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晴れの日も雨の日も

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そのとき感じたことを感じたままに綴るエッセイ集。晴れの日のように澄みきった気分のときも、雨の日のように翳りに覆われるときも、その気持ちを、透明な言葉で伝えたい。
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#エッセイ

ハレの日の美術館

よく晴れた5月のある日、私たちは美術館で結婚式を挙げた。 結婚式といっても、参加者は私と…

如月桃子
1年前
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しゅわしゅわ、今日も溶けてゆく

もう少しでプツンと何かが切れてしまいそう。 朝なのに、お疲れさまですと言いそうになって、…

如月桃子
3日前
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最高だったよ。—おやきと文学—

微熱ブックカフェに行ってきました。 微熱ブックカフェでの時間は、まだ自分のなかにしまって…

如月桃子
1か月前
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青葉きらめく街へ帰る

ゴールデンウィーク前半、夫とともに帰仙した。 仙台に帰ることを、帰仙と言う。 正確に言う…

如月桃子
1か月前
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花桃の風に吹かれて

桃の花を見にでかけた。 その名も、「花桃の丘」へ。 見上げると、青空を背景に桃の花が咲き…

如月桃子
2か月前
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父の就活

最近父が就活をしていると、母からの連絡で知った。 「いい職場が見つかるといいね」と返信を…

如月桃子
4か月前
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日々、いとおしさが積もっていく

夫と付き合いはじめて間もない頃、私は夫にこう言った。 「私、すごく飽きっぽいです。熱しやすくもないので、つねに冷めています。」 私の性格をわかってもらおうとした言葉だが、今思い返すと、なんとも可愛げのない台詞だ。 そのときは、そっか、と相づちを打っていた夫だが、このときの台詞をのちのち夫は何度も引用することになる。 「ももは飽きっぽいはずなのに。全然ぼくに飽きないね?」とか。 「あれれ?つねに冷めているのは誰だっけ」などと、にやにやしながら言ってくるのだ。 あの頃

大叔母の品格

実家に帰省していた夜、「明日、初江おばさん(仮名)の家に一緒に行かないか」と父から誘われた…

如月桃子
5か月前
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わたしの街になっていく

夏のあいだ、西へと向かう帰り道を運転していると、夕陽を背にする山が見えた。 それは、私の…

如月桃子
8か月前
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わが家の天使

あるお休みの日、私は一日中ごろごろしていた。 何もしたくない、という消極的なごろごろでは…

如月桃子
8か月前
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夢が日常になっていくということ

風が心地よく感じられる季節になった。 暑い時期に胃腸炎になってから、食べるのが少し億劫に…

如月桃子
8か月前
107

叶わないと知っていても、それでも伝えるという選択

大学三年生の五月、私はLINEの返事をどう書くか決めかねていた。 LINEの相手は、音楽サークル…

如月桃子
10か月前
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いつかの日記

日記を書こうと決意して、日記帳を用意したことは何度もあるけれど、ずぼらな私はいつも途中で…

如月桃子
10か月前
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はじめての母娘二人旅

「昨日の夜は、あまり眠れなかった」 と、新幹線の車内から、母がLINEをよこした。 LINEが来る前から、そうだろうと予想はしていた。 その日、母が私の住んでいる街に初めて遊びに来ることになっていた。 私の小さい頃から、ディズニーランドやキャンプに行く前の日、母は楽しみすぎて眠れなかったと嘆いていた。 遠足前の小学生みたいだ、と私は半ば呆れつつ、いつまでも子どもみたいな純粋さをもちつづけているところが、母らしいとも思う。 母は、朝早くに最寄り駅に到着することになって