夫は今日もかわいい

先週は、寒くてなかなか起きられなかった。

「寒いね」
「おふとんから出たくないね」
「目が開けられない」
と夫と私はふにゃふにゃした声で言い合う。

そろそろ起きないと遅刻してしまう、というぎりぎりの時間になって、やっとこさ布団から抜け出し、私は朝食とお弁当をつくる。

朝ごはんをバタバタとかきこむぺこりんを見ていたら、なんだか寝坊したことが申し訳なくなってくる。

私がごめんねと言いかけたとき、
「朝、一緒に”起きられないよ~!”ってするの、楽しかったね」とぺこりんが言う。

私は、ごめんねの代わりに、「うん、楽しかったね」と言った。


プイプイ

私は短気で、怒りっぽい。

でも、ぺこりんと喧嘩になることはめったにない。

私が怒っているとき、ぺこりんは「もも、プイプイしてるの?」と尋ねる。

これは、ぺこりん語で「怒っているの?」という意味である。
ぺこりんは一回り歳の離れた弟たちがいるせいか、ときどき小さい子に話すような言葉遣いをする。

私が怒っているときは、うん、そうだよ!と返す。

「そっかぁ、ももはプイプイしてるのかぁ。プイプイしてるもももかわいいね」と言って、ぺこりんはにこにこしている。

そう言われると、だんだん怒るのがアホくさくなってくる。


リュックにおやつ

先週来客があり、いただいたおやつが家にたくさんあった。

朝、出勤しようと靴を履いていたぺこりんは、たくさんのおやつが目に入ったようで、「おやつをもっていきたい!」と言うので、ぺこりんが背負ったままのリュックにおやつを詰めてあげた。

リュックのチャックを閉めてぺこりんを見送ったとき、私は遠足へと向かう小学生の男の子を送り出したような気持ちになっていた。


中トトロ

わが家には、中トトロのぬいぐるみがひとつある。
しっぽをひっぱると、ぶるぶる震えるぬいぐるみだ。

小トトロや大トトロはない。

この中トトロは、ぺこりんが部活の後輩の女の子からもらったものである。

ぺこりんと私は学生時代に同じサークルにいた。
このトトロをあげたのは、私ではなく、私にとっては一つ歳上のY先輩(ぺこりんは私の二つ上)。

誕生日に、「ぺこりん先輩って、中トトロに似てますよね」と言われながら、ぺこりんはこのトトロを渡されていた。

その頃、ぺこりんに何の興味も抱いていなかった私は、ぺこりん先輩はこんなにかわいくないと思うけどなと中トトロのぬいぐるみを眺めていた。

しかし、夫となったぺこりんと、中トトロのぬいぐるみを今見比べてみると、よく似ている。
あのとき中トトロに似ていると見抜いたY先輩はすごいなぁと思う。

中トトロよりも、ぺこりんのほうがかわいいけれど。


オルゴールダンス

いつだったか、ぺこりんとチーズケーキをつくった日、オーブンにケーキを入れてから焼きあがるまでの間、やることがなくなった。

暇になっちゃったね、と私が言うと、ぺこりんは、
「じゃあ、踊ろう!」と言う。

踊れないよ、と私が言っているのも気にせずに、ぺこりんは私の手をとる。

ミュージカルなら、ここでいい感じの音楽が流れ、踊れないと言っていてもそれなりに踊ってみせるところだろう。

しかし、私たちはミュージカルの主人公ではないので、ぺこりんと私はつないだ手をぱたぱたと上下に動かしつつ、ゆっくりと回転するので精一杯だった。

これは何のダンスだろう、と私が笑っていると、
「オルゴールダンスだよ!」とぺこりんは言う。

たしかに、機械仕掛けのオルゴールのようにぎくしゃくとした動きだった。


ユーチューバーぺこりん

新しいものを買ったとき、ぺこりんはユーチューバーになる。

「どーも、ユーチューバーのぺこりんです!今日は、新しく購入した、このマウスの使い心地をレビューします!」

と一人できゃっきゃと楽しそうにレビューしている。

カメラは回っていない。ぺこりんは、ユーチューバーのフリをして楽しんでいるのだ。
1,000円で買ったノートパソコン用のマウスを、こんなにも楽しそうに使うのはぺこりんくらいなんじゃないかと思う。

「チャンネル登録したい」とぺこりんに言ったら、
「恥ずかしいからダメです!」と断られた。


洗濯機

ぺこりんの家に初めて泊まった日のこと。
ぺこりんは朝6時くらいに起きて、洗濯機を回し始めた。

意外と早起きなんだなぁと思って、洗濯機を操作するぺこりんの背中を見ていたら、すぐにぺこりんはおふとんに戻ってきた。

またすぐに寝ようとするので、「起きたんじゃなかったの?」と聞いた。

ぺこりんは、瞼を閉じたまま「洗濯機の音聴いてみて。海の中にいるみたいで、よく眠れるんだよ」と言って、すぐにまたスーピーと寝息を立てていた。

ぺこりんのことがまた少し好きになった朝だった。


おそろい

3か月前くらいに私は髪を切った。
私は、新しい髪型が気に入らなかった。

ずっと地元で同じ美容師さんに切ってもらっていたけれど、引っ越してきてはじめての美容院で、自分の好みを上手く伝えられなかった。

髪が厚いのが嫌なのに、ぶつぶつっと切りっぱなしにされて、ちびまる子ちゃんみたいになった。

それでも、ぺこりんは「かわいいよ」と言ってくれたけれど、私は「切り直したい」とメソメソしていた。

すると、ぺこりんは「僕も美容室に行って、ヘンテコな髪型にしてください!って言って切ってもらおうかな。そうしたら、もももぼくとおそろいだね」と言う。

ぺこりんが変な髪形になってもうれしくない、と思ったけれど、ぺこりんの優しさはうれしかった。


おたすけ妖精

ぺこりんは、いつもさっと手を差し伸べてくれる。

重い荷物を抱えているときは、さっと持ってくれる。
鍋をテーブルに移動しようとしているときに、さっと鍋敷きを置いてくれる。
私が体調悪いときは、朝は寝かせておいてくれるし、早く帰ってきてくれる。
寝ているときも、布団がずり落ちていないか気にかけてくれる。

あるとき、そんなさりげない優しさに対する感謝のきもちをぺこりんに伝えた。

すると、ぺこりんに、
「ぼくは、おたすけ妖精ぺこりんだよ。もものこといつだって助けるよ」と言われた。

妖精ってなんだよ、そんなわけなかろうと思いつつ、あまりにも優しいので、もしかしたら本当に妖精さんなのかもしれないとときどき信じそうになる。


親近感

私とぺこりんが入籍した日、新垣結衣さんと星野源さんの結婚発表があった。

私は結婚してからドラマ『逃げ恥』をアマプラで見たが、ドラマを見ているとき、この二人になんだか親近感があった。

もちろん私たちは、彼らのように美男美女ではない。
役柄も、私はみくりのような小賢しさがちょっとあるけれども、ぺこりんは平匡のようにおどおどした感じはなく、別に似ていない。

でも、親近感を覚えるのはなぜ?と思っていたら、ハグシーンで親近感の正体がわかった。

それは、身長差!

ふたりは、ほとんど身長差がない。
ネットで調べるとガッキーの方が1㎝高いらしい。

よく、カップルの「身長差にキュン!」みたいなコメントを見かけるけれど、身長差がほとんどない二人を見てもキュンとするもんね、と少しほくほくした気分になる。

ちなみに、ぺこりんは見た目はおチビちゃんだけど、心はとても大きい人だ。


ももがいないとダメみたい

私が修論執筆の資料を集めるのに帰省していた日、ぺこりんに電話した。

その日、ぺこりんは、お仕事をしながら、お弁当もつくり、夕ごはんも酢豚をつくっていたらしい。

ぺこりんは一人暮らしの期間が長かったので、家事をきちんとできる。そのことで、普段はとても助かっているけれど、私がいなくてもぺこりんは大丈夫そうだな、とほんのり寂しいきもちにもなった。

でも、次の日電話すると、ぺこりんは少し落ち込んでいた。
朝、ごはんを冷蔵庫に入れるのを忘れてしまったらしい。

忘れるときだってあるよ、朝ごはんちゃんとつくったことがすごいよと声をかけても、まだちょっと落ち込んでいて、
「一人暮らしのときは、こんなことなかったのに。ももがいないとダメみたい」
と言っていた。

ごはんを冷蔵庫に入れ忘れたくらいで大げさな、と思いながらも、ぺこりんは私がいないとダメなのか、ふむふむ、とにやにやしてしまった。


お肌コミュニケーション

今朝、ぷにぷにとしたものが私の頬に触れる感覚があって、目が覚めた。

ぷにぷにの正体は、ぺこりんのほっぺだった。

ぺこりんは、ひげを剃ってつるつるもちもちになったほっぺをアピールしたかったらしい。

「なにしてるの?」とぺこりんに尋ねると、
「お肌コミュニケーション!」とぺこりんは答える。

「お肌コミュニケーション」は、「スキンシップ」の日本語バージョンらしい。

コミュニケーションは日本語か?とツッコミたくなったが、お肌コミュニケーションという言葉が私も気に入ったから何も言わなかった。



この調子で書いていると、つづけようと思えば、どこまでもつづけられそうだ。

私は、夫といられることが、とてもしあわせだ。

夫との日々の一瞬一瞬を忘れないようにするのは無理だとしても、この日々を愛おしく思うきもちをすこしでも残しておけたらいいなと思って、この記事を書いた。

最近文章を書けないんだ、とぺこりんに話したら、「こんなにネタの宝庫みたいなぼくがとなりにいるのに、なんでだろう」と首をかしげていた。

ぺこりんのことはいくらでも書けるのだけど、いざ大事な人のことを書くとなると、心温かい感想がもらえるようにしなきゃと肩に力が入ってしまう。


けれど、昨日偶然見かけたこのタグ「#読まれないnote」のおかげで、肩の力を抜いて書くことができた。

読まれなくてもいい。読んでほしいきもちも、ちょっぴりあるけど。

自分が書きたいこと、残しておきたいことを書いたらいいんだって、開き直って書いたら、どこまでも書いていられそうなほど、のびのびと書けた。


どうしたら読まれるか、どう書けば共感してもらえるかを考えて書くのも大事だけど、何も考えずに書くこともときには必要かもしれない。

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