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「縁が君を導くだろう」〜ターリ シャーロット (著), 上原 直子 (翻訳)『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』白楊社、2019

 ターリ シャーロット (著), 上原 直子 (翻訳)『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』白楊社、2019読みました。面白かったです。

 最近でも話題だったワクチンを打つかどうかみたいな話でもそうであったように、ワクチンの有効性にしても害毒にしても、事実は人の意見を変えない。

経験豊かな医師で科学者でもある彼は、ワクチンが自閉症の原因ではないことをデータによって確信していた。それゆえに、同じデータを読めば他の誰もが納得すると思い込んだ。しかしながら人間は、情報に対して公平な対応をするようには作られていない。数字や統計は真実を明らかにするうえで必要な素晴らしい道具だが、人の信念を変えるには不十分だし、行動を促す力はほぼ皆無と言っていい

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これはなぜなのか、というお題を切り口に、行動経済学や社会心理学の知見が示されるわけだけど、端的には、人間の頭がそういう風に作られてないからだ。

脳が何百万年も前からの産物であるのに対して、大量のデータ、分析ツール、高性能コンピュータが入手しやすくなったのは、ほんの二、三〇年前のことだから

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 むしろ、下手にデータを与えることのリスクさえ指摘される。

アメリカの大学から「死刑を強く支持する学生」と「死刑に強く反対する学生」計四八人を選んで、全員に二つの研究結果を提示した(4)。一つは極刑の有効性に関する証拠、もう一つは効果のなさに関する証拠を示した研究結果である。実はその資料は偽物で、ロードらがでっちあげたものだったが、そのことは伏せられていた。さて、学生たちはそれらの研究結果に納得しただろうか?自らの考えを変え得る素晴らしい証拠を備えたデータだと信じただろうか?答えはイエスである──ただし、その研究結果がもとの自分の考えを強化する場合に限って。死刑を強く支持していた学生は、有効性が立証された資料をよくできた実証研究と評価する反面、もう一方を不用意で説得力のない研究だと主張した。そして、もともと死刑に反対していた学生はまったく逆の評価をした。最終的に、死刑支持者は極刑へのさらなる熱意を抱いて研究室をあとにし、死刑反対論者はそれまでより熱い思いで死刑に反対するようになった。この実験によって、物事の両面を見られるようになったどころか、意見の両極化が進んでしまったのだ。人工中絶や同性愛からケネディ大統領の暗殺に至る様々な議論において、情報は両極化を招きかねない

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