続きなしで出来るし、
嫌になったらすぐに帰れます。

わたしは約1年間検索だけして帰るという
日々を通して「ハロワに慣れる練習」と
「世の中にはどんな求人があるのか」を
学んでいたのかもしれません。

土台が整った頃、意を決して
窓口で相談をしてみました。

アルバイト経験しかないことや、
ようやく社会に踏み出せたところで、
どうやって次のステップへ進んだら良いか
わからない、と正直に伝えました。

すると窓口のお姉さんがとても良い方で、
すぐに周囲のちょっとお偉いさんであろう
おじさんたちに声をかけてくれました。

「うちで受けられるセミナーや、適職診断等を
 どんどん利用してみたらどうでしょうか。
 会社説明会も行ってみると勉強になります」
 
本当は年齢制限があるセミナーも、

「だいじょうぶ、ぜひ参加して下さい。
 今後もし何かあればわたしの名前を
 出してくだされば話は通しておきます。

 今日は来て下さって、お話して下さって、
 本当にありがとうございます」

と、名刺を下さいました。

それから、アルバイトが休みの日には
とにかく興味のあるセミナーや説明会に
参加しました。

調べてみるとハローワーク以外の
機関でも様々なセミナーやイベントがあり、

就活メイク、ビジネスマナー、
話し方、面接の受け方、
応募書類の書き方、求人票の見方、
パソコンスキルアップ、
アサーション、アンガーマネジメント、
ストレス解消法、コーチングを始め、
気になったものは片っ端から
受講していきました。

その過程は緊張と不安との闘いでしたが、
自分に必要な防具や武器を
装着していくRPGの勇者みたいで、
なんだか強くなっている実感がありました。

苦手だった電車での行動範囲も広がると、
いろんな人に出会いました。

他の機関が実施するセミナーでは、

「年齢は?じゃあ、受けられません。
 規則ですので」

と申し込み電話を切られることもあり、
最初に出会った窓口のお姉さんの対応に
あとから深く感謝したことを覚えています。

合同説明会やジョブカフェ等では、無料で
専門家からキャリアコンサルティングを
受けられる機会があり何度か利用しました。

キャリアコンサルティングとは、
個別面談でスキルや経験、価値観や興味関心等を
整理して今後のキャリアを考えることです。

堅苦しく考えてしまい不安もあったのですが、
あの窓口のお姉さんから、
「興味があるものはどんどん利用してみて」
と言ってもらえた言葉が残っていて、
勇気を出してみたのがきっかけでした。

最初に出会った専門家さんがとても良い方で、
丁寧に話を聞いて下さり、

不登校経験や社会に出るまでの期間にも、
「なにを考え、どんなことをしていたか」
「その経験から学んだことや得られたことは」
という視点で考える機会を与えてくれました。

そして実際にそれらを書き出してみると、
いつの間にか初めての「職務経歴書」が
しっかりと書けるようになっていました。

今では応募書類作りの手伝いを頼まれるほど、
得意になったのですが(応募回数も多いしね!)

アルバイト経験しかなくても職務経歴書が
書けたこと、さらにその書類で応募してみた
企業から書類審査通過の電話があったことで、
本当に大きな自信になりました。

しばらくしてその方は退職されたと知り、
きちんとお礼も言えないままでしたが、
あの人との出会いは本当に有難かったです。

それ以降も何度か仕事で壁にぶつかったり、
転職を考えた際にキャリアコンサルティングを
受けましたが、

「この年齢でこの学歴と職歴?
 じゃあ選べる仕事なんてありませんよ?
 相談に来られてもねえ?」

と嫌そうに言う人(それがあなたの仕事では)、

「職場ではバカなふりをしておけば
 いいんですよ。出る杭は打たれるから。
 仕事は出来てもやらない方がいいんです」

と笑顔で言う人(価値観違い過ぎー)。

がっかりした経験もたくさんあるので、
冒頭の本でも述べられているように、

もしわたしが勇気をふりしぼって初めて
行ったハローワークや相談先で、
こんな対応を受けたとしたら、
もう二度と行かなかったかもしれない。

でもわたしは最初の窓口のお姉さんや、
そのあとに出会えた方々のおかげで、

「くそっ、この人ではあかんわ。
 よし、次行こ、次。
 
 絶対、あの人みたいな良い人も居る」

と切り替える判断が出来たのだと思います。
そしてそれは間違っていないと感じています。

窓口のお姉さんが、

「これからです」

と、力強く言ってくれた笑顔を今でも
覚えています。


季節はめぐりめぐり、また春が来るこの時期に、
あのお姉さんを思い出す本と偶然出合えました。

あの時、帰り道の公園で見た桜のつぼみは、
すこし心細く、でもどこか誇らしく見えました。

もしもこのお話が、どこかで誰かの役に立てば
嬉しいなあと思い、書き留めてみました。


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