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【改題】GoogleのBIツール「Looker Studio」を使い倒す:人事評価制度編

ふとしたきっかけで使い始めたGoogleのBI(Business Inteligence)ツールであるLooker Studio(旧Google Data PortalもしくはGoogle Data Studio)、今では我が社にとって欠かせないツールになってきています。以前「社内のちょっとしたデジタル化を紹介する」というお題で書いた本noteですが、先日自社の人事評価制度をオンラインセミナーで社外に紹介する機会を頂き、その時に使ったスライドなども活用しつつ2023年1月に大幅に加筆修正しました。改めて読んでいただければ嬉しいです。

弊社タイ法人は2工場で400人近い社員を抱えます。これまでも人事評価制度はあったものの色々と問題点が多く、2021年に外部のプロフェッショナルに依頼して人事評価制度の刷新を行いました。
新しい制度そのものについては細かく説明しだすと収まらないので今回はこの評価制度の運用フェイズでLooker Studioによって人事評価プロセスの大幅な改善ができた点にフォーカスしていきます。

まずBefore。

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そう、紙なのです。

上司が評価ポイントにチェックを入れてその後スコアを手計算、提出して承認を得られたら人事に紙が回っていくという流れでした。また僕の直轄部門では以前から被評価者による自己評価を最初にするようにしていましたが、会社としてそういう決まりはなく他の部門はすべて上司の一方的な評価でした。

また人事部門は給与計算のデータに反映するために紙に書かれた内容をエクセルのシートにインプットするという作業が必要でした。また点数の計算も紙に書かれたものは間違いが多く検算が欠かせないですし、指紋認証システムに溜まっている勤怠データもここに合算して400人分の最終的なポイントを算出するという途方もない作業をしており、人事評価の時期には人事部門が評価シートの回収後、最低でも丸々一週間これに掛かりっきりになっていました。
また評価者と被評価者が結果を残しておくには手元にコピーを置いておくとかせいぜいスキャンするしかなく、保管してあったはずの紙のコピーがなくなるなどもザラにありました。

beforeの評価方法はこんな感じ

そして旧制度でもうひとつ大きな問題だったのが「部門(上司)によって採点基準がバラバラで点数に大きな偏りが出る」というものでした。甘い上司もいれば辛い上司もいて、ある部門の平均は5段階中4、別では3以下とかがザラにありました。こうなると公平な評価も何もない状態で、実際はよほど優れているとか目立って悪いとかではなければ評価内容による昇給やボーナスの差をつけづらかったため、新制度ではこれも改善したいと思っていました。

今回人事評価制度の構築にあたって我が社が誇るスーパーIT担当者のJames君が手腕を発揮し運用をデジタルに切り替えることができました。フローは以下の通り。

プロセスから紙が無くなりました

まず1の「フォームで自己評価」。これはそこまで考え抜いたわけでもなく「便利だからGoogleフォームで良くない?」くらいの発想だったのですが、「紙のデータを検算しつつ手入力」というマンパワーを要する工程を一気に解消できました。今まで400人分を人事の数人で入力していたのに、この方法なら400人全員が自分で基礎データを入力してくれるし計算は完全自動化されるわけです入力フォームは以下のようなもの。

各項目を被評価者が入力して提出すると、以下のようなスプレッドシートにデータが集まってきます。上司はこれを見ながら個別面談をします。

これは人事部向けの全体のシート。各部門の評価者には必要分を仕分けられたものが送られます

このシートにはコメント欄もあるのでフィードバックを残して次回の評価に役立てることもできます。そしてこれが終わると別のサマリーシートに勤怠ポイントも加えた評価が蓄積されるという流れです。

そして部門別の評価が終わった段階で開催される評価委員会。ここでLooker Studioの出番となります。前述の「部門毎に評価基準と平均スコアが全然違う」問題を議論しながら是正するという場です。以下は新制度開始直後のGrade 1のPD1(第一製造部)とPD2(第二製造部)の結果見える化例です。

左の評価ポイントはPD1は最高が47ポイント、最低が31ポイントとかなり広がりがあります。そして右側の最終スコア(勤怠や目標管理なども含め、相対評価でボーナスや昇給が決まる数字)も同様にSからEまでまんべんなくあります。
PD2は対照的で、人数が少ないのもありますが中央値が31、最高が32で最低が30とほとんど差が付いていません。新評価制度では最終的に全部門の同職位(グレード)を全員同じテーブルの中で相対評価するので、この状態ではPD2の最高評価(32ポイント)の人でもPD1と一緒になった途端に最下位グループに入ってしまいます。こういう結果を委員会で評価者全員に見せました。「PD2の上長さん、この評価で本当にいいんですか?よくないですよね?」みたいな話をするわけです。
制度運用開始直後は修正も間に合わず、グレード別に全部の相対評価はできませんでしたが、半年後の二回目では直前に評価制度のワークショップを数回開催、更に一度出てきた数字をまた評価委員会で全員でレビューするなどしたところ、最終的には以下のようなところまで落ち着きました。

赤枠で囲っているのが前回問題だったPD2。上から下まで幅が出ました

結果として部門による偏りがかなり解消されました。

またその評価委員会の中では上記グラフで49などと高いスコアが出ている人について評価者に「XX部門のXXという人はこの半年で常にこういう行動をしていて周りにいい影響を与えている」などと説明してもらい、本当に高評価が妥当なものなのか他部門の上長の納得を得るということをしました。同様に最低評価の人についても「XXという理由で部門に悪影響を与えたため、素行不良で警告書を出した」などと理由を聞きます。

そんな風に2022年は新制度の本格運用をしていきました。12月の最終評価では相当やり直しや評価者同士の主張のぶつかり合い(『ウチの彼は本当良いから最終スコアをAにしたい』『いや、それならウチの彼女もAで不思議じゃない』など)がかなりあったり、更に実際の最終評価はこの行動評価結果にMBO(Management by Objective: 目標管理)や勤怠も組み合わせたものになるのですが、そこから弾き出された最終スコアがちょっと納得いかないものになってしまったりと、まだこの制度が完璧ではないというところも露呈しましたが、上司達がオープンに話し合った上で各グレードの社員の最終評価を決めていくというだけでもかなり健全なものになったと思います。

Looker Studioは今社内で相当使い倒していますが、この人事評価制度での活用が一番ハマったものと言えます。その他にも沢山事例があるので、過去に紹介したものの加筆修正も含めてどんどん紹介していきたいと思います。

また最近AppSheetというノーコードツール、いうなればKintoneのGoogle版みたいなものの存在を知りました。Kintoneは1年ちょっと使っていて承認ワークフローもこれで相当楽になったのですが、Lookerとの親和性が良くなくリアルタイムデータ連携ができればなあと思っていたところでした。これで我が社が10年やってきたカイゼン活動のプラットフォームを作り替えるというのを2023年はできそうです。今からどうなるかワクワクしています。


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