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母、絵日記はじめました


母が、フジコ・ヘミングに感銘を受け、あることを始めた。

ピアノを弾き始めたのではない。

母は、絵日記をつけ始めたのである。


母は、ある日、図書館から、フジコ・ヘミングが小学生の頃に描いたという絵日記を借りてきた。
すごく面白いんだよ!と熱く語っていた。

私は、お母さんも絵日記を描いてみたら、と冗談半分で提案してみた。

次の日、母は100円ショップで色鉛筆とクロッキーを買ってきた。

母はとても素直なのである。


正直言って、母の絵日記が、フジコ・ヘミングの幼少期の日記のように中身のあるものにはならないだろうと思っていた。


だが、これがなかなか面白いのだ。



ある日の日記

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この絵は、どちらも母自身のことを描いているのだが、かなり特徴を捉えている。

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ユーチューブを見ながら筋トレをしている母のちょっと鬱陶しいほどの躍動感や、ギターのドレミファソラシドを弾いてちょっと得意げな顔は、母そのものだ。


近所のカレー屋さんでカレーを買った日の日記

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この日は、父が家で夕飯を作っていたのに、母がカレーを買ってきて、険悪なムードな夕飯だった。

でも、母が描いた絵日記は、とても明るく、険悪なムードは微塵もない。

絵日記は、母の都合に合わせて描かれているようだ。



ある日の私

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仕事から帰ってきてから、急いでお風呂に入り、オンライン勉強会に参加している私が描かれている。

頭にタオルを巻きながら、真面目な顔で議論している私の姿が、母には面白かったらしい。オフの格好なのに、話している内容は、オン。勉強会の際、もちろんカメラはオフにしていた。


日記に変なことを描かれないように、この日以来、私は変な格好で家の中をウロチョロするのをやめた。


ある日のクッキー(我が家の柴犬)

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クッキーは、犬なのでもちろん喋ることはないのだけど、顔で訴えてくることがよくある。

このときは、水をカップに入れても飲みたがらず、庭の水道から流れる水を飲みたかったらしい。

実際のクッキーはもっとかわいいけれど、この絵を見ているとこのときのクッキーの表情が簡単に想像できる。

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母は、寝る前に、絵日記を描く。


寝る前に描くのはいいが、たくさん描きたいことがある日は、寝るのが遅くなることも。

次の日、母は、私と父が家を出る頃に起きてくる。

父が、「今頃、のそのそっと起きてくるなんて。」と嫌味を言う。

(「のそのそっと」、というのはちょっと失礼な感じの言葉だが、母の朝の動きはまさしくのそのそっとしている。)

母は、悪びれもせずに、「昨日、遅くまで絵を描いていたからさ」と言って、絵日記を私たちに見せる。

ぷんぷん怒っていた父も、絵日記を見せられて、いつのまにか笑っていて、

「これは、いつか出版することになるかもしれないな〜」なんて言っている。

これは、何というんだろう。
親バカならぬ、夫バカ? 


いつまで母の絵日記がつづくかわからないが、私はときどき母の絵日記を見せてもらうのが最近の楽しみになっているから、できればこのままつづけてほしいなと思っている。

私も、子バカかもしれない。