わたしを旅に誘ってくれた本
オンライン読書会での初めのテーマは「名刺代わりの一冊」
結局小説でもなく全然違う本を選んだ。
塩見直紀さんの「半農半Xという生き方」
オンライン読書会では↑の写真を紹介したけれど私がはじめに出会った時は
この表紙とタイトルでこっちの表紙が私は好きだ。けど図書館の本で手元になく、後から買った本を今日の読書会で紹介した。
「半農半X」
「半農半X(はんのうはんえっくす)」とはライフスタイルの1つで著者の塩見直紀さんが提唱したもの。
自分や家族が食べる分の食料は小さな自給農でまかない、残りの時間は「X」、つまり自分のやりたいこと(ミッション)に費やすという生き方です。農のある暮らしをしながら、自分が大切だと思うこと、大好きな仕事をすることで、精神的に満たされるというこの半農半Xという暮らし方は、収入が減少しても心豊かな暮らしをしたいという人たちから共感を集めています。「X」にあたる部分は人それぞれ。農的生活をしながらNGOで活動する「半農半NGO」や、「半農半ライター」「半農半歌手」「半農半保育士」などさまざま。
紹介した「半農半Xという生き方」にはそんな半自給的な「小さい農」を営みながら、色んなXを実践しながら暮らしている人たちが紹介されている。
世の中にはいろんな人がいるんだなとなんだか救われる。
今日この本を紹介していたら、1人の人がコロナが終わったら、こういう暮らしをする人が増えてくるかもねと話していて妙に納得した。
理由は私がこの本に出会ったのは東日本大震災の影響もあるから。
人は何か困ってからライフスタイルを見つめ直すことが多い。
この本に出会ったきっかけ
2011年東日本大震災が起きたとき、私は摂食障害の症状がまだまだ強く出ている高校3年生だった。食べない事以外にも自分に強迫観念のように過活動の症状や毎日毎日何時にこれをするという1分1秒も狂いのないルーチンの中で暮らすのが安心だった。
だけど震災が起きたときこれが崩れた。パニック症状がおきた。震災後もスーパーは品薄状態が続き当時、唯一安心して食べられる野菜も値上がった。
ほんとに自分中心な考えだけれど、
「このままじゃルール通り暮らせない!」
「自分で野菜を作ったらいいんじゃないか?」
そんなきっかけと、もともと土いじりが好きで農作業に興味を持ち、近所の農家さんに話しかけては草取りなどを手伝わせてもらった。
普段は人見知りなのに変な時だけ大胆に動ける自分に驚く。
土をいじってるときは無心になれて病気を忘れられた。
そんなこんなで対して症状も変わらないまま3年経た、2014年作業療法の専門学校に通っている時に「半農半療法士といういきかた」というフェイスブックページに出会った。興味のある農業と同じ療法士。一気にビビッと来てそこから検索してこの本に出会った。そしてこのライフスタイルに惹かれた。「どんな人でも人の役に立てるんだ」とみんなに助けられることが多い私は何だか少し勇気をもらった。
そこから好奇心の塊でしかない私は病気の事も忘れその半農半療法士さんが「自分のしている事を紹介するツアーをします」というので連絡を取り参加する事にした。
行き場所は奈良県桜井市。
当時、食べられるものも、食べる時間も、寝る時間も、運動する時間も全て分刻みで行う事で安心を得ていた私にとって奈良に行くことは宇宙に行くくらい大変なことだった。大げさに聞こえるかもしれないけれどそのくらいの気持ちだった。
でも「気になる」。症状より好奇心が勝った。
と言っても当日まで不安でいっぱいだった。
不安でいっぱいで迷惑もかけたくなかったで事前に半農半療法士さんには病気の事もカミングアウトし、もしかしたらしんどくなって途中で帰ってしまうかもしれない事も伝えたが「それでも大丈夫ですよー。無理せいらしてください」と言ってくださり不安とワクワクと共にツアーに出発した。
「旅での出会い」
主催者の半農半療法士さんは学生だった私の宿代を気にしてくださり
「自分のおばあちゃんの家に泊まっていいから」と宿まで準備してくれた。そしてもう1人、学生のツアーの参加者も泊まっていた。
旅はルーチンの生活からはイレギュラーばかりでおばあちゃんは大量の鍋を作ってくれるしもう頭の中は「どうしよう」だった。
でもなぜか、おばあちゃんのごはんもおいしいと食べられた。そしてここで一緒に泊まっていたもう1人の学生の子と話しているとその子も「半農半X」という生き方に興味がある事、作業療法の勉強をしていることなど沢山、共通点があって、作業療法に対する思いも似ていたこともあり夜中までその子と語り合って一晩で意気投合した。今でもその子とは連絡を取り合い奈良と神奈川の距離だが3か月に1回の頻度で会っている大切な友達だ。
もうこの旅では病気の症状のルールなんてダダ崩れだ。寝る時間も食べる時間も食べる量もいつもと違うのにパニックにならない。
「なんでだ?。」
「治ったんじゃないか」と錯覚するくらい。
おばあちゃんの温かさと新しくできた友達と語り合う時間の楽しさと。
心が満たされ、摂食障害に憑りつかれた生物ではなく高栖望がという人間に戻ったような不思議な感覚。
(残念ながらこの旅を終えると私は日常のルーチン生活に戻った。けどルーチンが崩れてもパニックを起こす頻度が減った。)
私を旅に誘ってくれた本
病気の症状が落ち着いた今、私は旅が大好きだ。今では多い時は月2回旅に出るので、「ストレスたまってるの?」と友人たちは心配してくる。
けど私は時々1人で景色を眺めたり自然の中でゆっくり過ごしたり、ボーっと散歩したいだけ。そうすると自分自身や私の周りのことについて理解を深められて日々、言語化できなかった違和感がすとんと腑に落ちる。
そう。旅と言っても観光地を巡るような旅ではない。半農半療法士ツアーの時のように、その地に暮らすように旅する。毎回旅で何をしたと言えばいい景色を目の前に散歩やサイクリングをしながらぼーっとするだけ。でもその中で適度に人とかかわり、人の優しさや価値観に触れる。その中で半農半療法士ツアーで会ったような素敵な人との出会いや色んなものに出会える。
そして、日々のもやもやを言語化出来たり、自分と会話し、満たされる。
そんな大事な旅の時間や大事な友達をくれるきっかけを作ってくれたこの本はずっと私の宝物だ。
読んでいただいて、ありがとうございます。 自分のために書いた文章が 誰かの心にも何か残ったら嬉しいです。