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SF短編小説「山奥の仙人様」

「ねえママ、ちーちゃん、お話を聞きたい。お話してー。」

「いいわよ、ちーちゃん。そうね、じゃあこんな話をしましょう。お題は、山奥の仙人様。」

 昔々、あるところに、若いお坊さんがいました。

 お坊さんは、自分の修業が行き詰っていることを感じ、寺を出て、山奥の小さな小屋に一人で隠居して暮らす仙人の元へ弟子入りを志願しました。

 仙人は、一人で修業をしたいのだといって、最初はお坊さんの弟子入りを断っていたけれど、お坊さんが何度も通ってお願いするものだから、遂に弟子入りを認めるのでした。

 仙人はうわさにたがわず、この世の真理にまつわる広くて深い知識を持っていて、お坊さんは日頃自分が感じていた疑問のあらゆる答えを仙人が持っていることを知りました。お坊さんは仙人の元で住み込みで暮らし、その知識や研究を手伝う日々を送るのでした。

 やがて10年が経ち、仙人は別れの時が近いことを弟子に伝えました。仙人はついにこの小屋を捨て、天地と一体になるのだと。

 弟子は悲しみましたが、仙人は優しく諭します。何も悲しくはない。私はいつもお前のそばにいる。この小屋もお前に譲ろう。引き続き、修行と研究に励みなさい。

 そして最後に、いつか、どうしても私の声を聴きたくなったら、この巻物を広げなさい、と教えてくれるのでした。

 そうして仙人は空中にかき消えるようにしていなくなったのでした。

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