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名張市地域づくり協議会制度について勉強した

コミュニティ政策学会で、名張市のコミュニティ政策について教えてもらったので、忘れないようにメモしておく。

名張は大阪のベッドタウンとして発達した。ベッドタウンの発達は団塊世代の大量転入によって成立する。同世代が一気に転入することで、急速に宅地化と人口増が見込めるが、その先に待っているのは高齢化と住民税の極端な減少であった。

こういった状況で地域組織によるまちづくり活動を維持するために名張市が選択したのが、自治協議会制度の導入であった。具体的には、各種団体の補助金カットと、それを原資とした地域包括補助金(ゆめづくり地域交付金)化、そしてその受け皿としての自治協議会の設立である。現在でも日本の住民自治協議会制度のトップランナーとして知られているという。

名張の場合自治協議会は「地域づくり委員会」というが、その説明会においては従来の既得権を失う、地区長や各種団体からは、納得いかないという怒号が飛び交っていたという。

略年表を記しておく。

平成15年3月「名張市ゆ めづくり地域交付金の交付に 関する条例」を制定
小学校圏域に1つずつの包括的住民 自治組織「地域づくり組織」を15地 域に設置。各種補助金を交付金として 一本化

※ゆめづくり地域交付金の概要
1.地域づくり組織の活動支援として交付する
2.使途自由で補助率や事業の限定がない交付金とする
3.住民合意でまちづくり事業を実施し、交付金を活用する
4. ハード・ソフトは問わない。ただし、宗教活動、政治活動に使用してはならないものとする。

平成17年 自治基本条例 制定 区長制度を廃止し、「基礎的コミュニティ」と それを包含する「地域づくり組織」に整理
昭和30年代からはじまった 「区長制度」を廃止し、区・自治会 である「基礎的コミュニティ」と、 それを包含する小学校区を単位とす る「地域づくり組織」に整理
◆都市内分権の推進
◆区長は委嘱から登録制へ
◆区長制度 「行政事務委託料」 「区長会運営等委託料」を廃止

平成21年 地域づくり組織条例 制定 自己決定・自己責任のもと参画し、協働するこ とで、「自治のまち」の創造を目指し、名張市 の最高規範であることを規定。15地域が個性ある将来の まちづくりのための基本方針、 将来像、それに基づく実施計 画を策定

平成21年~ 住民アンケートの実施 各地域にて策定委員会を組織

平成24年  平成24年 地域ビジョンの策定完了(全地域) 地域資源を活用し、個性あるまちづくりのための 基本方針、10~20年先の将来像、計画を策定

平成25年~ ゆめづくり協働事業スタート

平成28年 市民センター化の実施 公民館を市民センターに統一し、生涯学習機能に 地域づくり活動、地域福祉活動の拠点としての機 能を追加
地域づくり組織に指定管 理委託していた公民館を市 民センター化し、地域づく り活動・生涯学習活動・地 域福祉活動の拠点としてス タート

平成30年5月~ 総合計画の地域別計画に位置づけ、名張市民センター和室で地域 づくり組織によるレストラン 営業開始 など、営利化が進む

名張から、三重県に目を転じてみる。三重県下の自治体には以下の「標準装備」があると言われる。

①小学校区を単位とする← 人口減少、高齢化に伴う課題を実感しやすい
②地域の多様な団体、NPO、企業、小・中学校、公募市民による、ラウンドテーブルの実施と地域計画の策定← 課題解決策と実行に向けて 行政の支援(カルテ、地域担当職員等)
③部会方式による課題解決と、そのために必要な補助金を使途を限定しない交付金として行政から交付 ← 交付金制度
④活動拠点の整備とその指定管理による人件費の確保

県下のそれぞれ自治基本条例や地域組織設置条例を制定し、地域自治組織の形成を働きかけ始めた。年表は以下の通り。

2004.11 合併の前後から住民自治協議会の取組が広がる
2004.12 自治基本条例により同上の仕組みが制度化
     以降、39地区(250~12000人)で設立・活動
2006年 鈴鹿市(28地区)、松阪市(40地区)
2008年 伊勢市(23地区)
2013年 亀山市(22地区)
2017年 桑名市(15地区) いずれも小学校区単位程度のエリア

これらの一連の政策が普及した結果何が起こったか。

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