マガジンのカバー画像

晴れの日も雨の日も

102
そのとき感じたことを感じたままに綴るエッセイ集。晴れの日のように澄みきった気分のときも、雨の日のように翳りに覆われるときも、その気持ちを、透明な言葉で伝えたい。
運営しているクリエイター

#エッセイ

ハレの日の美術館

よく晴れた5月のある日、私たちは美術館で結婚式を挙げた。 結婚式といっても、参加者は私と…

如月桃子
1年前
271

最高だったよ。—おやきと文学—

微熱ブックカフェに行ってきました。 微熱ブックカフェでの時間は、まだ自分のなかにしまって…

如月桃子
1か月前
76

青葉きらめく街へ帰る

ゴールデンウィーク前半、夫とともに帰仙した。 仙台に帰ることを、帰仙と言う。 正確に言う…

如月桃子
1か月前
135

花桃の風に吹かれて

桃の花を見にでかけた。 その名も、「花桃の丘」へ。 見上げると、青空を背景に桃の花が咲き…

如月桃子
2か月前
100

父の就活

最近父が就活をしていると、母からの連絡で知った。 「いい職場が見つかるといいね」と返信を…

如月桃子
4か月前
130

日々、いとおしさが積もっていく

夫と付き合いはじめて間もない頃、私は夫にこう言った。 「私、すごく飽きっぽいです。熱しや…

如月桃子
4か月前
75

大叔母の品格

実家に帰省していた夜、「明日、初江おばさん(仮名)の家に一緒に行かないか」と父から誘われた。 初江おばさんは、父にとっての叔母。私にとっては大叔母に当たる。 私がいいよ、と答えると、父は少しほっとしたように見えた。 我が家は、親戚との付き合いが希薄だ。 特に父方の親戚とは、ほとんど連絡を取り合っていない。 もともとお盆や法事の際に顔を合わせるくらいだったが、私の祖父母が亡くなってから、さらに顔を合わせることが減った。 伯父が永代供養をして、墓をなくしてから、墓参りに行

わたしの街になっていく

夏のあいだ、西へと向かう帰り道を運転していると、夕陽を背にする山が見えた。 それは、私の…

如月桃子
8か月前
70

わが家の天使

あるお休みの日、私は一日中ごろごろしていた。 何もしたくない、という消極的なごろごろでは…

如月桃子
8か月前
55

夢が日常になっていくということ

風が心地よく感じられる季節になった。 暑い時期に胃腸炎になってから、食べるのが少し億劫に…

如月桃子
8か月前
107

叶わないと知っていても、それでも伝えるという選択

大学三年生の五月、私はLINEの返事をどう書くか決めかねていた。 LINEの相手は、音楽サークル…

如月桃子
9か月前
149

いつかの日記

日記を書こうと決意して、日記帳を用意したことは何度もあるけれど、ずぼらな私はいつも途中で…

如月桃子
10か月前
74

はじめての母娘二人旅

「昨日の夜は、あまり眠れなかった」 と、新幹線の車内から、母がLINEをよこした。 LINEが来…

如月桃子
1年前
87

ただ、ありがとうを、ここに置いておくね

なにを書くかよりも、なにを書かないかに、その文章の書き手の品格が出るのだという話をよく聞く。 そうだとすれば、今回のような記事は書かないほうがいいのかもしれない。 でも、私は書くことにした。 noteをつづけていると、心が冷たくなる出来事も、ときどきある。 ときどきといっても、それはごくまれで、ほとんどの場合、温かいきもちになる。むしろ、どうしてこんなによくしてくれるんだろう、と思うことのほうがずっと多い。 でも、というか、だからこそ、冷たいきもちになるとき、かなり